先生はインスタ&TikTok!スケートボードの金メダル候補たちの素顔

2021/7/23 8:00

活躍が期待される堀米雄斗(写真:ロイター アフロ)

東京大会から正式競技となったスケートボードは、ストリート、パークの2種目ともに日本人選手のメダル、活躍が期待される種目だ。ストリートカルチャーから誕生したスケートボードの金メダル候補、男子ストリートの堀米雄斗、女子パークの四十住さくら、岡本碧優の3選手を中心に新競技スケートボードの魅力に迫る。

スケートボード初の金メダル有力候補、クールな実力者・堀米雄斗

一説にはサーファーたちの遊び、陸上でのトレーニングとして誕生したといわれるスケートボードは、街で生まれ、ストリートで発展していった。

縁石や階段、手すりなど、街中に当たり前にある風景を模した障害物でトリック(ジャンプ、空中動作、回転などの技)を決める「ストリート」は、まさにストリートカルチャーとしてのスケートボードをそのまま競技に変換したような種目だ。

一方の「パーク」は、すり鉢状のコースでトリックをメイクする回転技が主体のアクロバティックな種目。その競技性は、冬季オリンピックのスノーボードで、2大会連続銀メダルを獲得している平野歩夢が日本代表として出場権を得ているように、スノーボードのハーフパイプに近い。

監修:矢内由美子 画像制作:Yahoo! JAPAN

男子ストリートで本場アメリカ勢、世界の強豪たちと並んで金メダル候補に挙げられているのが、22歳の堀米雄斗だ。

15歳でアメリカに渡り、「移動手段もスケートボード。街の中にスケートボードが当たり前に存在している」現地で腕を磨いた。

普段の堀米は、ストリートカルチャーから誕生したスケートボードに似つかわしくないほど寡黙でシャイ。取材で話を聞いた際に印象に残ったのは、一見クールに見えて、自分がまだできないトリック、新しい技に対する意欲、スケートボードに対する情熱にあふれた熱い一面を持っていること。

2017年、18歳の時には世界で最も権威あるコンテスト「ストリートリーグ」で準優勝、翌年には優勝を遂げ、一躍世界のトップスケーターの仲間入りを果たした。

2016年スケートボードが追加種目に決定された時の会見で話す堀米(写真:アフロスポーツ)

20歳超えたら中堅? 10代が席巻するスケート界

スケートボード競技の世界的傾向として挙げられるのが、"有力選手の低年齢化"だ。1998年生まれの平野、1999年生まれの堀米ら20代の選手は中堅扱い。オリンピック日本選手最年少出場の可能性が高い12歳の開心那、15歳の岡本碧優、19歳の四十住さくらが代表の女子「パーク」は代表全員がティーンエージャー。

2018年には、この年からパークが正式種目に加わった日本選手権、スケートボード自体が初登場となったアジア大会、第1回世界選手権のすべてを制した四十住さくらは、19歳にしてこの種目に関しては最も経験豊富な"ベテラン"といえる存在。

小学校6年生の時に「兄に憧れて」始めたスケートボードは、「家の前で毎日没頭する遊び」から、気づけば試合、大会、オリンピックと滑る場所が変わっていった。

2018年アジア大会では金メダルをとった四十住さくら(写真:長田洋平 アフロスポーツ)

四十住を抑え、世界ランキング1位(2021年7月発表、四十住は2位)の座にいるのが、岡本碧優だ。

2019年には、空中で体を一回転半させるエアトリック「バックサイド540(ファイブフォーティー、通称ファイブ)」を女子選手として初めて成功。今年5月に行われた大会では、四十住もこの大技を成功させているが、高難度のトリックの手数では岡本が一歩リードしている。

先生はインスタ! 世界と瞬時につながるデジタルネイティブ世代の上達法

小学校6年生でスケートボードを始めた四十住と、2年生で始めた岡本。2人に共通するのが、兄の影響だ。四十住は「大好きなお兄ちゃんに構ってほしくて」コミュニケーションの道具としてスケートボードを手にしたという。兄の興味は早々に他に移ったが、四十住は飽きることなくスケートボードに熱中し、1カ月に1回はデッキが割れ、2足のシューズを履きつぶすほどのめり込んだ。

四十住よりも後の世代の岡本は、すでに競技として結果を求められることが当たり前になっていたスケートボードの世界で早くから頭角を現し、小学6年生の時には世界選手権で5位に入賞している。同時に中学生にしてプロになったスケーター笹岡健介の実家に下宿しながらその才能を磨いた。

2019年12歳の時にデュー・ツアーで優勝した岡本碧優(写真:USA TODAY Sports ロイター アフロ)

新時代の競技ともいえるスケートボードは、旧来のスポーツのように、指導者、コーチに教わるという文化があまりないのが特徴的だ。競技を経験した指導者が少ないこともあるが、彼、彼女たちの"先生"は、スケートパークで一緒に滑る仲間であり、世界中のスケーターたちだ。

「新しいトリックは、誰かが成功したらインスタとかに上がって、それをすぐにまねしたりしますね」

以前インタビューした堀米に新しいトリックの着想法、練習方法を聞いた時、こんな答えが返ってきた。スマホネイティブの10代の選手たちは、世界のスケーターたちがInstagramやTikTok、YouTubeに上げる動画を日常的にチェックしていて、誰かが新しい技に成功すれば瞬く間に世界中に拡散される。

オリジナリティとスタイルが重視される新時代の採点競技

父の影響でスケートボードを始めた堀米は最新の情報に、"ビデオ時代"のレジェンドスケーターたちの情報を加え、独自路線を歩んでいる。

堀米の得意技「ノーリー270スイッチバックサイドテールスライド」は、1990年代にストリートから生まれた幻の技で、堀米はこれを現代風にアレンジ、競技にも対応する高難度トリックとしてよみがえらせた。こうしたオリジナリティは、マシンのようにトリックをこなす選手とは一線を画す、"スタイル"として評価され、採点にも影響を与えている。

スケートボードはトリックの難易度やスピード、独創性やストーリー性で競われる採点競技だが、加点はあっても基本的には完璧な演技を想定した持ち点から減点していくフィギュアスケートなどと違い、トリックのオリジナル性、"スタイル"も重要視され、点数に反映される。

競技者としてだけでなく、ストリートでも尊敬を集める堀米の"スタイル"は大きな武器。岡本、四十住がそれぞれ成功させている「バックサイドファイブ」も、同じトリックであって、微妙にディテールの違う、各々のスタイルが反映されたオリジナルの必殺技になっている。まずは「着地」「成功」が第一なのはもちろんだが、日本人選手のスタイルに注目して過去の動画をチェックしておくと観戦体験がより深まるだろう。

堀米が登場する男子ストリートは7月25日、女子ストリートは翌26日、四十住、岡本が出場する女子パークは8月4日、男子パークは5日に開催。競技性だけでなく、スタイリッシュであること、オリジナリティや「かっこ良さ」にこだわる新競技、スケートボードに注目だ。

画像制作:Yahoo! JAPAN

(文・大塚一樹)