車いすバスケ“うれし悔しい”銀メダル
土台の上にあった覚醒、3年後は頂点へ

長年にわたって日本の車いすバスケを支え続けた藤本(写真右)は試合後、ガッチリと京谷HCと握手を交わした 長年にわたって日本の車いすバスケを支え続けた藤本(写真右)は試合後、ガッチリと京谷HCと握手を交わした【写真は共同】

 試合終了のブザーが鳴り響くと、多くの選手が目に涙を浮かべた。 「勝つと思ってやっていて、銀メダルを取ったことより最後に4点差で負けたことのほうが悔しかった」  37歳のベテランでエースの藤本怜央は、試合直後の率直な心境を語った。それでも、胸を張りながらこう付け加えた。 「歴史を変えたことは事実。価値のある(パラリンピックという)大会で、充実して過ごせた。試合が終わって、振り返ったときに喜びに変わったと思う」

経験の差が出た、ラスト4分の攻防

 本当にあと一歩だった。車いすバスケットボール男子日本は5日、東京パラリンピック決勝で、2016年リオデジャネイロ五輪の王者である米国と対戦。60-64と僅差で敗れ、銀メダルを獲得した。  試合開始直後から、藤本のシュートが大当たりだった。「スリーポイントから(試合に)入った実感がない」と、“体に染み込んだ”スリーポイントで日本が先制すると、いきなり8-0のランで米国を焦らせた。藤本はこのクオーター(Q)だけで9得点と、エースにふさわしい活躍。それでも米国は、最後の8秒で6得点の猛チャージを見せ、18-18の同点で第1Qを終えた。  流れを取り戻した米国は、第2Qで日本の攻撃を9得点に抑える。しかし、日本も前からのプレスを混ぜ、機動力のあるメンバーで粘りのディフェンスで大量リードは許さず、5点ビハインドで後半戦に突入した。  第3Qは藤澤潔が魅せる。守備に重きを置いたチームでの役割もあり、今大会はここまでフィールドゴールでの得点は1本に留まっていたが、このQだけで2本のシュートを決め、オフェンスでも貢献。得点源である鳥海連志や香西宏昭らが厳しいディフェンスを受ける中、ローポインターの守備職人がチームに活気を与えた。

鳥海(写真右)の連続得点などで点差を広げたが、最後は米国の力に屈する形となった 鳥海(写真右)の連続得点などで点差を広げたが、最後は米国の力に屈する形となった【写真は共同】

 そして、1点リードで迎えた勝負の第4Q。一時リードを5点に広げるも、最後は米国に4連続でシュートを決められ、前回王者が持つ勝負どころでの集中力を発揮させてしまった。鳥海は第4Qをこう振り返る。 「4Qに入ってくると1本のシュート、1本のミスですぐに流れが変わってしまうというのは分かっていました。それが良くも悪くも出ましたね」  残り5分49秒、日本は鳥海がコートに倒れこみながらレイアップを決め、リードを5点に広げた。しかし、そこから米国に流れが行ってしまった。鳥海の言うミスとはターンオーバーや、良くないシュートセレクションの事だろう。 「トランジションはできていたが、シュートが決まらなかったこと。対して米国はしっかりとシューターがシュートを打って決めていた。それが何より苦しい状況に持っていかれたのかなと思います」  日本は、最後の約5分間でターンオーバーを4つ犯し、シュートのセレクションも完璧だったとは言い難い。これは焦りから来るものなのか、経験の差が出たのか――。対する米国は、着実に得点を積み重ねた。今まで日本ができていた「やるべきことをやる」という点において、試合のクランチタイム(終盤の勝負を分ける時間)で米国の方が一歩上をいった。日本もプレッシャーをかけたディフェンスから、素早い切り替えはできていたが、最後の詰めや精度に関して、米国の方が自分たちの力を発揮した形だ。

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