混迷の聖火リレー。坂本龍馬からコロナ禍を生き抜くヒントを学ぶ

幕末の志士・坂本龍馬 幕末の志士・坂本龍馬

聖火リレーは混迷を極めている。コロナ感染再拡大の歯止めが効かない今、大阪市では公道での開催を中止。万博記念公園内の仮設コースを利用し、無観客で行われた。愛媛県でも松山市内での開催中止が決定し、さらに沖縄本島でも中止が検討されている。 そんな逆風の中、4月19日、高知県の聖火リレーがスタートする。最初のルートに選ばれたのは、高知県立坂本龍馬記念館。大政奉還に尽力したといわれる幕末の志士、坂本龍馬の「言葉」を中心に貴重な資料を所蔵・展示している博物館である。 コロナ禍において一変した我々の生活。明治維新という激動の時代を生きた坂本龍馬の言葉の中にも、コロナ禍という激動の時代を生きる私たちへのヒントがあるのではないだろうか。聖火リレーへ託す思いや龍馬について、高知県立坂本龍馬記念館の髙松清之館長に聞いた。

開館30年の節目に直面したコロナ禍

幕末の志士の中でも、大きな人気を誇る坂本龍馬。彼にまつわる所蔵品が展示されている高知県立坂本龍馬記念館は、開館から30年という節目でコロナ禍に見舞われた。 「感染拡大により地域の観光需要は大きく失われました。観光関連産業をはじめ、さまざまな産業分野にマイナスの影響が大きく及んでいます。観光を目的とする人の流れが止まり、当館でも入館者が激減しました」と髙松館長は話す。 高知県は関西圏、東海圏と高知空港を結ぶ航空便を増加。官民協働の取り組みで、ここ10年の県外観光客は右肩上がりとなっていた。しかし状況は一転。厳しいコロナ禍の中でも、できる限りの対策を行い、入館者を迎え続けている。 「一番苦労したのは、感染状況を見極めながら、感染症拡大防止と社会経済活動を両立するための対策を企画し、実施してきたことです。当館では、業界のガイドラインに沿って、感染症拡大防止対策の努力を続けていますし、お客様にも防止のためのご協力をお願いしています」

高知県立坂本龍馬記念館 高知県立坂本龍馬記念館

龍馬の生き様から考える、今こそ忘れてはいけないこと

坂本龍馬は、いわば「江戸幕府を倒すきっかけを作った人」である。 なぜ龍馬は、日本の政治を変えるような大きな仕事を成し遂げられたのか。それは他にはない柔軟性と明確なビジョンを持っていたからだ。立場の違う人の意見にも耳を傾け、相手のいいところを吸収する柔軟な考えを持ち、多くの人が実現不可能だと思うことでも成功させる行動力、そして幅広い人脈。なにより、龍馬は「世界に出たい」という自分の夢に向かって動いた人物である。 諸外国から開国を迫られる中、日本をあるべき姿に導いた坂本龍馬の生き様は、コロナ禍で多くのパラダイムシフトが起こっている現在にも重ね合わせることができるのかもしれない。

激動の世を切り開いた龍馬から学ぶことは多い 激動の世を切り開いた龍馬から学ぶことは多い

「龍馬先生は日本初の商社『亀山社中』から発展した組織『海援隊』の隊長でした。隊の約規の中には『困難は隊員同士が助け合い、困ったことからはお互いが譲り合い、忠義の心を忘れず、筋道を通すこと(現代語訳)』というものがあります」 この海援隊約規にある「助け合い」にこそ、コロナ禍で疲弊している私たちへの教訓が隠されていると髙松館長は感じている。 「制約の多い東京2020大会ですが、オリンピックはスポーツの祭典であり、平和の祭典でもあります。文化や言葉の違い、国境を超えて、世界がひとつにまとまるという点においてもとても意義深いものです。例えば、コロナ禍を乗り越えるには、知見の共有やワクチン、治療薬の供給など、『グローバルに連携する社会』が不可欠であると思います」

希望をつなげる聖火リレー

本来ならば今回は、多くの人に見送られ、坂本龍馬を世界にアピールするチャンスとなるはずだった。しかし、状況が変わっても髙松館長は「希望の道を、つなごう。」をコンセプトとする聖火リレーに期待を寄せている。 「アフター・コロナ社会を築くためにも、希望をつなげることが大切です。聖火リレーは、人々にがんばろうという気持ちを喚起させてくれるものと期待しています。そして、東京2020大会でのアスリートの究極の挑戦とパフォーマンスが、世界の人々にコロナ禍の閉塞感を打ち破ろうと、奮い立たせるきっかけを与えてくれると思います」

四万十市にある岩間沈下橋 四万十市にある岩間沈下橋

高知県から日本を動かすきっかけとなった龍馬と同じように、聖火やオリンピックにも日本のムードを変えてほしいとの思いを託している。 聖火は「雲の上の町」と呼ばれ、観光スポットにもなっている梼原町(ゆすはらちょう)や、四万十川など自然豊かな地を巡る。 「高知県は洞窟探検ができる山遊びに、ラフティングが楽しめる川遊び、抜群の透明度を実感できるダイビングが楽しめる海遊びと、大自然の中での多種多様な体験を楽しめる場所です」と髙松館長。 坂本龍馬とともに池田屋事件で命を落とした中岡慎太郎ゆかりの室戸岬にも聖火が訪れる。

高知市にある桂浜 高知市にある桂浜

「県内には歴史にまつわる施設も数多くあります。龍馬に想いをはせ、歴史探索ができる脱藩の道、高知市桂浜から太平洋に向かって立っている坂本龍馬像、そこから聖火リレーのコースとなった高知県立坂本龍馬記念館……坂本龍馬に関する資料館だけでも高知県内に3ヶ所、歴史に関連する施設ともなると約22ヶ所あります。それぞれに特徴ある歴史的施設ですので、全てを回っても退屈しませんし、とても1日では足りないでしょう」 維新の歴史をゆっくり堪能できる。そんな高知の魅力を語る髙松館長は誇らしげに見えた。 多くの希望をつなげて走る聖火リレー。幕末の志士たちに、今の日本はどのように映るのだろうか。

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