徐々に増える五輪関係者の入国、一般旅客との対応に違いは? 空港の今をレポート

2021/7/22 9:00

東京五輪仕様になっている羽田空港(以下、写真は全て筆写撮影)

7月23日の東京五輪開幕が迫り、海外からの選手団、大会関係者、メディア関係者の入国が相次いでいる中、羽田空港と成田空港の状況、選手の入国の状況などはどうなっているのか。7月4日に海外から帰国した筆者が羽田空港で入国するまでのプロセスも含め、五輪専用レーンの運用、航空会社、空港の状況についてレポートする。

7月から羽田空港・成田空港がようやく五輪モードに

6月中旬までは、羽田空港や成田空港の関係者、さらには航空会社などに取材を進めていても、最終的にどのタイミングで大会関係者が来日し、どの程度の人数が入国するのかという情報が限定的で、羽田空港や成田空港では、組織委員会などからの情報待ちの状況であった。だが、7月に入ってから状況は大きく動き出した。羽田空港や成田空港では大会関係者専用の入国レーンが設置されたのだ。

専用レーンは一般の乗客とは異なる導線で、全ての入国者に義務付けられている唾液による抗原検査なども一般の乗客と異なるエリアで行われている。

降機後、表示案内に従いさまざまな手続きが続く

筆者は7月4日にハワイ・ホノルルから羽田空港に到着したが、搭乗していたANA便の機内アナウンスでは、飛行機を降りる順番は3段階に分けられる旨が伝えられた。最初に羽田空港到着後に国際線に乗り継ぐ乗客(いわゆる日本には入国しない乗客)、次に日本に入国する一般乗客、最後に五輪関係者の順番で降機するとのことだ。筆者が搭乗していたハワイ便には、大会関係者の姿はないようだった。ただ、五輪開幕が近づくにつれてニュースなどでも取りあげられているように、徐々に五輪関係者の入国は増えている。

大会関係者レーンはロープ1本で分かれている 7日以降は陰性確認前に入国審査へ

飛行機を降りてしばらく通路を歩くと、一般乗客と大会関係者のレーンに分けられる。レーンが分かれた先は、撮影禁止になるので写真の掲載はできないが、分けられた後はロープ1本で左側が一般の乗客、右側が大会関係者の導線(通路)になる。

一般乗客と大会関係者のレーンの表示

一般乗客の手続きとしては、まずは陰性証明書の提出、質問票などの確認を終えた後に抗原検査のための唾液採取となる(その後、アプリの設定、待機場所の確認などの手続きを経て、陰性が確認されるまで待機)。大会関係者についても、ここまでの流れはほぼ同様で、抗原検査で陰性が確認するまで入国審査はせずに待機場所で待機する措置がとられていたが、7月7日以降はアスリートなどについては検査結果を待たず、入国審査に進む運用に変更されている。

検査で陰性が確認されると入国審査へ進むための紙が渡される

筆者が7月4日に羽田空港に到着したのは17時過ぎで、14時~18時の夕方時間帯の到着便を見ると、6~7便の到着便があったが、飛行機を降りてから約2時間20分で到着ロビーに出ることができた。ただ到着便が重なると、抗原検査を受けるまでに長い時間を要することもあるようだ。特にターミナル内に多くの人が滞留している場合は、飛行機が到着ゲートに入っても飛行機から降機させない措置もとられており、到着からロビーに出るまで5~6時間を要したケースも出ている。

到着後の手続きが全てスムーズに進んでも、抗原検査の結果が出るまで検体採取から最低でも1時間以上は要することから、どんなに早くても到着ロビーに出るまで2時間弱の時間を要することになる。

検疫ブース手前にID有効化のカウンターが設置

現在、羽田空港では入国審査前の検疫ブースの手前に、大会関係者専用のオリンピック・パラリンピックのIDを有効化する「PVC有効化カウンター」が設置されており、ここでID関連の手続きが行われているようだ。筆者が到着した際にも係員が待機しており、五輪関係者が到着した場合にすぐに手続きができるようになっていた。

「PVC有効化カウンター」

その後、入国審査、税関検査に進むことになるが、ここでも大会関係者と一般乗客とで異なる導線を使用しており、原則交わることはない運用となっていた。不安に思ったこととしては、7月7日から検査結果を待たずに移動させる運用が始まってしまったという点である。大会関係者の入国ラッシュになることで、検査結果が出るまで待機するスペースがこれまで以上に手狭になってしまう状況を回避する意味もあるようだが、基本的には空港の外には陰性が確認されるまでは出さない運用になっている。

これに対して、一般乗客同様に陰性確認までは入国手続きを進めるべきではないという声が国民の間では出ている。バブル方式を徹底させるということであれば、少なくとも陰性確認までは到着ロビーに出すことは避けるべきだろう。

