「一度死に直面した人間が元気に走るのを見てほしい」病を克服したミュージシャンが走る聖火リレー

島根県出身で、関西を中心に活動するミュージシャンの日高慎二さん。生まれ育った島根を愛し、地元をPRする楽曲を制作して全国を回っている。島根県ふるさと親善大使を務めるほか、愛知県江南市や豊橋市、群馬県嬬恋村などのPR大使も兼任。それぞれの地域を、聖火リレーのようにつなげることを使命として活動している。 ただ、これまでの道のりは決して平坦ではなかった。大学生の頃ガンに侵され、死を意識。病をきっかけに、当時実業団を目指していたバスケットボールを断念した。だが、そのときの経験が今につながっているという。一度死の淵に立った日高さんが、聖火リレーを通じて今、伝えたい想いとは。

ガンで死を意識し、人とのつながりに助けられた20代

音楽ユニット「X+(えくすと)」のリーダーであり、ギターボーカルを務める日高さん。年間300日ほどライブステージに立っていたというが、コロナ禍で状況は一変。この1年は配信などを中心に活動してきたものの、有観客でのライブは10回できたかどうかだという。クラスターが起きたライブハウスを頻繁に利用していたことでコロナ感染者だと疑われ、いわれのない誹謗中傷も受けた。 「ネットを通して誤った情報が出回ってしまって。メンバーに濃厚接触者はひとりもいなかったのですが、念のためPCR検査を受けたことで、なんとか批判が収まったという状況でした。当時はストレス性の顔面麻痺に罹って、1ヶ月ほど顔の半分が動かなくなりました」 もともと体が強いほうではない日高さんは、バスケットボールの実業団選手を目指していた大学生のころ、大会に出るために受けた健康診断でがんが発覚。肺と腸と泌尿器——同時に3つの悪性腫瘍が見つかったという。 「自覚症状は一切なかったんですが、すでにこぶし大ほどの大きさになっている腫瘍もあって、すぐに手術をすることになりました。当時は、がんを克服した著名人が再び活躍する姿を見るような機会も滅多になく、がん=死というイメージが強かったので、告知を受けたときは『このまま死んでしまうんだ』と覚悟を決めましたね」

3回の手術とリハビリを繰り返し、2年間におよぶ闘病生活を乗り切った。懸命にリハビリに励みバスケットに復帰するも、怪我を繰り返して両膝を故障。誘いを受けていた実業団への道も絶たれた。そんな絶望の中、日高さんを支えたのは家族や友人らの温かいサポートだった。 「大学のある高知の病院に入院していたので、両親は片道8時間もかけて見舞いに来てくれました。大学の友人も、僕が休む暇がないほど頻繁に顔を見せてくれて。結局辞退することになった実業団の代表の方も、『席は必ずあけておくからな』と励ましに来てくれました。そんないくつものつながりが、もっと生きよう、がんばってみようと思わせてくれたんです」

命あるからこそ、好きなことにチャレンジし続ける

 X+(エクスト)として活動する日高慎二さん(写真左) X+(エクスト)として活動する日高慎二さん(写真左)

現在はミュージシャンとして活動する日高さん。過去にはさまざまなことに挑戦してきた。大学時代には学生起業家としてプログラマーをしながら、モデルや役者の活動をしていたこともある。 「NHK朝の連続テレビ小説に出演したこともあるんです。一度命の瀬戸際に立ったこともあり、両親も『やりたいことをやれ』と応援してくれて。おかげで自由に楽しく、そのときやりたいことを選択しながら生きてきました。今は音楽の道で生きていますが、『いい声だね』『いい歌だね』と言ってもらえることがうれしくて、この世界から抜け出せなくなりました(笑)」 コロナ禍で音楽業界も厳しい局面を迎えている。2020年に予定されていた日高さんの音楽ユニット「X+(えくすと)」のメジャーデビューも、コロナの影響で白紙に戻ってしまった。それでも続けていられているのは、やはり多くの人の支えがあってこそだという。 「ファンの方たちのサポートのおかげで、クラウドファンディングを通じてCDを出させてもらいました。この他にも多くのご縁に恵まれて、今秋全国公開されるアニメーション映画の公式アンバサダーにも就任しました。大変な状況の中で好きな音楽をやらせてもらえていることが本当にありがたく、今は配信などを通して、少しでも誰かの力になれればと思っています」

島根の魅力は人の温かさと自然の豊かさ

島根県知事により、一時は中止が検討された聖火リレーだが、条件付きで実施されることが決まった。日高さんも聖火ランナーとして、愛する故郷を走る予定だ。オリンピック開催自体への賛否も問われる中、「どちらの意見も理解できるが、走らせてもらえるのであれば精一杯がんばって、人々を元気づけたい」と日高さんは前向きだ。聖火リレーに応募したきっかけには、仕事を通して「ふたつのもの(人)をつなぐこと」に喜びを感じてきた経験が大きく影響している。

「日本各地で観光大使をさせてもらっているのですが、僕がある商品を別の場所で紹介したところ、コラボ企画が立ち上がって、新たに商品化されたことがあって。そんな風に別々のものが“つながった瞬間”に立ち会えたときに、大きな喜びを感じたんです。聖火リレーもまさに人と人が“つなげていく”ものなので、そこに魅力を感じました」 そんな日高さんの感じる島根の魅力について尋ねると、人の温かさ、そして自然豊かな観光地の数々だと話す。 「島根でライブをしていたときに、全国から遠征してくるファンの方もいたんです。終了時間が押した場合、電車の本数が少ないこともあって、乗り遅れて帰れなくなる方も出てきてしまいます。『それでも最後まで見たい』という方たちのために、地元ファンの方や、会場のスタッフの方が、遠征組を車で送ってくれたんです」 見知らぬ人の車に乗るのはリスクもあり、慎重に判断する必要は当然ある。ただ、「そういう昔ながらの人間関係がまだ変わらず残っていて、人の温かさを感じます」と日高さん。さらに、故郷の魅力をこう続けた。 「島根は観光地同士の距離が離れているので、すべての観光地を巡ろうとすると3日や4日じゃ足りないぐらいだと思います。ただ、観光地をつなぐ道中の景色も楽しめるのが、島根のいいところですね。豊かな緑や海が随所に見られて、都会にはない魅力に溢れていますよ。僕は島根のPRソングに『緑の美術館』という歌詞を入れています。いつか現地で味わっていただきたいです」 島根県のすべてが観光地と言っても過言ではない、と誇らしげに語る日高さんは、故郷を盛り上げるべく今日もマイクを握り続ける。

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