互いの思惑が垣間見えたソフト日米第1R
決勝は将来が懸かった一戦に

日本は上野、後藤の2本柱を最後まで温存

27日の決勝と同カードとなった日本とアメリカの試合。日本はサヨナラ負けしたが、収穫の多い一戦だった 27日の決勝と同カードとなった日本とアメリカの試合。日本はサヨナラ負けしたが、収穫の多い一戦だった【写真は共同】

 勝っても負けても、あす27日に同じ相手と決勝の舞台で対峙(たいじ)する。当然勝利で勢いをつけたいが、本番に向けて手のうちを見せるわけにもいかない。お互いに複雑な思惑を抱えた中で、女子ソフトボールのオープニングラウンド最終戦が幕を開けた。  ここまで全勝で進んできた日本は、先発に藤田倭(ビックカメラ高崎)をマウンドに送った。同じく全勝をキープ中のアメリカは、今大会初登板となるアリソン・カルダが先発。日本は初回、硬さの見られたカルダを攻め立て、パスボールで幸先よく1点を先制。早々に援護をもらった藤田は、テンポよく内外角に力のこもった直球を散りばめながら、打ち気にはやった打者に対しては落ちる変化球を織り交ぜ、アメリカ打線を翻弄(ほんろう)。2つの併殺打をもぎ取るなど、バックも「前哨戦」だと全く思わせない好守で盛り立て、6回途中までノーヒットに抑える快投が続く。  両者の思惑が垣間見えたのは終盤だった。アメリカは6回から、キャサリン・オスターマンを投入。続く7回にはモニカ・アボットをマウンドへ送り、ここまで全試合を2人で勝ち抜いてきたダブルエースを送り込んできた。アボットは日本のトヨタ自動車でプレーしており、2018年の世界選手権では、2度の直接対決を経て優勝している。日本には藤田やエースの上野由岐子(ビックカメラ高崎)ら、その時のメンバーが数多く残っており、データについては十分すぎるほど残っているだろう。それでも、今大会では各打者がボールに対して実際にはどんな反応をしてくるのか、その感覚をアメリカは大切にした。オスターマンは2者連続の三振で、アボットも打者3人をわずか9球で料理し、この日の役割を完遂。決戦に向けての準備は整ったと言えるだろう。  一方の日本は上野に加えて、今大会4試合にリリーフしていまだ無失点投球を続けている、切り札の後藤希友(トヨタ自動車)も最後まで登板させなかった。明日の本番まで両者の情報を見せないのと同時に、体力の温存にも成功。この試合は終盤に藤田が攻略され、7回にケルシー・スチュアートにサヨナラ本塁打を浴びて1対2で落としたものの、宇津木麗華監督は「もうちょっと打てるんじゃないかとは思いましたが、悪い負けじゃない」と収穫を得た様子だった。  最後まで投げ抜いた藤田も「この経験を大事に、次につなげていきたい」と前向きだ。投打の二刀流にこだわる藤田はここまでチームトップの3本塁打6打点をマークしていたが、この日までは2イニングの登板にとどまっており、本意ではなかった部分もあるだろう。宿敵・アメリカを相手に好投を見せた勢いを、さらなる打棒につなげてくれることを期待したい。

ベテラン捕手・峰の貢献も光る

アメリカのバッター1人1人の反応を確かめながらリードした峰(左)の存在が光った アメリカのバッター1人1人の反応を確かめながらリードした峰(左)の存在が光った【Getty Images】

 この試合のスタメン捕手は、ここまで全試合に先発出場してきた我妻悠香(ビックカメラ高崎)ではなく、峰幸代(トヨタ自動車)が選ばれた。明日に生かすために相手打者の情報を収集しながら、勝利につながる配球が求められる。この難しい役割を、宇津木監督は「経験のある捕手だし、藤田投手との相性もいい」と33歳のベテランに託した。 「アメリカの打者は何年分ものデータがありますし、どこが打てるポイントなのかを意識しながら、明日につながる配球を心掛けました」  峰は細心の注意を払いながらのリードを心掛けた。上野、後藤と持ち球は違えど、過去に収集した傾向は本当に正しいのか、1つ1つバッターの反応を確認。その上で藤田の強みである右打者のアウトコースに落ちる球を生かし、好投を演出。「明日につながるデータが取れたので、この後バッテリーに共有します」と胸を張った。  13年前の北京五輪では当時最年少の20歳で上野とバッテリーを組み、初優勝の歓喜を味わった後、2014年には一度現役を引退。指導者のライセンスを獲得し、後進の指導にあたることを考えていたが、「もう一度五輪に出場したい」と、16年に復帰を決意した。ここまではチームのまとめ役として、ベンチで後輩たちへの声掛けを率先して行い、ムードを盛り上げることに奮闘。13年ぶりに五輪でかぶったマスクから見える景色は、やはり特別だった。 「今回は合宿からサブのキャッチャーとして出る準備はしてきたんですが、すごくうれしかったですし、13年間頑張ってきて本当に良かったなと思いました。いろいろな思いがありますが、あの場でプレーできたことを支えてきてくれた方に感謝したいです」  貴重なデータとともに、ここまで積み重ねてきた思いを明日につなげていく。

決勝戦は「ロサンゼルスにつなげる戦いに」

 08年の北京から13年の時が経ち、東京で復活を遂げたソフトボールは、次回のパリ五輪で再び実施競技から外れることが決定している。28年のロサンゼルス五輪で、再び実施の機会はやってくるのか。あすの決勝は今大会を締めくくるだけでなく、ソフトボール界の将来が懸かった一戦になる。  その思いは日本だけでなく、対戦相手となるアメリカも同じはずだ。試合後の会見に出席した山田恵里(デンソー)は「前回の北京にも出場させてもらいましたが、(五輪という)目標があるのとないのでは、モチベーションが全然違います。決勝は、ソフトボールの魅力を伝えることに関しても本当に重要。その思いはアメリカも一緒だと思うので、切磋琢磨していきたいです」と言葉に力を込めた。  どちらが勝つにせよ、五輪の舞台でこの競技を見られる機会はしばらくやってこない。関わるもの全てが貴重な時間をかみ締めながら、13年分のストーリーが明日、完結を迎える。 (取材・文:守田力/スポーツナビ)

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