急成長を続ける若きスイマー・佐藤翔馬 北島康介の背中を追い、競泳・平泳ぎで金メダル獲得へ!

2021/7/22 9:00

写真:YUTAKA アフロスポーツ

日本のお家芸である競泳・平泳ぎの誇らしき伝統を、未来へつないでいく若きスイマーがいる。男子200m平泳ぎの東京五輪代表、佐藤翔馬(慶応大3年)。世界選手権にもパンパシフィック選手権にも未出場ながら、この2年で自己ベストを3秒近くも縮め、世界の頂点を狙える実力をつけてきた期待の20歳だ。「目指すのはもちろん金メダル。自分の泳ぎをしっかり本番でできれば、おのずと勝ちも見えてくると思います」と威勢よく語る、伸び盛りの超新星の素顔とは。

北島康介の背中を追って過ごした水泳の日々

2001年2月、東京都港区生まれ。祖父と父をはじめ、医師が4代続く医療系一家に育った佐藤は、幼稚舎からの生粋の慶応ボーイでもある。0歳で母と一緒にベビースイミングに通い、小学校3年生から北島康介ら数々のオリンピアンを輩出した東京スイミングセンター(SC)へ移籍。

「子供の頃からとにかく泳ぐのが好き。もっと速く泳げたらもっと気持ち良いんじゃないかと思っていました」

生粋の水泳好きは、北島を意識しながら鍛錬の日々を過ごすことで、少しずつ力をつけてきた。

佐藤がブレークを果たしたのは、慶応大1年だった20年1月に行われた「北島康介杯」だ。このレースで出した2分7秒58は、それまでの自己ベストを一気に1秒63も縮めるタイム。19年世界選手権銅メダリストで元世界記録保持者の渡辺一平を破って周囲をあっと言わせ、「2分8秒台を出したことがないのに7秒台が出るとは。1月なのに今年の目標をもうクリアしてしまいました」と無邪気に喜びを爆発させた。

2020年北島康介杯では渡辺(左)を破って佐藤(中央)が優勝した(写真:日刊スポーツ アフロ)

この時の快泳が、それまで24年パリ五輪を目指していた佐藤の心を東京五輪へと向かわせた。20年の春先以降は新型コロナウイルス感染拡大で試合が軒並みなくなったが、夏場を過ぎてレースが再開していくと、コロナ禍中にため込んでいたエネルギーを一気に爆発させるようなパフォーマンスを見せた。

10月のインカレでは、150mまで世界記録を上回るペースで飛ばし、1月に出した自己ベストを0秒56も更新する2分7秒02で優勝。五輪のメダルが視野に入るタイムでまたしても周りを驚かせた。

しかし、佐藤自身は、「世界記録(2分6秒12)更新を狙っていたから、残念。150mまではプラン通りだったけど、ラスト50mは33秒台に落ちた。それさえなければ...」
と顔をしかめていた。

「最初の50mを28秒、その後は32秒、32秒、32秒」という当初想定していたラップに及ばず悔しがる様子からは、世界記録の塗り替えを見越した練習をしてきたことが伝わってきた。

武器は強力なキックと勝負所の集中力

20年の勢いは、年が明けてからも止まらなかった。21年1月の北島康介杯では世界歴代4位(当時)となる2分6秒78を出して優勝。そして、東京五輪代表選考会となった4月の日本選手権では世界歴代2位(当時)となる2分6秒40の日本新記録で優勝した。

佐藤の武器は足首の柔らかさを生かした強力なキック。それともう一つ、自他ともに認める長所がある。「集中力」だ。

「一つのことに集中しなければいけない時に、集中力を発揮するのが得意。例えば、レポートを書かなければいけない時は、とにかく早く終わらせたいので集中してすぐできます。水泳の練習でも、ものすごくつらいメニューがあるのですが、一旦やり始めるとどんどん泳ぎ続けることができます」

2021年日本選手権 男子100m平泳ぎ決勝で力泳する佐藤(写真:YUTAKA アフロスポーツ)

集中力を武器に、ここぞというレースで爆発的なパフォーマンスを見せてきた。大舞台になればなるほど強さを発揮してくれそうだと感じさせるのも、佐藤の魅力だろう。

五輪の舞台で次世代の子供たちに憧れの気持ちを与えたい

日本選手権以降は、持ち味である前半のスピードをさらに磨く方向で強化を進めてきた。

東京五輪で最大のライバルと目されるのはアントン・チュプコフ(ロシア)。19年世界選手権で出した2分6秒12の世界記録を持つ選手だ。前半型の佐藤に対し、チュプコフは後半に強さを発揮するタイプ。特に150m以降のラップは31秒台と異次元で、前半の100mまではライバルたちの様子をうかがいながら泳ぎ、後半に追い抜いていくという自在なレース運びを可能としている。

佐藤としては、後半勝負に持ち込ませては分が悪くなるはず。そこで考えたのが、前半のスピードに磨きをかけるというプランである。4月の日本選手権以降、佐藤は「自分が得意としている150mまで(のタイム)を上げる方向にシフトしていきたいと思っています。チュプコフのレース展開に合わせたら絶対に終わりなので、僕は僕のレースをするという気持ちでやってきたい」と意気込んだ。

また、6月に2分6秒28の好タイムを出した警戒すべきライバル、ザック・スタブレティ・クック(オーストラリア)についても、雑念に捉われることなく「自分の泳ぎに集中する」と語る。

東京五輪の開催が決まった中学1年生の頃、オリンピックはテレビで見ていたものの、自分が出るものではないと思っていた。しかし今、佐藤は「僕が活躍することで、自分が子供の頃に抱いた憧れの気持ちを、オリンピックを見る子供たちにも持ってもらいたい」という。

日本の競泳陣が歴代の五輪で獲得した計22個の金メダルのうち、平泳ぎは半数以上の12個(男子9、女子3)を占める。佐藤は今、東京SCのレジェンドである北島に次ぐ男子平泳ぎの金メダルを獲得し、伝統をつなげていく覚悟を決めている。

「(北島)康介さんもしっかり金を取っている。僕も金を取りに行きたい」

今が最も伸び盛りの20歳は、勢いと確かな実力で金色に輝くメダルを手にするつもりだ。

画像制作:Yahoo! JAPAN

(文・矢内由美子)