見えてきた「世界と戦う自分」 - 橋岡優輝(陸上 走り幅跳び)

2020/7/22 13:20

橋岡優輝の2019年は、アジア選手権、ユニバーシアードで金メダルを獲得。カタールで開催された世界陸上では8位となり、走り幅跳びに出場する日本人選手として初めてとなる同大会での入賞を果たし、国際舞台でその名を轟かせ、東京2020の注目選手の一人となった。
父は棒高跳び、母は100mハードルの元日本記録保持者。偉大な実績を持つ両親のもとで育てられた日本走り幅跳び界のエースに、1年後のイメージや世界との戦い方ついて話を聞いた。

2019 陸上 日本選手権 走り幅跳び 男子 決勝 写真:YUTAKA アフロスポーツ

大会延期でも発揮された、気持ちの切り替え

―― 東京2020の開催まであと1年となりました。大会が延期されたことに対して、当時の橋岡選手はどのように感じていましたか?

2019年の世界陸上で8位に入ることができ、世界と戦うという気持ちがよりいっそう高まっていた中での決定でした。新型コロナウイルスが社会に与える影響を考えると仕方がないと思いましたし、同時に「この1年間をどのように活かすべきか?」を考えましたね。世界陸上の結果や自分の力量を改めて見直し、東京2020でより良い結果を残せるように準備をしていこうと、すごく前向きにとらえることができました。

―― 物事を前向きにとらえながら気持ちを切り替えるという面は、走り幅跳びの選手に欠かせない能力の一つですね。

そのとおりです。走り幅跳びにおいて気持ちの切り替えはすごく重要で、特に跳躍に失敗した後は、修正をしなければならない部分もありますし、心理的に引きずりすぎてはいけません。また、周りの選手たちの記録が自分自身にダイレクトに影響してくる競技なので、仮に自分の記録が超えられたとしても、その度に落ち込むのではなく、「すぐに取り返してやる」と心理面を切り替えられるかどうかはとても大切になってきますね。そういった特性も、東京2020の延期をスムーズに受け入れられた要因の一つかもしれません。

写真:浦 正弘(URA MASAHIRO)

―― 橋岡選手の場合、自分自身が納得できるジャンプができた時というのは、どのような精神状態で競技に臨んでいますか?

自分がイメージする跳躍ができている時というのは、すごく精神的な状態が良く、周りの選手の記録などが全く気にならないんですよね。例えば、金メダルを獲得した2019年のユニバーシアードでは、決勝の跳躍4本目から5本目に掛けては、イメージ以上の動きを体現できる一種のゾーンに入ったような状態でした。
跳躍前は「今なら新記録を狙える」という確信に近い思いも抱いていたくらいです。結果的にはファールの判定で記録に残りませんでしたが、アスリートとして成長を続ける段階で、ああいった感覚を味わうことができ、「自分がやってきたことは間違っていない。今はステップアップの最中なんだ」と思えたことは、僕にとって大きなプラス要素でしたね。

2019 夏季ユニバーシアード 走り幅跳び 男子 決勝 写真:アフロスポーツ

日本人が世界に勝つ可能性と、その方法

―― 昨年の世界陸上では日本人選手として初となる入賞を果たしましたが、橋岡選手が「世界のアスリートと渡り合える」と自信を持てたのは、いつからだったんですか?

本当にここ最近のことなんです。具体的には、8m22を記録して優勝できた2019年4月のカタールで行われたアジア選手権の頃からようやく、「世界と戦う自分の姿」というものが見えてきましたね。

2019 陸上 アジア選手権 走り幅跳び 男子 表彰式 写真:ロイター アフロ

―― 特に陸上競技は日本人と諸外国のアスリートの体格や身体能力の違いが長年にわたりクローズアップされてきました。フィジカル面では現実的に埋めがたい部分もある中で、世界に向かってチャレンジし続けていくというのは、どのような感覚ですか?

もちろん、選手によっては体格面やフィジカル面で大きなアドバンテージがあると感じることもありますが、個人的には「日本人も外国人もそんなに大きな差はないじゃないか?」と考えています。
特に僕が重視しているのが身体の使い方。例えば、欧米の選手、アフリカ人選手、そしてアジア人選手など、それぞれに適した身体の使い方があり、日本人には日本人にマッチしたやり方があると思うんです。それをどれだけ見つけ出し、自分の身体に覚えさせられるかという部分が、諸外国の選手たちに勝っていく一つの方法だと思っています。

写真:浦 正弘(URA MASAHIRO)

―― 自分にとってベストなスタイルを見つけるということですね。

時代をさかのぼれば、1928年のアムステルダムオリンピックでは、三段跳びで織田幹雄さんが金メダルを獲得されています。日本人アスリートでも跳躍の種目で世界の頂点に立ったという事実があるわけですし、まだまだ僕らにも可能性は残されていると思うんです。それに、自分の意志で陸上という世界に足を踏み入れた以上、「自分たちはフィジカル的に勝てないんだ」と考えるのではなく、そういった部分をいかにカバーし、どういう方法で世界と戦い、ライバルたちの上に立つかということを考えたいですね。

2019 世界陸上 ドーハ大会 走り幅跳び 男子 決勝の跳躍 写真:YUTAKA アフロスポーツ

走り幅跳びが秘めた、大きな可能性を日本に広めたい

―― 橋岡選手にとって、東京2020はどのような位置付けの大会なんですか?

陸上競技においては、100mやリレーなどの短距離やマラソンに大きな注目が集まると思うんです。その中で、走り幅跳びも世界を相手に戦っていて、大きな可能性を秘めた種目であるということを日本中に広めていきたい。
そのためにも、「東京2020でどのような結果が残せるか」という部分が大きなポイントになってくると思っています。僕自身、一競技者として記録を残したいという思いも強いですし、同時に、走り幅跳びを広めたい、普及させていきたいという思いを実現させるためにも、東京2020における結果の重要性を認識しているつもりです。

―― 残り1年間の過ごし方が、その結果にも大きな影響を与えそうですね。

ここ最近、SNSなどを通じて中高生の選手たちから「どのようにモチベーションを保っていますか?」という質問を投げ掛けられることが多いんです。僕にとってのモチベーションというのは、やはり大きな試合で活躍することですが、今は、その気持ちを維持し続けるのが難しいですよね。
その中で一度、初心に返り「今まで走り幅跳びをどのように楽しんできたか?」「選手としてより成長する上で欠けている部分は?」を自問自答したんです。結果として、陸上を楽しむ気持ちが記録を目指す意欲につながっていると改めて気づくことができたし、そして、今は基礎技術を徹底的に強化するのに最適な期間だと思えるようになりました。
だから現在は初心に返ることでモチベーションを保ちつつ、よりレベルアップできるような1年にしていきたいと思っています。

写真:浦 正弘(URA MASAHIRO)

―― 東京2020、そしてその先の未来をどのようにイメージしていますか?

東京2020は、自分のキャリアにおいてとても重要な通過点だと位置づけています。年齢的に見ても僕のキャリアはまだ先が長いので、将来的な競技人生も見据えながら、「自分をどれだけ成長させることができるか?」という部分に集中したいと思っています。大会後に自分自身の成長をどのように感じるのか、僕自身も楽しみですし、期待しています。

(インタビュー=岩本義弘)

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