もう一つのW杯開催中!車いすラグビー日本代表vol.2『島川×中町×長谷川選手インタビュー』

2019/10/18 15:58

2018年世界選手権で世界ランキング1位のオーストラリアを決勝で破り、初優勝に輝いた車いすラグビー日本代表。ケビン・オアーヘッドコーチ(HC)が指揮官を務めて3年、今や日本は世界ランキング2位と世界トップクラスに君臨している。世界の強豪8カ国が集結した「ワールドチャレンジ」(10月16日~20日・東京体育館)では、その実力を遺憾なく発揮し優勝した姿を見せ、1年後の東京パラリンピックでの金メダルへと弾みをつけるつもりだ。今回は、ワールドチャレンジに臨む島川慎一、中町俊耶、長谷川勇基の3選手にインタビュー。「ケビンJAPAN」の素顔に迫った。

©Takao Ochi

中町「勝負の年として迎えた2019は順調に世界を経験」

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―― 東京2020パラリンピック1年前の「2019」への思いについて教えてください。

島川) 昨年の世界選手権で優勝し、2020年に向かう中ではとても大きな結果を得られました。ただ、喜びながらも「このままでは次は負けてしまうだろうな」という危機感はありました。というのも、決勝でオーストラリアに勝てたのは、どちらも力が拮抗する中で、あの時はたまたま日本が勝てたというラッキーな部分が大きかったと思うんです。毎回やって必ず勝てるまでの力はまだないなと。ですので、2019年のワールドチャレンジという大きな大会でさらにレベルアップした姿を見せて、2020年に向けてもう一つ二つ、ステップアップしていける1年にしたいという思いがあります。

中町) 僕は2017年から強化指定選手に選んでもらっているのですが、その時から目標は東京2020パラリンピックでした。でも17、18年は、主要な大会のメンバーには入ることができませんでした。今年はしっかりと世界を経験できるようにしていかないと、その先の2020年はないなという気持ちがあったので、2019年にかける思いというのは強かったです。そんな中、今年は5月のフォーネーションズカップ、9月のアジアオセアニアチャンピオンシップス、そして今月のワールドチャレンジという大きな国際大会でメンバーに入ることができ、ここまでは順調に経験を積むことができているなと思っています。

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長谷川) 僕は2018年1月から代表の強化合宿に呼ばれるようになって、そのうちに海外遠征のメンバーにも選ばれたりして、とんとん拍子できていました。なので、逆に代表として世界で戦うことがどういうことなのか、あまり深く考えることがありませんでした。代表ということを考えるようになった一つのきっかけは、昨年の世界選手権でした。

メンバー入りすることはできず、日本でチームメイトが優勝した姿をテレビで観たのですが、普通ならそこで悔しさがわいてくると思うんです。でも、優勝を素直に喜んでいる自分がいたんです。その時に「あぁ、自分にはメンバーに生き残りたいとか、世界で勝ちたいとか、そういう代表としての自覚が足りないんだな」ということに気づかされました。

それ以降、少しずつ「自分もメンバーに入りたい」という気持ちが強くなってきて、合宿でも頑張れるようになったと感じています。今年は海外遠征や大会にもすべてメンバー入りできているので、そういうところも評価してもらっているのかなと思っています。

島川) 俊耶も勇基も、彼らがラグビーを始めた当初から知っています。俊耶はもともと動きも良くて伸びるだろなと思っていましたが、ここまで本当に順調にきていると思いますね。ふつう、一度くらい大きな挫折をしたほうがなんて思うんですけど、俊耶の場合はそういうことがなくても、ちゃんと成長していける選手だろうなと。

勇基は最初は趣味の一環としてラグビーを楽しんでいて、代表も外から傍観している感じだったんです。でも、環境が整ったこともあって、2年前くらいから本格的にやるようになりました。そしたらすぐに強化指定に呼ばれたんです。それからの伸びはすごいですよね。最近ではチームの中でも少しずつ自分の意見を言うようになってきていて、成長を感じています。

長谷川「戦力の一人として勝敗を握っていると感じられたアジアチャンピオンシップス」

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―― 2020年に向けて強化を図っていく中で、チームあるいは自分自身にとってターニングポイントは何だったと思いますか?

長谷川) 僕自身にとっては、今年9月のアジアオセアニアチャンピオンシップスの決勝です。結果的にはオーストラリアに敗れて準優勝となったのですが、最後まで諦めない先輩たちの姿がとても強く心に残りました。最後、僕がコートに出る時に「しっかりやってこいよ!」って言ってくれたんです。劣勢の状態なのに、その声がぜんぜん諦めてい劣勢の状態なのに、その声がぜんぜん諦めていなくて、勝つことだけを考えているのがひしひしと伝わってきました。

