「今、"やりたいこと"を全部やっています!」 パラ陸上・前川楓

2021/2/15 12:01

髪の色は、ブルーにゴールドにピンクに・・・。いやいや、僕が知らないだけで、他の色もあるのかもしれない。

お会いすると、いつも髪の毛の色が違うのが、東京パラリンピック走り幅跳びで代表内定を決めている前川楓選手。世界選手権(17年)でメダルを獲得するなど、東京大会でメダルが有望視される前川選手は、パラアスリートきってのファッションリーダーだ。義足も、デザインや絵柄が施されているものをたくさん持っていて、とてもかっこいい。

そんな前川選手に、2020年の重苦しいコロナ禍をどのように過ごしたのかを尋ねてみると「増えたおうち時間で、これまでやりたかったことを全部やって、競技にも良い影響がありました」と、意外な答えでした。

やりたかったことは何なのか?そのルーツも含め、一問一答で話を聞いたので、ご覧ください!

Q:2020年、ご自身の義足をモチーフにしたLINEスタンプを作られたと聞きました。

そうなんです。LINEスタンプは4つ作りました。
単純に私は義足が大好きで、義足をつけとることも、見ることもすごく好きなんです。なので、義足をキャラクターとして描いたら面白いんじゃないかなーって思って、『大腿義足ちゃん』というキャラクターを作りました。

Q:その他にも行ったことはありますか?

義足や、自身の感情などをモチーフとした手作りのブローチや指輪やピアスをネットで販売したり、自分が描いたイラストをプリントしたバック、Tシャツ、トレーナー、パーカー、サンダルもネット販売したりしています。新たにタオルやトレーも作成中です。

Q:たくさんの物を作るのは大変では?

大変でした。そして、すごく時間がかかるんです。朝の9時から始めて、終わるのが翌日午前2時なんてことも。でも、とても、とても、楽しいんです(笑)。

Q:義足をモチーフにするほど好きになったきっかけは?

中学3年生の時(2012年)に交通事故で脚を切断して入院しました。最初の1か月はとにかく痛みがすごくて、夜も眠れないし、ご飯も食べられないぐらい痛くて。脚が無くなったと考える余裕が全くなくて「痛い!痛い!」でした。痛みが治まったのが1か月ちょっと過ぎた頃で、そこから脚がないことを実感しはじめました。

入院して初めて外出許可が下りた時は、右脚を切断していて、左脚も折れていました。なので、お母さんと一緒にショッピングモールに買い物に行った時は車いすだったんですけど、結構周りの人に見られて、それがすごいイヤでした。元々、ファッションがすごく好きで、派手な服を着ていたのですが、なんか"違う目で見られているな"とそこで思いました。かわいそうなものを見る目みたいな。助けてくれる時も、車いすで通れる道なのに、ものすごく広げてくれて「そんなにやってもらわなくてもいいんですけど」って。「いや、出来るよ私。そんなに私は何でも出来ない風に見えるんかなあ」って。

なんだか"自分で出来ることを全て奪われていくような気持ち"になりました。

Q:退院して中学に戻った時はどんな気持ちでしたか?

ずっとやっていたバスケが出来なくなったので、最初はものすごく落ち込みました。でも、落ち込んだ時期は1か月ぐらいでした。そこからは「もうやるしかない!」「左脚あるしな」って思って。

バスケが出来ない時は落ち込みましたが、「じゃあ片脚でやればいいんじゃない」と思って、みんなの中にケンケンで混ざって、ケンケンでドリブルしてシュートしていました。先生も最初は止めていましたが、やり続けてたら「もういい。好きにやって」ってなって。

学校でも全部みんなが代わりにやってくれるのがイヤだったので「脚ないけどやれることは出来るだけやらして下さい」と先生に言って、普通に学校行事の準備などにかかわりました。そこから段々、「あっ。自分これ出来る。これも出来る」って自信がついていきました。
周りの友達もマイナスなことを言う子が一人もいなかったので、環境に恵まれていたんだと思います。

Q:義足をカッコいいと思い始めたきっかけは?

脚を切ったばかりの時は、義足を今まで見たことがなく、イメージも出来なかったので、病室で"義足"と検索しました。そしたら義足モデルのGIMICOさんの写真がヒットしたんです。「なんてカッコいいんやろ!」とGIMICOさんに一目ぼれしました。

なので、脚を切ってわりとすぐに、義足をカッコいいと思うようになりました。

Q:カッコいいと思う理由は他にもありますか?

元々少年漫画が大好きで、小学校低学年からずっとジャンプを読んでいて、その中に出てくるメカとかをすごくカッコいいと思っていました。ほかにも、小学校の時から派手なファッションが大好きで、スチームパンク(SFのジャンル、ファッションとしても用いられる)をすごくカッコいいと思って、小学6年生の時にはスチームパンク集の本を買って見ていました。

スチームパンクのメカメカしたものが好きで、(義足は)大好きな漫画の『鋼の錬金術師』の主人公の機械鎧(オートメイル:機械によって駆動する筋電義肢の一種。主人公は右腕と左脚に装着する)みたいだなあと思っていました。
『東京喰種(トーキョーグール)』という漫画では、什造(じゅうぞう)という登場人物が途中で脚を切って義足になるんですが、私と同じ右足義足だったので、おそろいだと思って大興奮して、うれしくて、ジャンプフェスタでも彼のコスプレをしました。

だから義足に対する抵抗は本当になかったです。

Q:カッコいいと思う義足を初めて履いた時はどうでしたか?

