「守りたいし、続けたい」創業171年の老舗かまぼこ店の女店主が聖火に願うこと

一印(いちじるし)かまぼこの松本利恵さん 一印(いちじるし)かまぼこの松本利恵さん

日本海に面した新潟・糸魚川市で、老舗かまぼこ店「一印(いちじるし)かまぼこ」を営む松本利恵さん。 東京五輪開催と創業170年の節目が重なることから、聖火リレー走者に立候補し、選ばれたが、多くの人が想像していた2020年はやってこなかった。 新型コロナウイルス感染拡大の影響で、オリンピックは1年延期となり、松本さんの仕事は大打撃を受けた。厳しい状況の中、それでも前向きに動き続ける松本さんに話を聞いた。

地元・糸魚川への愛と感謝を胸に走る

1年を通して新鮮な魚が水揚げされる新潟県糸魚川市。この恵まれた環境のもと、江戸時代末期の1860年に「一印かまぼこ」は創業された。 社長を務める松本さんは、これまでの感謝の思いを表現する手段のひとつとして、聖火リレー走者に立候補した。 「五輪イヤーと創業170年がちょうど重なったことが、応募のきっかけです。もともと自分たちでも感謝祭をやりたいと考えていましたが、糸魚川市が聖火リレーのコースに決まったこともあり、『聖火を手に走りたい!』と思いました」 新潟県の最西端に位置する糸魚川市は、日本海に面しながらも、豊かな山間部を持つ地域。松本さんはそんな自然豊かな地元をこよなく愛している。

「目の前が海で、後ろには山。とにかく食べものが美味しいんですよ。山からの養分を含んだ水が海に流れ込んでいるし、海が急激に深くなっているので、深海魚や甘エビが美味しい。若い子たちは『何もない』って言うんですけど、それこそが糸魚川の魅力だと思うんです」 コロナ感染拡大の影響により、聖火リレーをめぐる状況は厳しいが、新潟県では予定通り公道で実施することとなった。希望していた糸魚川市で走ることは叶わなかったが、それでもうれしい気持ちは変わらないという。 「新潟の前の石川、富山県ではリレー自体が中止になったんですよね。走れない方がたくさんいらっしゃる中で、自分は走っていいのかな……という気持ちはあります。直前に知りましたが、私は上越市を走ることになりました。できることなら、大好きな地元のコースを走りたかったんですが、走れることだけで感動ですし、がんばりたいです」

地道なPR、新商品かまぼこメンチ……創意工夫で店を守る

糸魚川市はかまぼこの名産地。明治時代の中頃までは47軒もの店があったが、次第に数が減っていき、現在は「一印かまぼこ」たった一軒だけが残る。 ただ、過去には存続のピンチもあった。今から20年以上前の1997年ごろ、経営は傾き「どん底でした」。苦しい状況の中、20代前半だった松本さんは七代目として店を継ぐことを決めた。 「当時は主に両親と祖母が働いていたので、私は“手伝う”くらいの関わり方でした。経営が苦しくなる中で、家族から今後店をどうするかと相談があり、私は残したいという気持ちが強かったので、そこから本腰を入れて仕事をするようになりました。 だんだん魚が取れなくなってきたり、後継者がいなかったりして、みなさんどんどん店を畳んでいかれて、今ではうちだけになってしまいました。今もとにかく店を守りたい、ここで商いを続けたい、という気持ちでやっています」 「一印かまぼこ」の看板商品は、石臼で魚を練り上げる昔ながらの製法で作ったかまぼこ。だが、その定番を売るだけでは経営は立ち行かない。

そこで松本さんは「かまぼこメンチ」など新商品を開発。さらにキッチンカーでの販売やイベント出店などで販路も広げて、新たな顧客を獲得していった。 「とにかく自分の給料は自分で作っていかないといけない、お店を残さないといけない、という気持ちが大きかったです。最初は社員総出で市内を一軒ずつ訪ねて、毎日違う地域をまわっていきました。 そのうち少しずつ買っていただけるようになり、イベントにも出店するようになり、キッチンカーでの販売も始めるなど、自然な流れで評判を広げていくことができました」

「じっとしていられない」逆境を機に新たな挑戦へ

さまざまな努力が実り、一印のかまぼこ商品は糸魚川の名物として口コミで評判が広がった。だが、コロナの影響により、売上はダウン。依然として厳しい状況は続いているという。 「東京や東北など、年間かなりの回数の移動販売を行っていましたが、それがまったくゼロになってしまいました。また県外から来る観光客の方にもよく買っていただいていましたが、観光の流れも止まっているので、かなり大変です……」 それでも、松本さんはめげない。「じっとしていられないんです」と自動販売機でのかまぼこ販売を計画している。 「非対面式の販売のひとつとして何かできないかな、と考えて自動販売機を思いつきました。買って、その場ですぐに食べたい方にも対応できるよう、横に電子レンジを置くサービスも考えています。夏前には実行したいので、今いろいろと考えているところです。 私はこの仕事が大好きなんです。でも、今はがんばりたくても動けない。前のように各地のイベントに出店したり、キッチンカーで販売したり、そうしたことがまたできるようになったらいいなと願っています。今は、動かなすぎてもの足りないです。エネルギーがあり余ってますよね」 松本さんの挑戦は止まらない。「谷底」を幾度も経験しながら、その度に立ち上がってきた、しなやかな強さを持つ人だ。大好きな地元、守りたい店への愛を抱えて走る聖火リレーで、想いをつなぐ。

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