三陸鉄道が震災復興のために世界初の取り組み「聖火リレー鉄道、出発進行!」

「あまちゃん」で一躍有名になった三陸鉄道 「あまちゃん」で一躍有名になった三陸鉄道

全長163km。第三セクター鉄道としては日本最長を誇る岩手県の三陸鉄道は、NHKの連続テレビ小説『あまちゃん』で一躍有名となった。 テレビに映し出された駅舎や風景が印象に残っている方も多いことだろう。地元では「さんてつ」の愛称で呼ばれ、親しまれている鉄道だ。 この三陸鉄道が、岩手県の聖火リレーで再び脚光を浴びている。「聖火を列車で運ぶ」という、過去に類を見ないリレーに挑戦するためだ。 観光列車の休止など、コロナ禍の影響を大きく受けている中での聖火リレーについて、どのような気持ちを抱いているのか。三陸鉄道の広報・三河和貴子さんにお話を聞いた。

震災後、異業種から転職して三陸鉄道の広報へ

広報の三河さんが三陸鉄道へ入社したのは、震災から7年を経た2018年のこと。前職は、まったく畑違いの歯科衛生士として働いていた。 あるとき出会ったのが、三陸鉄道の職員募集だ。三陸鉄道が当たり前のように走り続けるこの地元で生きてきた。だからこそ、震災後に釜石駅から宮古駅までの区間がJR東日本から三陸鉄道へ移管され、南の盛駅から北の久慈駅までがひとつにつながろうとしていることに特別な思いがあったという。

三陸鉄道の広報担当 三河和貴子さん 前職は歯科衛生士だった 三陸鉄道の広報担当 三河和貴子さん 前職は歯科衛生士だった

「釜石駅から宮古駅までの区間は震災後、復旧が遅れて止まったままでした。通学や通院、買い物など、沿線の住民にとっては足のような存在で、誰もが気軽に利用していたので、震災後からずっと、列車だけでなく“時”も止まっていたんです」 移管により、三陸鉄道は岩手県の南北をつなげ、第三セクター鉄道として最長の長さに。被災箇所の復旧も進み、2019年3月には全線開通となった。その喜びもつかの間、同年10月の台風で再度被災。再び全線の開通が叶ったのは、2020年3月のことだった。 「地元に列車が戻ってきた! とうれしく感じましたね。これからようやく観光客が増える、と。でもそう思った矢先に、今度はコロナ禍が起きてしまったんです」

世界初、列車で走る聖火リレーを実現

コロナ禍による観光客減少で利用客数は減ったものの、減便はせず、三陸鉄道は従来の列車本数を維持しているという。 列車内に抗菌加工処理を施すなど、安心して利用できる工夫をしてきた。あわせて、観光客向けの目玉でもあるイベント列車も、利用客が密にならないように調整しながら運行してきた。

三陸鉄道で人気の高い観光列車「こたつ列車」 三陸鉄道で人気の高い観光列車「こたつ列車」

しかし、各地の緊急事態宣言は続き、客足はなかなか戻らない。そのような中でも、震災10年目という節目の年ゆえにマスコミからの注目度も高く、たったひとりで三陸鉄道の広報全般を担当している三河さんは忙しい日々を送っているという。 「各地から取材や撮影に訪れていただくことも多いのですが、みなさん事前にPCR検査を受けるなど対策をしてきてくださるので、安心して対応できています」 しかし、いくらマスコミが増えても、一般の観光客は県境を越えて訪れづらいのが実情である。観光地としての復興はまだ遂げられていない中、実施することになったのが聖火リレーだ。 「記録に残っている限り、列車で聖火を運んだというケースはないようなので、世界初の試みになると思います。これまでの復興への感謝の気持ちを聖火リレーを通して世界に届けられたらと、実施を決めました」

誰もが自由に、どこへでも足を運べることが真の“復興”

2021年は、多くの人にとって、新たな活気を取り戻す年になるはずだった。しかし、いまだコロナ禍は収まらず、三陸鉄道に興味がある人も、遠くへ旅に行きたいと願う人も、今は自由に移動することすらままならない。 コロナ禍も乗り越えて、かつてのように誰もが自由に各地を行き来できる状況こそが「復興」だと考えていると三河さんは言う。 「オリンピックを無事に終えたら、三陸鉄道を利用したいと思っている多くの人たちに訪れてほしいと願っています。かつてのような賑やかな日々を取り戻すことが、私にとっての“希望”ですし、“復興”なのだと思います」 そんな希望を灯した聖火が走るのは、普代駅から十府ヶ浦海岸駅までの区間だ。ここには、三河さんイチオシの、多くの人に見てもらいたいという絶景がある。 「聖火リレーの走行区間にある『大沢橋梁』と『安家川橋梁』の景色は素晴らしいですよ。 どちらの橋梁も、ポスターなどによく使われる絶景ポイントなんです」

「大沢橋梁」 「大沢橋梁」

眼下に広がる太平洋の深い青が印象的。時間帯によって変化する海の色も魅力的だ。大沢橋梁は『あまちゃん』のロケ地にもなった。三陸鉄道は、絶景ポイントで列車を止めて、乗客に景色を楽しませてくれるという粋な計らいも行っている。 「特に朝日が素晴らしいんです。写真で見るのももちろん美しいですが、肉眼でしか味わえない感動もあります。聖火が通ったルートを見に三陸を訪れてください」 聖火に託された復興への感謝と希望を乗せて。コロナ禍に負けることなく、今日も三陸鉄道は走り続ける。

「安家川橋梁」 「安家川橋梁」

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