ソフトボール日本代表が5回コールド勝ち
初戦の戦いぶりを五輪銀メダリストが解説

1回表に先制されたものの、終わってみれば8-1で5回コールド勝ち。金メダルを目指す日本代表が最高のスタートを切った 1回表に先制されたものの、終わってみれば8-1で5回コールド勝ち。金メダルを目指す日本代表が最高のスタートを切った【写真は共同】

 東京五輪は7月21日、全競技の先陣を切ってソフトボールの予選リーグ初戦が行われた。世界ランキング2位の日本は第1試合に登場。ランキング8位のオーストラリアを5回コールドで下し、金メダル獲得に向けてまずは順調なスタートを切った。大事な開幕戦を白星で飾った日本の戦いぶりを、シドニー五輪の銀メダリストで、現在は淑徳大学ソフトボール部監督を務める増淵まり子さんに解説していただいた。

内藤の四球は見えないファインプレー

3回には三番・内藤(写真)、4回には六番・藤田、そして5回には四番・山本がいずれも2ラン。3人の右打者が初戦から大きな仕事をした 3回には三番・内藤(写真)、4回には六番・藤田、そして5回には四番・山本がいずれも2ラン。3人の右打者が初戦から大きな仕事をした【写真は共同】

 申し分のない試合内容で、最高のスタートを切ったと思います。  試合の前にチームが会場入りする場面が中継で流れたんですが、バスから降りる選手たちの表情からは緊張しているのが伝わってきました。私もシドニーではバスから降りるときが一番緊張したので、選手の気持ちはよく分かります。ですが、いざ試合が始まると、かたさのようなものは感じませんでした。もちろん、各々緊張はしていたでしょうが、私の目にはそう映りました。このチームには気持ちの持って行き方を知っている選手が多いですし。  ただ初回は、野手の守備機会が一度もありませんでした。満塁になったときには、これで打球が飛んできたら野手はドキドキするだろうな、という思いで見ていました(笑)。オリンピック初戦の初回にいきなり満塁ですから。  初回に先制されながらも、5回コールド勝ちという最高の結果を得られたのは、1回裏にすぐに同点に追いついたのが大きかったと思います。特に三番の内藤(実穂)が選んだフォアボール。あれは見えないファインプレーでした。あのまま三者凡退で終わっていたら、その後の展開はどうなっていたか。もちろん、(捕手の後逸で二塁に進んだ)内藤をヒットで返した四番・山本(優)も素晴らしかったです。あそこで同点にしたことで、日本は嫌な流れを断ち切って、リズムに乗ることができました。  今大会の日本代表には右バッターが8人入っています。北京のときが4人だったので倍ですね。アメリカの左投手対策としてはもちろん、他の国にもエース級の左投手がいますからね。実際、オーストラリアの先発も左投手(カイア・パーナビー)でしたが、左バッターの山田(恵里)、川畑(瞳)に対して投げるときと、(内藤や山本など)右バッターに投げるときでは明らかにリズムが違いました。やはり右バッターには投げにくいんだなと、思いました。

上野の対応力はさすが

初回に内野安打と3つの四死球で押し出し。いきなり1点を失った上野だが、2回には立て直し、5回途中に降板するまで6つの三振を奪うなど貫禄の投球を見せた 初回に内野安打と3つの四死球で押し出し。いきなり1点を失った上野だが、2回には立て直し、5回途中に降板するまで6つの三振を奪うなど貫禄の投球を見せた【写真は共同】

 先発投手の上野(由岐子)は、初回に3四死球を与えて1点を奪われました。厳しいコースを突いて丁寧に投げていたのは、オリンピック初戦の重要性を知り、一球の重みを知っているからだと思います。  加えて、この球審はどのコースまで(ストライクを)取るのか、ぎりぎりを狙って投げていたのはそれを確認する意味もあったと思います。海外の審判は日本の審判と比べて、アウトコースのストライクゾーンが広いんですね(この試合の球審はカナダ人)。オーストラリアの打者にボールを見極められたこともあり、結果的に球数が増えてしまいましたが、試合を制するためにはその日の審判を知ることは非常に大切ですから。  上野の対応力はさすがですね。「ここまでは取らないんだ」ということを初回で見定めて、2回にはそれにしっかりアジャストしていました。初めはチェンジアップをあまり投げませんでしたが、最初から全ての球種を使う必要性がなく、タイミングが合ってきたときに積極的に投げるという判断だったのではないかと思います。  5回途中から二番手で投げた後藤(希友)は少し緊張しているように見えました。それでも二死満塁、カウント1-2からチェンジアップを選択した強さは素晴らしいと思います。ああいう場面ではポテン(ヒット)も警戒し、チェンジアップを選択せず力で押したくなるものなんですが、キャッチャーのサインに頷(うなず)いて、チェンジアップで三振に打ち取りました。  後藤も藤田(倭)も、「自分がエース!」「決勝は自分が投げる!」というくらいの気持ちがあっていいと思います。このチームにはエースが3人いると、私はそう思っています。  ひとつ驚いたのが、ピッチャーが後藤に代わったときにキャッチャーも一緒に代わったことです。しかも、後藤とトヨタ自動車で一緒にプレーしている峰(幸代)ではなく清原(奈侑)が出場したので、二重の驚きでした。これまでのオリンピックではバッテリーごと代えることはほとんどなかったのですが、今大会ではこうした選手交代が今後も見られるかもしれません。明日以降の試合で注目したいポイントのひとつです。

増淵まり子(ますぶち・まりこ)

ソフトボールの元日本代表選手。東京女子体育大学3年時の2000年に、チーム最年少メンバーとしてシドニー五輪に出場。決勝のアメリカ戦を含む2試合で先発投手を務めるなど、日本の銀メダル獲得に貢献した。大学卒業後は実業団のデンソーでプレー。現役を引退した現在は、淑徳大学教育学部こども教育学科助教としてソフトボールのピッチングのメカニズムなどを研究し、同大学のソフトボール部監督も務める。2020年には日本ソフトボール協会の理事に就任。1980年1月24日生まれ、栃木県出身。

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開催期間:2021年7月23日〜8月8日

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