14歳「新世代ヒロイン」登場!パラ競泳・山田美幸

2021/4/26 10:00

(この記事は、2020年11月24日、NHK 東京2020パラリンピックサイト内の「後藤・千葉・三上の奮闘日記」に掲載されたものです)

NHKパラリンピック放送リポーターの三上大進です。
約1年ぶりとなるパラ競泳の公式レース「第1回強化合宿兼記録会」が、11月7日~8日の2日間に渡り宮城県のセントラルスポーツ宮城G21プールで開催されました。

久しぶりの記録会----不安や緊張といったレースならではの雰囲気に混ざり、どこか嬉々とした"選手の体温"を感じます。

実際、レースはサプライズの連続でした。

去年のパラ競泳世界選手権男子100メートル平泳ぎ(SB14・知的障害クラス)で、世界記録で優勝した山口尚秀(やまぐち・なおひで)選手が、レース初日に同種目に出場。
圧巻の泳ぎを見せつけ、自身の持つ世界記録を更新しました。

運動機能障害の選手では、若手が大躍進!
男子100メートルバタフライで、現役高校生の南井瑛翔(みない・あきと)選手(S10)が、非公認ながらアジア記録を上回る記録を、
現役中学生の日向楓(ひなた・かえで)選手(S5)が、アジア記録を更新する結果を叩き出しました。

そんな若手選手の中で、今回私が特に注目したのが、
14歳の山田美幸(やまだ・みゆき)選手。
現在中学2年生で、パラ競泳のクラス分けで「S2」という、運動機能障害の中では障害の程度が2番目に重いクラスです。

*クラスの数字が小さいほど重い障害、大きいほど軽い障害になります。

両腕が無く、下肢にも障害があるため、電動車いすを使います。
(足を使ってカッコよく車いすを操作!マスクの着脱も足でスマートにおこなうの♩)

山田選手は2020年の2月にメルボルンで開催された大会でクラスの見直しがあり、これまでのS3から、より障害の重いS2のクラスへ変更になりました。

「S2」は、運動機能が著しく制限されている選手たちのクラス。
選手たちは身体に残された能力をフルに使って、その1本を泳ぎます。

このクラスでは下の写真のように、コーチなどの補助で足を壁に付けた状態でスタートする「フィート・スタート」が認められています。

△スタートに備える山田選手と、足を支える岡野コーチ

クラス変更後初となる今大会で、50・100メートル背泳ぎに出場した山田選手。

私が2019年に取材した世界選手権では、同じS2の同種目に出場した女子選手たちは「両腕」があり、このクラスではそれが推進力の鍵だと思っていました。

しかし山田選手は両腕がないので、泳ぎの"アクセル"となるのは両脚。
実際に泳ぎをみると、脚回りに強い水しぶきが躍ります。

身体のバランスを保ちながら、芯のあるキック!
最後のひと蹴りまで、水しぶきは消えません。

結果は、50メートルでは日本記録を塗り替え(1分11秒25)、
100メートルでは自己ベストを約13秒も更新(2分33秒65)!
いずれも2019年の世界選手権における銀メダル相当のタイムです。

まさに今大会のヒロインともいえる活躍を見せた山田選手。
レース後、インタビューに応じてくださいました。

Q. レースの感想を教えてください。

50メートルでは自己ベスト*を出せなかったことがとても残念です。
特に後半から、かなりペースダウンしてしまったので、次からは持久力を高めて同じペースで泳ぎたいと思います。
100メートルは前半を抑えたので、ラストスパートをかけられて良かったです。
自己ベストも出せてうれしく思っています。

*クラス変更以前に出した記録が自己ベスト。

Q.ずばり、日本記録、自己ベストが出せた理由は何だと思いますか?

山田選手「もともと自由形を泳いでいましたが、去年(2019年)から本格的に背泳ぎを練習し始めたことです。
練習量を増やして、頑張ってきました。
指導してくださるコーチの皆さまや、応援してくださる方々のおかげだと思います」

Q. 身体のバランスをどう保って泳いでいるのでしょうか?

山田選手「無意識に、泳ぐ方向を頭の向きで調整しているんだと思います...!
推進力は左脚の方が強いと思うんですけど、力としては右脚の方が強いと思います」

Q. 背泳ぎで注目してほしいところはどこですか?

山田選手「脚で泳いでいるところもそうですが、後半は"肩"も使っているんです。
みなさんも背泳ぎをするときは両腕と両肩を回して泳ぎますよね?
見えにくいとは思いますが、私も肩の部分を一生懸命回しているので、その動きにも注目してほしいです」

Q. 東京パラリンピックに向けて抱負を教えてください!

山田選手「東京パラリンピックに向けて、メダルを狙って、もっともっと早く泳げるように頑張っていきたいと思います。
世界のライバルと競争していきたいですし、他の選手の泳ぎを見て、取り入れられるところは取り入れていきたいと思っています(参加標準記録を突破したことなどについては)自分でも実感が湧きませんが、期待に応えられるように頑張るので、応援をお願いします!」

1つひとつの質問に、まっすぐ迷いのない答えをくださった山田選手。
(え、本当に14歳なのかしら...?)
と慌てる私を横目に、パラ水泳日本代表監督の上垣匠さんも「実力はもちろんですが、山田選手は本当に賢いんです。しっかりしているんですよ(ニコっ)」と太鼓判。

なんと大会終了後、一緒に記念写真を撮ってくださいました。

(右)マスク越しでも愛らしさ満点のスマイルをくれた山田選手(左)よろこび浮かれながらもディスタンスに余念のない私

これは余談ですが、実はこの写真を撮る際、山田選手を担当する野田コーチと私がスマホ操作が分からず、悪戦苦闘していました。
(見かねた)山田選手が両足を使い、一瞬で操作を完了させてくださったため、ことなきを得ました。

水・陸問わず、"超スピード"。
新世代のヒロインに、目が離せません。

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山田美幸(やまだ・みゆき)
2006年9月15日生まれの14歳。阿賀野市立京ヶ瀬中学校2年生。ウィルスピード新潟所属。生まれたときから両腕が無く、下肢にも障害があるため電動車いすを操作し移動する。保育園のときに水泳を始め、現在の専門種目は背泳ぎ。目標にしているのは、「誰にでも優しく人望にあふれる」ことから、同じパラ競泳の加藤作子選手。野田文江コーチ、岡野高志コーチの指導を受ける。

こちらは2017年11月に行われた第34回日本パラ水泳選手権大会・自由形のレースでの山田選手。両脚でバランスを取りながらのスタートです

(この記事は、2020年11月24日、NHK 東京2020パラリンピックサイト内の「後藤・千葉・三上の奮闘日記」に掲載されたものです。)

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