「道の駅なみえ」駅長が問う復興の意味と聖火の意義

「道の駅なみえ」東山晴菜駅長 「道の駅なみえ」東山晴菜駅長

福島県浪江町幾世橋、東日本大震災で津波の被害に遭った請戸地区の隣。2021年3月20日、福島県浪江町の“復興のシンボル”として、「道の駅なみえ」がグランドオープンした。ここは、3月25日から始まる聖火リレー第10区間のゴールにもなっている。「道の駅なみえ」 駅長である東山晴菜さんに「復興五輪」について聞いた。東日本大震災、そして新型コロナウイルスを経た今、浪江町が向き合っているものとは。

「復興ってなんですか?」

「この町がどういう状態になったら、復興したといえるのでしょうか。ニュースでは帰還者が今何%だとかよく言われますが、帰還することがいいことなのか。人がたくさん住むことがいいことなのか。それが復興なのか。どうしても数字ではかられることを、疑問に思います」 グランドオープンから4日目。活気を見せる「道の駅なみえ」で、駅長の東山晴菜さんは語気を強めた。 「復興ってなんですか? 私からしたら、毎日復興していると感じますよ。犬の散歩をしている人がいたり、子どもたちが走り回っていたり、普通に暮らせることが復興なんです。ここはある日突然、住むことができなくなってしまった場所です。今はここで普通に生きている人がいる。帰りたくても帰ってこられない人もいる。戻ってきた人、二拠点で暮らす人、戻らないと決めた人……誰もが選択し、迷いも抱え、出せない答えと向き合って生きています。どこに住んでいても、その人が普通に幸せに暮らしていることが復興だと、私は思います」 大阪で食品のバイヤーをしていた東山さんは、残留放射能による風評被害に疑問を抱いた。2015年に福島に入り、NPOや大学職員の仕事を経て、浪江町で地域づくり支援員になる。避難指示の一部解除から約一年が経つ、2018年のことだ。浪江町に戻ってきた人を一軒一軒訪ね、話を聞く毎日。「誰が帰ってきているかわからない」というような声から、人と人のつながりがないことを実感した。

東山駅長は「道の駅を訪れる地元の方との会話に私が元気をもらっています」と語る。 東山駅長は「道の駅を訪れる地元の方との会話に私が元気をもらっています」と語る。

ハブとなる場が必要だ。そう思っていた矢先、浪江町で構想していた「道の駅なみえ」がプレオープンすることに。「駅長をやらないか」という話を、東山さんは引き受けた。 「この駅は、今の浪江に必要な場所だと思いました。地域の人たちが作ったものを販売することで、『あ、この人浪江に帰ってきてるんだ。頑張ってるんだ』という会話が生まれるのが、嬉しいですね」

プレオープンからわずか一カ月でコロナによる休館

「道の駅なみえ」は2020年8月1日に、本館のみプレオープンを迎えている。しかし同月20日にスタッフが新型コロナウイルスに感染。オープンから一カ月足らずで、やむなく11日間の休館を迎えた。 「専門家の指導のもと、徹底した感染対策をしていました。誰かが悪いわけじゃない、ましてや感染したことは責めたりできることではない。それでも公共的な側面を持った施設ですし、いろんなお声があるだろうとは覚悟していました」 中には、心無い誹謗中傷を投げかける人もいたという。しかし同時に、励ましの言葉やスタッフの支えもあったと、東山さんは振り返る。この時期をともに過ごしたスタッフは、感染対策に対して、一層強い意識を持っている。 「不特定多数の方が大勢出入りする施設なので、今でも当然、感染対策にはものすごくエネルギーを割いています。当たり前のことですが、マスクの着用や消毒液の設置、定期的なアルコール消毒など、大学の先生方のご助言をいただいて、体制を整えています」

別館では日本酒を愉しみながら食事ができるスペースもある。 別館では日本酒を愉しみながら食事ができるスペースもある。

そうして迎えたグランドオープンで、新たに別館が加わった。別館には浪江町の伝統工芸品「大堀相馬焼」の展示販売、体験教室、鈴木酒造店の酒蔵が入っている。鈴木酒造は“日本一海に近い酒造”と呼ばれていたが、東日本大震災の津波で酒蔵を失った。山形県長井市で再開していたが、今回の道の駅オープンに合わせて、浪江町でも再出発することとなった。

聖火リレーをきっかけに浪江町の今を知って欲しい

もともと浪江町のコースは、福島ロボットテストフィールドから福島水素エネルギー研究フィールドまでが想定されていた。それが、浪江小学校からスタートし、国道114号線を通るルートに変更。市街地を通るコースとなった。 「コースが変わったことはよかったと思います。このコースなら浪江町で人が暮らしていることを発信できる。聖火リレーをやることについて賛否だけでなくいろいろな意見があるとは思いますが、やるなら準備と対策をきっちりしてやるしかないのでは」 目下、東山さんの頭の中は、道の駅をいかに盛り上げていくかでいっぱいだ。グランドオープンから日は浅く、やることは膨大にある。 「今は道の駅の責任者としての役割を果たすことが、ここで関係してくれる農家のみなさんや町民のみなさん、スタッフに対して役に立てること。オープンして今日で4日目、まだまだ経験も足りませんし、そもそも働く人口が少ない地域ですから、体制もギリギリです。これからもっとたくさんのお客様に来ていただいて、それでもご迷惑をおかけすることのないように、組織を整えていきたいなと思います」 東山さんには、一切の迷いがない。常に浪江町のことを考え、日々奔走している。聖火より走り回っているんじゃないですか、と問いかけると、東山さんは「走ってますね」とお茶目に笑った。

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