笑い飯・哲夫が思う、幸せだった「日常」と聖火への思い

関西のお笑いを牽引する漫才師、笑い飯・哲夫さん 関西のお笑いを牽引する漫才師、笑い飯・哲夫さん

実力派漫才師としてお笑いファンから愛される、奈良県出身のコンビ「笑い飯」。2020年は節目の年でありながらも、新型コロナウイルスの影響で仕事が激減し、観客の前で漫才ができない期間が長かった。苦しい時期を経た今だから感じることを、笑い飯・哲夫さんに聞く。 哲夫さんは奈良国立博物館の文化大使を務めるなど、故郷・奈良の名所や文化にも詳しい。奈良を駆け抜ける東京五輪の聖火や奈良の神社仏閣への思いを語ってもらった。

2020年、漫才の営業仕事は「ほぼ皆無」

昨年、コンビ結成20周年を迎えた笑い飯。記念すべき年になるはずだった2020年は、新型コロナウイルスの影響により仕事が激減し、苦しい1年となった。 「去年は、吉本の劇場以外でやる漫才の仕事はほぼ皆無でした。吉本の劇場でもしばらくは無観客配信でライブをやってたんですが、お客さんの笑い声がないとネタのウケ具合が分からないんですよ。だから、吉本の社員さんが舞台袖で無理に笑ってくれはるわけです(笑)。気ぃ遣わせてんなあと思って、申し訳なかったですね」 コロナの影響はさらに、家庭内にも及んだ。高齢の両親に孫の顔を見せたいと思いつつも、感染のリスクを考えるとなかなか対面させられないことが辛かった。 「まだ子どもが小さいんで、本当は僕の親にもたくさん抱っこしたりおんぶしたりしてもらいたい。けど、お年寄りはコロナが重症化するリスクが高いと聞いてたんで、やっぱり家族のことを思うとほとんど会えなくて、しんどかったですね。でもメディアに出る立場っていうのもありますし、感染対策はより一層徹底しなきゃと思うんです。僕自身は人との外食もしなくなりましたし、周りにも、食事してても喋るときはマスクしようや、ってできるだけ伝えるようにしてるんです」

劇場から笑い声があがることのありがたさ

昨年は辛いことも多かった。一方で、これまで当たり前だと思っていた日常のありがたさや、人のぬくもりを感じる機会にもなった。特に、ライブが徐々に再開して劇場に客が戻ってくると、客席から笑い声があがる喜びを改めて実感したという。 「ああ、ウケてるときってこんな感じで笑ってくれはったなって。やっぱりお客さんがいると全然違うわって思いました。それでも客席数自体を今減らしてるはずなんで、満員の劇場でウケてるときってよっぽど気持ちよかったんやろなあとか、懐かしく思いますね。これまで普通に過ごしてきた日常って、ホンマに幸せだったんだなと」

日常生活の中でも、人の優しさやちょっとした気遣いを感じることが増えた。 「感染対策をしながら生活してはる人も多い分、できるだけ人にうつさへんようにしようとか、大変なときやけど助け合おうっていう周りの気持ちが見える。そういう優しさや思いやりに触れる機会が増えたのは、コロナになって唯一よかったことかもしれませんね。……あと、ニンニクをどれだけ食べても誰にも怒られへんのもいいことかな。みんなマスクしてますから」

聖火を見ると思い出す、延暦寺の「不滅の法灯」

哲夫さんは、神社仏閣にまつわる著書を多数出版するなど、奈良県の観光名所や、神社仏閣・仏教への造詣が深いことでも知られている。4月11日・12日の2日間、東京五輪の聖火は奈良を駆け抜ける。聖火への思いを哲夫さんに尋ねると、こんな予想外のエピソードが飛び出した。 「天台宗の総本山・比叡山延暦寺に、『不滅の法灯』っていう名前の、平安時代からずっと消えてないと言われてる火があるんですよ。今も灯籠の中で菜種油を燃料にして燃えてるんですけど、一度でも気ぃ抜いて油を注ぐのをやめたら、火が消えてしまう。そこから『油を断つ』に由来を持つ『油断』という言葉ができた、って説があるんです」

「不滅の法灯」が燃える比叡山延暦寺の根本中堂 「不滅の法灯」が燃える比叡山延暦寺の根本中堂

聖火のニュースを見てると延暦寺の火を思い出すんです、と哲夫さんは言う。“油断”することなく感染対策を続けながらも、五輪を楽しめたら、と願う。 「感染が拡大してる中での開催となってしまって、オリンピックって誰のためのものなん? みたいな話も出てますよね。選手のための祭典やと思いたいけど、『なんなん?』って感じる人の気持ちも正直分かります。でも、五輪って本来は国と国が武器を置いて競い合う平和の祭典だと学校で習いましたし、僕自身もそう思ってます」

世界遺産が豊富な奈良県、聖火リレーコースにも見どころが

奈良の魅力を人一倍知る哲夫さん。聖火リレーのコースの中で特にお気に入りの場所や見どころを尋ねると、豊富な知識とともに、多くの名所を挙げてくれた。 「奈良は世界遺産が豊富な県です。南の方から行くと、まずは世界遺産、紀伊山地の霊場と参詣道の一つ、吉野の熊野古道。金峯山寺というお寺には、日本一大きな蔵王権現の仏様さんがお三方もいらっしゃるんですが、これはなかなか圧巻ですよ。聖火は法隆寺と法起寺を通るんですよね? そのふたつのお寺ももちろん素晴らしいですし、僕のお気に入りはその近くの法輪寺というお寺です。

哲夫さんのお気に入り「法輪寺」 哲夫さんのお気に入り「法輪寺」

それから、聖火のコースからはちょっとだけそれますが、吉水神社っていう神社もおすすめです。南北朝時代の後醍醐天皇ゆかりの地といわれ、歴代の天皇のお顔が描いてある掛け軸があって、それはホンマすごいです。教科書の中で名前は知ってても、実際に後醍醐天皇がどんな顔してたかなんて知らないじゃないですか。『この人こんな顔してたんや!』みたいな驚きがありますよ。北門から見える金峯山寺も、めっちゃ綺麗です」 神社の神主さんに教えてもろたんです、と謙遜しながらも、その口調からは故郷を愛していることがありありと伝わってくる。奈良には、県外からも足を伸ばして訪れてほしい見どころがたくさんある、と言う。

吉野山にある吉水神社も哲夫さんお気に入りの一社 吉野山にある吉水神社も哲夫さんお気に入りの一社

「かっこつけたことを言いますけど、2021年は『日常』の年にしたい。そのためにはやっぱり、コロナが早く収束することが一番大事ですよね。これからも感染対策は“油断”せずに続けていかないと、と思いますね」

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