「日本の強みはスピード」車いすバスケ女子・指揮官が2020に向けて語る

2019/8/30 14:42

2020年、メダルを目指す日本代表チームにスポットを当てた連載企画「THE TEAM」。日本はいかにして世界と戦っていくのか・・・過去に2度、パラリンピックで銅メダルを獲得している車いすバスケットボール女子日本代表。2008年北京大会では4位と3度目のメダル獲得にあと一歩のところまで迫るなど、世界の強豪国の一つに君臨していた。しかし、2012年ロンドン、2016年リオデジャネイロと2大会連続でパラリンピックの舞台に上がることさえできていない。3大会ぶりとなる東京2020パラリンピックで、果たして日本はどう世界に挑むのか。今週末に行われる「電機WORLD CHALLENGE CUP2019」では、エキシビジョンマッチとして強豪オーストラリアとの強化試合に臨む、「闘う集団」としてチームを構築する岩佐義明HCと、指揮官を支える山﨑沢香ACにインタビューした。

©Takao Ochi

「闘う集団」に必要な"競争心"と"納得感"

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2008年北京パラリンピックでメダル・ゲームに導き、表彰台まであと一歩というところまで女子日本代表を押し上げたのが岩佐HCだ。東京では、それ以来となる女子日本代表の指揮官を務める。

その岩佐HCが今、代表に求めているものとして、開口一番に語ったのは「闘争心」だ。

「目指しているのは、全員が強い気持ちを持った"闘う集団"。メンバー12人誰がコートに出ても強い姿を見せることができ、そしてスタッフも含めて全員が同じ目標の上に一丸となっていけるチームで世界に挑みたいと思っています」。

切磋琢磨し、共に同じ目標に向かって進み続ける「闘う集団」。そのために必要なことの一つが、「コート上の選手とベンチメンバーとの気持ちの結びつき」だと岩佐HCは考える。
それは、実体験によるところが大きいという。

大学までバスケットボール部に所属し、まさに"バスケ一筋"の青春時代を送ってきた岩佐HC。常に第一線で活躍できたわけではなかったが、そんな時も決して腐ることはなかったという。

「もちろん、試合に出たい、そして試合に出たらシュートを決めてみせるという負けん気の強さや競争心はあったし、それは必要です。でも、その半面、『コートに出ている選手は、普段の練習から努力しているから選ばれている』という納得感があった。自分の出番を待ちながらも、純粋な気持ちでチームを応援できたし、自分も更に努力しようと思えました」

一方で、メンバー12人誰がコートに出ても強い姿を見せるためには、それぞれが強みを持つことも大事だと岩佐HCは言う。

「私は、どんな時も積極的にシュートを狙うことを意識してコートに立っていました。なかなか決められなくて苦しんだ時期もありましたが、それが自分の最大の強みだし、役割だと信じていました。そういう強い気持ちを、日本代表の選手たちにも持ってもらいたい。『ここだけは絶対に誰にも負けない』というものをそれぞれがコートで発揮してこそ、強いチームになるからです」

車いすバスケには、コート上の5人の持ち点が合計14点以内でなければならないという特有のルールがある。そのため、障がいの程度が異なる「ハイポインター」「ミドルポインター」「ローポインター」をどう組み合わせていくかが采配のカギを握る。だからこそ、チームとしての強みのバリエーションと、誰が出ても、どんな組み合わせでもチームとして変わらない力が必要となる。

"異なるタイプ"の2人が生み出す化学反応

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岩佐HCが「自分のないものを持っている指導者なので、非常に期待しているし、心強く思っている」と語るのが、山﨑ACの存在だ。

もともと"考えて何かを生み出す"ことが好きだという山﨑AC。そんな山﨑ACが目指すのは"日本一のAC"だ。

「HCがどういう方向に進もうと思っているのかをいち早くキャッチして、そのためにはどうすればいいのかを考え、選手やスタッフとコミュニケーションをとりながら、チームがその方向に動ける体制を整える。その道づくりは、ACの役割だと思うんですね。それが面白くて仕方ないんです。今はまだまだ力不足ですが、日本一のACになるのが昔からの目標なんです」

その山﨑ACがまず、選手たちに求めているのが「岩佐HCがやろうとしているバスケを理解する力」だという。「これなくしては何も始まらない」と語り、そのために今、養おうとしているのが"バスケット脳"だ。

「ただがむしゃらにやるだけでは、世界には勝てません。何が大事かといえば、自分自身や自チームの強みや特徴を把握し、そして相手チームの強みと弱みを把握すること。そのうえで、岩佐HCがどういうバスケをしようとしているのか理解することが重要です。そうすれば、試合の中で、一つ、二つ先を予測することができる。そういう力を養っていけるようなサポートをしたいと考えています」

奇しくも同じ「1月生まれのやぎ座でB型」と共通点も多い岩佐HCと山﨑ACだが、性格や考え方はまったく異なる。しかし、「だからこそいい」と2人は笑い合う。

「山﨑ACには、どんどん意見を言ってもらって、どんどん新しいものを取り入れてもらおうと思っています。時には意見がぶつかるかもしれませんが、だからこそ生まれるものがあるんです」と岩佐HC。山﨑ACも「関西人なので(笑)、臆することなく、どんどん意見を言わせていただこうかなと。でも、最後に判断するのは岩佐HCです。あくまでも私はサポート役。岩佐HCがやろうとしているバスケを体現するために、自分ができることはすべてやりたいと思っています」

2人に共通しているのは「向かうゴール(目標)さえ同じであれば、それまでの過程にはいろいろな方法があって正解は一つではない」ということ。2人による化学反応が、チーム強化を押し上げていく。

どこにも負けないトランジションを軸に世界に挑む

©Takao Ochi

では、日本の強みとは何なのか。この問いに迷わず岩佐HCが口にしたのが「スピード」だ。

「高さがない日本にとって、スピードで世界を上回ることは必須条件。攻守の切り替えの速さが重要です。特に"アーリー・オフェンス"で一つでも多くオフェンスの回数を増やすことで勝機を生み出したいと思っています」

相手の守備が整わないうちに、シュートへと持って行くことが第一のカギを握る"アーリー・オフェンス"。それに加えて、シュートチャンスに高確率に決める力を身につけることが重視されている。

一方、守備面では、"引き出し"を増やしつつある。
「これまでは高さのある相手に対して、ゴールに近付けさせないことを重視して小さく守ることに重きを置いてきました。それと、日本の機敏さを活かしたオールコートでのプレスディフェンス。しかし、それだけではなく、守備のラインを上げて、積極的にボールプレッシャーにいき、相手のターンオーバーを誘うような攻撃的ディフェンスにも力を入れています」

しつこく粘り強い守備から、ボールを奪った瞬間に素早くゴールに向かうスピード力においては、どこにも負けるつもりはない。

そして、もう一つある。
「2度のパラリンピック、そして昨年の世界選手権と出場していないのは、確かに大きい。でも、だからこそ選手たちは"勝ち"に飢えている。東京では、それをパワーに変えることができると思っています」と岩佐HCは語る。

8月29日に開幕する「三菱電機WORLD CHALLENGE CUP 2019」では、オーストラリアとの親善試合が組まれている。3カ月後のアジア・オセアニアチャンピオンシップス(AOZ)の前哨戦として注目の戦いだ。

勝利への飢えを、闘争心へ――1年後の東京では、3大会ぶりに強い女子日本代表の姿を見せる。

©Hisako Saito

 

取材・撮影:越智 貴雄  取材・撮影・文:斎藤 寿子

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