連載:アスリートに聞いた“オリパラ観戦力”の高め方

全仏準V・大谷桃子が猛追する憧憬の背中
車いすテニス界に輝く日本人スターの系譜

2020年のテニス四大大会・全仏オープン車いすの部女子シングルスで準優勝した大谷桃子が、競技の魅力と東京パラリンピックへの思いを語った 2020年のテニス四大大会・全仏オープン車いすの部女子シングルスで準優勝した大谷桃子が、競技の魅力と東京パラリンピックへの思いを語った【写真:本人提供】

 日本車いすテニス界には世界に名だたるスターがひしめき合っている。男子シングルスで世界ランキング1位の国枝慎吾(ユニクロ)、女子シングルスで世界ランキング2位(いずれも2020年12月現在)の上地結衣(三井住友銀行)と世界最高峰の選手を輩出している。そんな中、「3人目のスター」として注目度が急上昇しているのが25歳の大谷桃子(かんぽ生命)だ。  大谷は小学生の頃にテニスを始め、高校時代にはインターハイに出場する注目株だった。しかし、高校卒業後、病気の治療薬による副作用で車いす生活を余儀なくされた。一度はコートを離れたものの、父の勧めで車いすテニスに出会う。2016年から競技を開始すると、18年のアジアパラ大会シングルスでは銅メダルを獲得。そして、20年の全仏オープンでは初の決勝進出を果たし、上地との日本人対決には敗れたものの準優勝に輝いた。  そんな大谷の憧れは、グランドスラム決勝の大舞台でしのぎを削った1つ年上の上地結衣。そして、現在の目標は、東京パラリンピックの決勝で上地と再戦することだ。先輩の背中を追いかけて世界のトップ選手の仲間入りを果たした大谷は、2021年の夢舞台に向けて何を思い、どんな準備をしているのか。競技の楽しみ方や観戦のポイントとともに、これからテニスを始める子どもたちへのメッセージも聞いた。

相手を迷わすショットが醍醐味

2バウンドでの返球が許されている車いすテニスだからこそ、大谷は1バウンドでも取れそうだと相手が迷うショットを意識的に打ち込んでいる 2バウンドでの返球が許されている車いすテニスだからこそ、大谷は1バウンドでも取れそうだと相手が迷うショットを意識的に打ち込んでいる【Getty Images】

 車いすテニスのルールは、健常のテニスとほとんど変わりません。コートの広さやゲーム・セット数、ネットの高さに加えて、使用するラケットやボールなどの用具も同じです。大きく異なるのは、2バウンド以内での返球が認められていることですね。健常のテニスではダイレクト、もしくは1バウンドで返球しなければなりません。  車いすだと1バウンドで追いつくのが大変という考えに基づいたルールですが、実は2バウンドでの返球も意外に難しいんですよ。バウンドが多くなるとボールが遠くに行ってしまうので、その分移動する距離も増えます。そのため、車いすテニスのルール上では2バウンドでもOKですが、1バウンドで返球したほうが試合を有利に進められるんですよね。  私はこれを逆手にとって、相手が1バウンドで返すか2バウンドで返すかを迷うショットを意図的に打っています。そうすると相手は頑張って1バウンドで返そうとすると体勢が崩れますし、2バウンドになるとパワーのある返球がしづらくなります。バウンドの判断が難しいショットによって、戦局を有利に進められることもあるんですよ。そうした相手を困惑させるプレーが見られるのは、車いすテニス独自の面白さだと思います。

大谷(写真左)がクアードではなく女子を選択したのは、上地(写真右)の存在が大きかった。そして、今ではグランドスラムの決勝でしのぎを削るまでになった 大谷(写真左)がクアードではなく女子を選択したのは、上地(写真右)の存在が大きかった。そして、今ではグランドスラムの決勝でしのぎを削るまでになった【写真は共同】

 もう1つ健常のテニスと異なるのはクラス分けですね。シングルスとダブルスがあるのは同じですが、「男子」「女子」「クアード」にクラスが分かれています。クアードとは上肢にも障がいがあるクラスです。男子だと「男子」か「クアード」、女子だと「女子」か「クアード」のどちらかを選択します。実は、私は両足に加えて右手に麻痺があるので、クアードを選択することもできたんですよ。でも上地選手と同じ舞台で戦いたいという気持ちが強かったので女子を選びましたね。今は一緒の舞台で戦えていることが本当に夢みたいです。  車いすテニスのプレーでは、チェアワークがもっとも重要ですね。私は中途障がいなので以前までは歩けましたし、健常のテニスもプレーしていました。その際は無意識にボールに反応して足を踏み出せていましたが、車いすは漕ごうと思って漕がないと進みません。止まろうと思って力を入れないと止まらないですし、ターンするのも一苦労です。競技歴4年目になりますが、やっとスムーズにプレーできるようになりました。国枝選手や上地選手ら一流選手は無意識にチェアワークができているので、私ももっと技術を磨かなければならないですね。  それぞれの選手にチェアワークやストロークなどの強みがありますが、私の武器はサーブです。相手が差し込まれるボールを打って腕をたたませたり、車いすをずらしたりすることで返球しづらくさせるのが狙いです。そうするとチャンスボールが来ることが多いので、その後の展開が有利になります。曲げるような軌道で差し込むのか、スピードで差し込むのか、3種類くらいのサーブを使い分けていますので、私の試合を見る時はぜひ注目してください。

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