エース張本が卓球男子団体の鍵を握る
重圧を乗り越え、勝利に導けるか

シングルスの敗戦から切り替えたが…

卓球男子団体の運命はエース張本智和に懸かっている。相手に向かう気持ちでプレーしたい 卓球男子団体の運命はエース張本智和に懸かっている。相手に向かう気持ちでプレーしたい【写真は共同】

 苦しむエースよ、重圧を乗り越えろ! 張本智和(木下グループ)の完全復調が、鍵だ。  東京五輪の卓球競技、団体戦男子が1日にスタートした。日本は2日、初戦のラウンド16で豪州を3-0で下して翌3日の準々決勝に進んだ。団体戦は、ダブルス1試合、シングルス4試合の計5試合で3試合先取。日本は水谷隼(木下グループ)、丹羽孝希(スヴェンソン)が組む左・左の珍しいペアがダブルスを制すると、続けて張本、水谷でシングルスを制して3-0。1ゲームも落とさない快勝で団体戦のスタートを切った。

 ダブルスは、実力差があったためにサーブ、レシーブで得点を挙げることができたが、やはりラリーになると同じ左利きの2人がフォアで構えて位置が重なり、2度、3度とぶつかった。水谷は「正直、僕らもどうやって勝つのか分からないし、参考になるペアもいない」と話し、丹羽も「ラリーになるとやっぱり難しいので、なるべくラリーをせずに積極的にいきたい」とサーブ回りからの早期決着に活路を見いだしたい考えを明かした。  元々、3人の代表選手が決まった時点で、左利き同士のダブルスになることは、懸念点となっていた。今後、ダブルスで勝利を挙げるのが厳しくなっていくことが予想される中、重要になるのは、シングルスで2試合を戦う張本だ。  世界ランク4位の張本は、シングルスで金メダル候補にも名前が挙がっていたが、4回戦で敗退。メダルマッチに進めなかった。1日休んで、他競技のニュースなどを見ながら団体戦に向けて気持ちを切り替えたというが、この日も動きがやや硬く、ミスが目立った。世界ランク250位のデーブ・パウエルとの対戦となった第1シングルスで、第2ゲームは序盤にリードを許して8-8まで競る内容。第3ゲームも6-7までリードを許す展開だった。  張本は「3ゲームとも1-4、1-5と出遅れて、やっぱり、まだ硬さは正直に言ってありますし(相手の)ランキングが下がっても、こうやって思い切って来られるとそういうことになってしまうので、出だしはどの試合も大事。そこは、反省しないといけないと思います」とまだ本調子になりきっていない苦しさを漂わせた。  試合直後は、倉嶋洋介監督の話を聞き、大きくうなずきながら改善のイメージや自信を持つべき点の確認をしているようだった。自信を取り戻し、思い切って積極的なプレーをしなければいけないのは、本人も承知済み。しかし、わずかなミスや感触のズレが不安を呼び起こす。  倉嶋監督は「彼もシングルスで負けた悔しさがあると思うので、団体戦にぶつけてほしい。彼は若いですから、次の五輪につながる五輪にもしたいと思う。あと1週間で終わっちゃうんだぞ!っていうようなことを言葉がけをしている」と重圧との戦いに理解を示しつつ、吹っ切れたプレーが出てくることに期待をかけた。  結果は3-0(11-4、11-9、11-7)でストレート勝ち。別に問題はない。不安を生み出して動きを硬くするのは、自分自身だ。

相手に向かう気持ちでプレーできるか

ベンチでは、倉嶋監督(左から2人目)、先輩2人が張本を見守る。エースとして期待に応えられるか ベンチでは、倉嶋監督(左から2人目)、先輩2人が張本を見守る。エースとして期待に応えられるか【写真は共同】

 個人戦から切り替えて、どのような心境で団体戦に臨んだかと聞かれた張本は「緊張感はありましたけど、先輩方2人がついているので、最悪、自分が負けても(大丈夫)というくらいの気持ちで。負けてはいけないですけど、ベンチに監督と選手2人が座ってくれているだけでも、気持ち的に楽になりました」と応えた。  単にチームのサポートへ感謝を示しているようにも聞こえるが、話している表情から、不安を抱え、それを払しょくしながら前進しようとしている気持ちが透けて見えた。いつものように何度も大声で叫べないからなのか。あるいは、まだ格下相手の初戦で冷静に試合を運んだだけなのか。理由は分からないが、覇気の薄さが気にかかる。  約1年前の2020年7月にインタビューをした際、水谷は「(団体戦は)勝つなら張本がシングルスで2つ取るのが前提。今回は僕がメインではなく、張本がメインで2勝できるかどうか。うまくアシストしたい」と若きエースへの期待を語っていた。それは張本が重責を担うことを明言したものであるが、アイツならやれるという信頼の言葉でもある。

 もちろん、団体戦を勝ち切るには、先輩2人のアシストも必要だが、こちらは準備ができているようだ。この大会を競技人生の集大成と位置付けている水谷は「1試合1試合が引退試合だと思って臨んでいる」と強い覚悟を示した。丹羽も「元々、シングルスより団体戦に懸ける思いが強い。シングルスで負けても落ち込まず、いい準備ができて試合に臨めた」と頼もしい。2人は苦戦必至のダブルスでも活路を探しつつ、シングルスでも張本1人にかかるプレッシャーの分散を図る。この日は、水谷が第1ダブルスを勝った後、第2シングルスでも快勝。チームをけん引した。  準々決勝で対戦するスウェーデンは、18年世界選手権・団体戦で17年ぶりに銅メダルを獲得している。エースは、19年世界選手権に男子シングルスで銀メダリストとなったマティアス・ファルク。水谷は「明日からは挑戦者の気持ちでやらないと」と気を引き締めた。  鍵となる張本が、相手に向かっていく気持ちでプレーできるかどうかが最も気にかかる。16年頃の張本は、練習よりも試合で強いという証言が聞こえてくる選手だった。相手が強ければ強いほど、難しいプレーにも挑戦することで対抗し、その結果として自身のプレーの引き出しを増やしていった。試合中も「これなら、どうだ!」と言わんばかりのプレーで相手にプレッシャーを与えていた。  当時とは異なり、エースの立場になったからこその難しさはあるだろう。しかし、重圧をはねのければ、より一層強くなった張本の姿がそこにあるはずだ。張本がいるから日本は勝つ。そんなイメージを与えてくれるプレーで団体戦を引っ張ってくれることを期待したい。

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