東京オリンピック・パラリンピック延期後の日程を更新しました。聖火リレーの日程は公式情報が発表され次第更新します。

最高の輝きを見せ、皆さんの不安を吹き飛ばしたい - 中西麻耶(パラ陸上 走り幅跳び)

2020/7/22 13:30

東京2020が延期となったことに対してさまざまな反応がある中、パラリンピック陸上選手の中西麻耶(阪急交通社所属)は早い段階で気持ちの整理をつけたという。そして、「努力することが大好き」というその言葉どおり、この状況下でも昨日の自分を超えるために、日々練習に打ち込んでいる。
強い信念と挑戦することを忘れない彼女は、走り幅跳び(T64クラス)における世界新記録更新に期待が懸かる注目選手の一人だ。粘り強く、そしてしぶとく努力を重ねてきた中西は、どのようなキャリアを歩んできたのだろうか。ここまでの道のりに迫った。

2019 世界パラ陸上競技選手権大会にて東京2020代表に内定 写真:ロイター/アフロ

パラリンピックに関わる方々のためにも、中止にならなくて本当によかった

―― 東京2020が1年間延期になったことについて、中西選手はどのように感じられましたか?

もともと延期になる可能性も予測していましたので、荒川(大輔)コーチとは「延期になった場合はどのように対応、調整していくべきか?」と前もって話し合いができていました。だから精神的なダメージは大きくありませんでしたね。それよりも、東京2020の開催が決まってからパラリンピックの存在が世間にどんどん周知され、2013年から盛り上がっていく様子をずっと見てきましたので、このムーブメントを起こすために関わってきた方々のためにも、中止にならなくて本当によかったというのが一番素直な感想です。
どうしても選手たちがフォーカスされがちですが、東京2020の舞台を作るためには多くの人々が協力し合っていますし、皆さんの努力が今後も報われるようにいい方向へと軌道修正していければいいなと思っています。

―― 東京2020への出場が内定しているアスリートの一人として、開催が来夏になったことについてはどのように受け止めていますか?

東京2020に向けて、私はたくさんの方々に分かりやすく伝わるよう、「東京2020では6メートルを跳びます」とか、「世界新記録を出します」と意気込みを表現してきました。もっとも、一選手として私の根本にあるのは、練習を積み重ねていく過程で、今までできなかったことができるようにしていくことなんです。
当初は世界新記録を2020年に出すつもりでいましたが、大会の開催が2021年になったのであれば、私にとってはそのタイミングで世界新記録を出せるような準備を毎日コツコツしていくだけですし、「開催が1年延びたから......」という部分はそこまで気にすることはありませんでしたね。
ただ、練習場所がこれまでの競技場から公園になり、その環境の違いには戸惑いもあります。義足はスパイクのピンが直接付いているので、アスファルトの上を走ることができないんです。だからピンを保護するためのカバーの制作が必要で、そういった部分の準備が練習スケジュールに間に合うのかがとても気になっていますね。

2019 世界パラ陸上競技選手権大会 女子 走り幅跳び T64 決勝 写真:ロイター/アフロ

表彰台には、勝利への執念を燃やし続けた者が立つ

―― 昨年、ドバイで開催された世界パラ陸上競技選手権大会では最後の跳躍で優勝を決めました。中西選手特有のあの勝負強さや集中力の高さは、昔から持ち得ているものなんでしょうか?

自分自身がメダルを獲得できるようになってからだと思います。表彰台に上がれるようになるまでのおよそ10年間は、本当にたくさんの葛藤がありました。当時はアルバイトを三つ、四つ掛け持ちしていて、大会前でも時間が取れず、トレーニングはアスファルトの上を5分程度走って終了なんてこともよくありました。
「周りのみんなは競技場で練習して、普段からコーチが寄り添ってくれているのに、私は孤独で短時間しかトレーニングできない......」と考えることも少なくありませんでしたね。でも、2017年にロンドンで開催された世界パラ陸上競技選手権大会で銅メダルを手にしてからは、表彰台の上を"当たり前の場所"だととらえることができるようになりました。同時に、表彰台とは選ばれし者が立つ場所ではなく、最後まで自分の努力に自信と誇りを持ち、勝利への執念を燃やし続けた者が立つところなんだなと実感しましたね。

2019 世界パラ陸上競技選手権大会 女子 走り幅跳び T64 決勝 写真:ロイター/アフロ

―― 中西選手は跳躍に入る前、精神を統一し、集中力を高めている時に何かをつぶやいていますが、あの時はどのようなことを口にしているんですか?