「あぁ、こういう時にこそ、いかに心の隙を見せずに最後まで戦えるかが大事なんだな」と。自分自身もその大会で初めてスタメンで出たり、それまでにないくらい多くのプレータイムをもらうことができました。それまではほとんど試合に出ないこともあって、あまり勝敗に関わっているとは思っていなかったんです。でも、その大会ではたくさん試合に出させてもらって、初めて自分も戦力の一人なんだと自覚し、「しっかり頑張ろう」と思いました。

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中町) 2018年の世界選手権、僕は日本にいてテレビで観戦していたのですが、正直に言えば「本当に日本が世界一になれるのかな」と半信半疑でした。世界一になりたいとは思っていても、なかなか現実味がなかったんです。

でも、優勝した姿を見た時に「本気でやれば自分たち日本が世界の頂点に立てるんだ」ということを実感することができました。これまで日本のミドルポインターは世界に通用しないということが言われていたのですが、世界選手権では同じ持ち点2.0の羽賀理之さんが強豪相手にターンオーバーをとったりして活躍する姿を見て、「やるべきことをやれば世界で通用するんだ」ということを教えてもらいました。

島川) チームにとって大きかったのは、やはり世界選手権ですね。現地入りする直前、チームの合宿を終えた後、5日間くらいあったのですが、選手同士で話し合って、みんなで集まって練習することにしたんです。練習以外でも一緒にご飯を食べたり、オフの日も会う時間を設けたりして、とにかくチームで共有する時間を少しでも多くとったんですね。それがチームワークを高めることに繋がったんじゃないかなと。

世界選手権では予選でオーストラリアに13点差という大敗を喫したのですが、その翌日の準決勝アメリカ戦は気持ちを切り替えて勝ちました。パラリンピックで常にメダルを取り続けている強豪アメリカにあれだけ完璧に勝つことができたのは初めて。大会前から同じ時間を過ごしてきたことでチームが一つにまとまり、結果にも繋がったんじゃないかなと思います。

島川「単に勝つではなく、しっかりと強さを見せつけて勝ち切ったうえでの金メダル」

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―― チームにおける自分自身の役割、HCから求められているものとは何でしょうか?

中町) ケビンHCに最初に言われたのは「3.0のようなプレーを目指せ」ということでした。持ち点が2.0だからそのまま受け止めて限界をつくらずに、もっと高いところを目指しなさいと。なのでハイポインター陣に対しても「止めてやろう」「抜いてやろう」という強い気持ちでプレーすることを心掛けています。なかでも僕が強みとしているのはパスです。2.0の中では遠くにパスすることもできますし、正確性にも自信があるので、そうした強みを活かしたプレーで2.0の選手の中でトップの座を奪って、来年の東京パラリンピックで輝きたいと思っています。

長谷川) 僕はケビンHCに「ボールを扱える0.5プレーヤーになってほしい」と言われています。これまで最も障がいの重い0.5の選手は、ボールにほとんど触ることがなかったので、相手にすれば特にディフェンスでマークしなくても良かったんです。でも、キャッチできるようになることで、マークするべき選手が一つ増えるので相手にとっては嫌ですよね。そういう相手に脅威を与えるようなローポインターになりたいと思っています。

島川) やっぱりスピードとタックルという、ハイポインターならではの強みをいかしたプレーで、トライを決めることが求められていると思っています。僕は止まった状態からの一歩目は決して速くはないんです。だからこそ、スピードに乗りながら常に全体を見て、相手の動きを読むことを大事にしています。相手の一歩先をいってかわしたり止めたりする。その"読み"と"判断"という点においては、同じハイポインターの中でも負けないと思っています。

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―― 最後に、東京2020パラリンピックでの目標を教えてください。

中町) 僕はパラリンピックに出場するだけでなく、試合を決めるようなプレーをしてチームの勝利に貢献したいと思っています。同じ持ち点2.0でイギリスのジョー・デラグラブは、まさにそういう選手。体が大きくて、世界レベルのハイポインターからのタックルにもひるむことなく、どんどんパスをして自らもトライを決めるんです。リーダーシップもあって、コート上でチームを牽引していく。僕もそういうプレーヤーになって、東京では活躍したいと思っています。

長谷川) 僕自身はボーダーライン上にいるので、まずはしっかりとメンバーに残れるようにすることだと思っています。でも、これまでとは違って、「ここまできたら東京に出たい」という強い思いがあるので、とにかくやれるところまでやってやろうという気持ちがあります。僕は持ち点0.5のなかでも障がいが重い方なので、そういう選手でも世界で活躍することができるんだ、ということを見てもらいたいです。

島川) もちろんチームとしても、個人としても目標は金メダル。それも「獲りたい」ではなく「獲ること」です。昨年の世界選手権決勝のように「どちらが勝つかわからない」ではなく、しっかりと日本の強さを見せつけて勝ちきっての金メダル。僕にとっては5度目のパラリンピックとなるわけですが、ずっと目標としてきた金メダルを取った瞬間、どういう景色が見えるのか、自分が次に何を思うのかというのは、未知なだけにすごく楽しみですね。 

©Takao Ochi

取材・撮影:越智 貴雄  取材・文:斎藤 寿子 

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