パラ水泳・木村敬一の笑顔に感じた自信
悲願の金へ、全盲のエースの準備は整った

全盲のエース、木村敬一が東京パラリンピックで悲願の金メダルを目指す 全盲のエース、木村敬一が東京パラリンピックで悲願の金メダルを目指す【写真は共同】

「前回のジャパンパラ大会で現状の実力を測ることができたと思っています」  リオパラリンピックでメダルを4個獲得した全盲のエース、木村敬一(東京ガス)は5日の代表会見で、どこか吹っ切れた様子で意気込みを語った。  5月21〜23日の3日間で行われた2021ジャパンパラ水泳競技大会では、2019年世界パラ水泳で優勝し得意の100メートルバタフライで世界記録更新を狙った。しかし決勝のタイムはまさかの1分2秒95と、世界記録(1分1秒12)には1秒83も届かない結果に終わった。  レース後の取材では「自分にがっかりした」と悔しさをにじませ、技術的な部分でも「前半ストロークが1つ増えてしまったのが後半に響いた」と修正すべき点をあげていた。

 ただ、タイムが伸びなかった理由は他にもある。  実は木村は、この大会でパラリンピック本番に向けた“シミュレーション”も同時に行っていたのだ。  シミュレーションというのは、木村は今大会、3日間で6レース泳いだが、東京パラリンピック本番と同じスケジュールで活動するために、大会前に200メートル個人メドレーと50メートル自由形の予選・決勝4レース分のタイムトライアルをこなしていた。  つまり、最後のバタフライ決勝は実質10レース目で、木村自身「ダメージはあった」と話しており、コンディションは必ずしも万全でない、疲労が残った中でのレースだった。  レース後には出場種目の調整なども示唆し、結果的には本番前にシミュレーションできたことをポジティブに考えることもできる。木村は「捉え方によっては……」と謙遜(けんそん)したが、その反省材料を生かしてパラリンピック本番では良い調整もできるだろう。  その大会から2週間後、笑顔で迎えた会見。見ればわかる通り、自身の現在地を知った上での充実ぶりがうかがえた。 「出場種目が決まったか?」と問われると、「まだ決めきってはいないが、種目数を減らすというのは現実的な選択肢。ファイナルのエントリーまで悔いのないように悩みたいと思います」と、やはり種目は絞ると答えた。

東京パラリンピックで「1つだけでも金メダルを」

代表会見では終始笑顔で、これまでの充実感が感じられるものだった 代表会見では終始笑顔で、これまでの充実感が感じられるものだった【提供:JPSF・JSFP】

 木村はこれまで3回のパラリンピックに出場し、6個のメダルを獲得しているが、いまだに金メダルは手にしていない。金メダル候補として臨んだリオ大会について、過去スポーツナビの取材では「初めて自分の目標が達成できなかった大会だった」と話していた。  2008年の北京でパラリンピック初出場、12年のロンドンでは平泳ぎとバタフライで初めての表彰台と大会ごとにステップアップしてきた。しかし、16年のリオではロンドンを上回る4個のメダルを獲得したが、目標である金メダルは逃した。  そして東京パラリンピックに向けて、木村はジャパンパラの会見で「出場するすべての種目でメダルを取り、一つだけでも金メダルも取るということを目標としています」と語った通り、4度目の大舞台で狙うのは、リオで果たせなかった世界の頂点だ。  東京パラリンピックまで3カ月を切り、いよいよ調整は最終段階を迎える。「パラリンピックまでの期間をどう過ごしていくか?」と記者に問われると木村はこう答えた。 「いまできることを着実に淡々と、その瞬間に向けて準備していきたいと思っています」  深くは語らなかった。しかし、そのシンプルな言葉にはどこか自信と落ち着きが感じられ、悲願達成への準備は整ったように思えた。パラリンピック本番で、表彰台の真ん中に立っている木村の姿を期待せずにはいられない。 (取材・文:細谷和憲/スポーツナビ)

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