もうめちゃくちゃうれしくて、すごく短いスカートとかを履いて出かけるようになりました。
義足を履くまでは、車いすや松葉づえで、脚の切断部分に包帯を巻いて生活をしていて、ちょっと気が引ける思いでした。だからずっと買い集めていた短いスカートがようやく履ける!短いスカートやパンツと義足を合わせるとめっちゃカッコいい!と思って、ようやくそれが出来てうれしかったです。

高校は私服だったので、そこから毎日、結構短めのスカートを履いて、学校に行くようになりました。

Q:義足を見せて歩く前川さんへの周りの反応はどうでしたか?

最初は親から「見せない方がいいんじゃないの?」と言われました。義足には、上から被せる肌の色をしたスポンジカバーというのがあるんですが、お母さんは「めっちゃ普通の足に見えてすごい」「これで義足のこと気づかれずに生活できるなー」と言ってました。

でも私が「いやー。私このスポンジいらんわー」と言うと、お母さんは「えー!?」っていう反応で。元々、派手な服装が好きだったんで、私が義足を見せてもどんな格好をしても、何にも言わなくなりました。お父さんも言わなくなりました。

友達も、最初は義足についての話はしませんでした。だけど、私が見せて歩いているし、義足の(脚の切断部を入れる)ソケット部分に目玉の模様が入っているのを見て「えっ。それ、めっちゃカッコいい!」「その目玉の所って、どうなってるの?」と言ってくれるようになって。「じゃあ見る?」って義足を脚からポンと外して友達に渡したら「わー。こうなってるんやー!」って(興味を持ってくれて)。

ソケットを新しくする時も、友達が「次のソケット、この柄いいんじゃない?」って服の写真とかを送ってきて、やり取りも段々普通になっていきました。

Q :義足に対して、全く抵抗がなかったのですか?

なかったですね。義足をつけて痛いなあというのはありましたが、見た目に関して何か思ったことは本当になかったです。

義足で電車に乗っている時に、小さな子どもから「あの人、脚がない。気持ち悪い」と言われたことがあるんですけど、私けっこうそういう時に、「気持ち悪くないよー。持ってみるー?」ってガンガン言っちゃうタイプなんです。すると子どもは「あっ、あっ」ってなるんですけど、義足を持たせてみたら「えー。けっこうカッコいい」と言ってくれます。


だから、思ったことを言われるのは私、そんなに気にならないんです。(見慣れていないと)そう思うかもしれないし「私はそうは思ってないよ」って言えるだけでいいかな。

元々、派手な格好をしてた時に人から見られることがすごく好きだったので、義足をつけるようになっても、派手なものを見せる感じで義足を見せるとイヤな気持ちはしないなーって思っています。

Q:おうち時間が増えて作品作りをしていることが競技に何か影響してますか?

めちゃくちゃあります。何かをやってるのがすっごい楽しくて、すっごい幸せなんです。

「すっごい楽しいー。幸せー」っていうワクワクの気持ちを持って練習に行くと、練習のスタート時の気持ちが全然違うんです。絵を描いたりするとストレス発散になるんです。家でジッとしている時と、外で走りたい時のバランスがとれてるなーって思います。

例えば、LINEスタンプで『心の住民』っていうハートのキャラクターを作ったんですけど、私が陸上で感じた気持ちとかを絵にしました。私、練習ノートというのをつけていて、練習の時に何かを感じたら絵におこす癖があるんです。

他にも、選手が私の作ったものを買ってくれて話すきっかけになったり、誰かとつながるものになったり、周りの人との会話は増えたと思います。

Q:他にもやりたいと思っていることがあれば教えてください。

最近、ひらめいたことがあります。
今まで子どもたちと触れ合う機会が全然なかったんですが、最近、一緒に練習している山本篤選手のお子さんと話したり、講演会とかで小学生の子と触れ合ったりする機会が増えてきました。

子どもたちから「義足初めて見たー」という声を聞いているうちに、小さい頃から義足と触れ合える場があったらもっといいんじゃないかなーって思うようになりました。

子どもが親しみやすく手に取れるものと言えば、おもちゃか絵本かなあと考えたんですけど、義足のおもちゃをお母さんが買うかなあと。面白い内容の絵本だったら、手にとってもらえるかもしれないと思って、書き始めたんです。

Q:その絵本へ込める思いは?

義足が(生活に)溶け込んで欲しいなあって思っています。

例えばメガネでいうと、シンプルなメガネをする人もいるし、めっちゃ派手なメガネをカッコいいって思う人もいるじゃないですか。それと一緒で、義足もはだ色をつけてシンプルに見せたい人もいるし、私みたく派手にして見せたい人もいるみたいな。それがみんなにとって当たり前になって欲しいなあと思うんです。

私が何かすることで、ちょっとでもそれが実現出来るといいかなあって思っています。

Q:去年参加された、義足のファッションショーでも、いい感じに"派手"でしたね!

2020年の8月25日に出演させて頂いた「切断ヴィーナスショー」は、ファッションも義足も大好きなので、もう"幸せ"以外の言葉が見つからないです。本当にうれしくて!
撮影してもらった写真もプリントアウトして自分の家の壁に飾っています。写真を見た時もうれしいし、ショーに出演している時も楽しいし、ずっと幸せです。生きててよかったって思いました。

どんな状況でも自分にとって面白いことや楽しいことをワクワクしながら探し続ける前川選手。クルクルと変わる表情を見ていると、小さい頃から自分の"好き"を大事にしてきた結果が、今のポジティブで前向きな発言や表現活動や競技、全てつながってきているんだなあと感じました。

(この記事は、2021年2月2日、NHK 東京2020パラリンピックサイト内の「越智貴雄/感じるパラリンピックGallery」に掲載されたものです)

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