たぶん、「絶対に跳んでやるからな」とか、「見ておけよ」って小声で言っているんだと思います(笑)。

―― 心の中の熱い気持ちがあふれ出ているんですね。

気持ちの面で言うと、私にとってのスーパーヒーローであり、尊敬してやまないオートバイロードレースレーサー、加藤大治郎選手の存在がとても大きいんです。加藤選手はあと1勝でMotoGPの世界チャンピオンになれたのですが、2003年に鈴鹿サーキットでのレース中の事故で命を落としてしまいました。私としては、彼の夢を勝手に背負って、一緒に表彰台に立ちたいという思いが強いので、跳躍の前には必ず「大ちゃん、行くよ!」と言っていますね。

2019 織田幹雄記念国際陸上競技大会 女子 走り幅跳び T64 決勝 写真:YUTAKA/アフロスポーツ

したたかに努力を積み重ね、東京2020で最高の輝きを

―― 走り幅跳びは、跳躍に失敗すると記録が残らず、もちろん表彰台にも立てません。そういった難しい面がある中でも、失敗を恐れることなく、積極的に踏み切りを合わせにいく中西選手のスタイルはとても印象的です。

歴代のコーチには、踏み切り板に向かって丁寧に足を合わせていけば、大記録は出ないかもしれないけれど、そこそこの成績は残せるだろうと言われてきました。でも私は、助走から跳躍まで、無意識のレベルで表現できるパフォーマンスこそが"ザ・跳躍"だとイメージしてやり続けてきたんです。長年持ち続けてきた「そこだけは変えてたまるか」という思いが、最近になってようやく花開いてきた感覚ですね。

―― その思いを持ち続け、実際のパフォーマンスに生かすのは決して簡単なことではありません。

自分の信念を開花させるには、やっぱりしたたかに努力を積み重ねることが大事だなと思いました。陸上を始めてすぐに日本記録を出しましたが、私にはまだまだ努力しなければいけないことがたくさんあるんです。陸上をやる上での基本的な能力が足りていないという自覚があるので、基礎練習や泥臭い練習に取り組みながら、もっともっと努力したいんです。

2018年 アジアパラ競技大会 女子 走り幅跳び T42-44/61-64 決勝 写真:YUTAKA/アフロスポーツ

―― 努力し続けていくための秘訣を聞かせてください。

一つは、どんなことでもリミットを設けないことですね。「何歳までにこれをしなければ」とか、「パラリンピックまでにこれができなければ」という思いは持たず、日々努力を続けます。それに、自分の中でこれ以上できないというレベルまで努力を重ね、それでも夢や目標が叶わなかったらそれは仕方がないと納得できます。でも、努力も挑戦もせずに最初からあきらめているようではダメ。常に挑戦することが大事だし、やって失敗したらもう一度チャレンジすればいい。この思いは常に持っていますね。

―― この先の1年間も、きっと数えきれないほどの努力が積み重ねられていくんでしょうね。東京2020に向けて、中西選手の思いを聞かせてください。

このような状況の中、東京2020は本当に開催されるのか、社会情勢はこれからどうなっていくのかと不安を感じている方々も少なくないと思います。でも、来年の夏に東京2020が開催された際には、私が大きな結果を出して、皆さんが抱えていらっしゃる不安をどこかへ吹き飛ばしてみせます。東京2020で最高の輝きをお見せできるようにこれから先も努力を続けていきますので、ぜひ皆さんの期待と応援をよろしくお願いします。

提供:株式会社ジェブエンターテイメント

(インタビュー=岩本義弘)

競技紹介

${list[returnRandomCount].credit}

${list[returnRandomCount].eventName}

${returnCompetition(list[returnRandomCount].eventId)}

${list[returnRandomCount].text}

競技一覧

おすすめ情報