現在は定期便での入国がほとんど、開会式直前からはチャーター機も

今回、選手をはじめとした五輪の大会関係者は、どのような便で日本へ入国をしているのか調べた。五輪の開会式直前には多くの選手をまとめて運ぶべくチャーター便で来日する選手団もあるとのことだが、7月前半の入国については、ほとんどが定期便の利用で、一般客と同じ便で来日している。五輪開催が明確になった段階の6月後半から7月前半にかけて海外の航空会社を中心に運休中だった日本路線を相次いで再開させる動きが出ている。

日本に到着する国際便

IOC(国際オリンピック委員会)のトーマス・バッハ会長もルフトハンザ ドイツ航空の定期便で7月8日に来日した。

海外航空会社の日本路線、新規就航や増便の動きも

羽田空港や成田空港に到着する便数は、2020年4月から本格化した新型コロナウイルス感染拡大による大量運休後、大幅減便は継続しているが、五輪が開幕する7月はコロナ禍に入ってから最も多くの国際線が羽田空港や成田空港中心に到着することになる。

本来、2020年春に羽田空港に乗り入れる予定だったスカンジナビア航空、アリタリア-イタリア航空、日本初就航のインドのビスタラなど当初の予定から約1年3カ月遅れで新規就航した路線もある。「特段の事情」がある場合を除き一般の外国人においてはビジネス、観光問わず日本への入国は認められない状況が続くこのタイミングで日本路線を復活した背景には、各国の選手団や五輪関係者を日本へ直行便でスムーズに運ぶ目的がある。路線再開のほかにも、増便する海外の航空会社が増えているなど、7月に入ってからは羽田空港・成田空港ともに五輪シフトになっている。

ただ、ANAやJALなど日本の航空会社については、五輪に合わせた増便や路線再開などは特段行っていないが、ヨーロッパ路線や北米路線は毎日運航している路線もあり、海外の選手団や大会関係者の中には、日本の航空会社の定期便で来日するケースもある。
筆者は、7月19日に成田空港第1ターミナルで取材をしていたが、続々と選手や大会関係者が入国していた。関係者に話を聞くと、成田空港における入国のピークは7月18日で唾液による抗原検査をするまでに長い時間を要し、到着してから入国するまでに5時間以上を要しているケースもあった。なかにはくたびれた姿で到着ロビーに出てきていた選手の姿も見られた。空港内では、到着した選手・大会関係者をサポートするボランティアスタッフの姿も多く見られ、おそらく五輪の雰囲気を今もっとも感じることができる場所が空港と言える。到着ロビーまでの導線はしっかり分けられているが、到着ロビーを出たあとは、簡易的な専用通路のようなものしかなく、一般人と交わることも難しくない状況になっていた。

成田空港に到着した選手・大会関係者(7月19日撮影)

国内の航空会社は五輪特需の恩恵を受けられず

羽田空港や成田空港には大会関係者が次々と到着している状況にあるが、まだまだ国際線は厳しい状況が続いている。ANAやJALでは国際線貨物事業は旺盛であるものの、現在でもコロナ前と比べて国際線利用者は8~9割減となっている。

本来であれば、東京五輪・パラリンピック期間中に世界中から観光客が日本を訪れ、日本滞在中に国内線を利用して全国各地に観光へ出かけることを想定していた。それが1年延期となり、追いうちをかけるように訪日外国人の観戦どころか、国内在住者の観戦の機会も無観客がほとんどなくなってしまったことで、国内移動も含めて航空業界の損失は計り知れない。

成田空港で選手・大会関係者が出てくる出口(第1ターミナル)

ワクチン接種が進むことで、年内にも入国制限や到着時14日間自主待機の緩和も考えられるが、東京五輪に間に合わなかったことで、航空業界は引き続き厳しい状態が続く。そして東京五輪・パラリンピック後、当面は海外からの入国制限も継続されるなかで、海外航空会社の日本路線がこのまま運航を継続するのか、再び運休になるのかにも注目が集まる。

年間4000万人のインバウンドを想定していたが......

本来であれば東京五輪開催による効果で、海外からの観戦客を含め多くの外国人観光客が日本を訪れ、日本政府が目標としていた2020年の4000万人の訪日外国人観光客(インバウンド)という目標も簡単にクリアできただろう。しかし、日本在住者でもほとんどの会場で観戦ができないという前例のない五輪をまもなく迎え、空港の様子もお祭りムードとは程遠い状況だ。このような状況での開催ではあるが、行動制限などの厳しいルールの下での日本滞在となる出場選手については、今までの練習の成果を最大限発揮して競技に臨んでほしいと願うばかりだ。

(文・鳥海 高太朗)