パラトライアスロン秦由加子を支える足元
タイヤ技術を応用した義足の秘密に迫る

東京2020パラリンピックを目指すパラトライアスロンの秦由加子、その足元を支える秘密に迫る 東京2020パラリンピックを目指すパラトライアスロンの秦由加子、その足元を支える秘密に迫る【写真:森田直樹/アフロスポーツ】

 健常者のスポーツ同様、パラスポーツの中でも特に過酷と言われているトライアスロン。パラリンピックでは前回の2016年リオ大会から正式競技となり、距離はオリンピックの半分となるスイム750m、バイク20kmの合計25.75kmで争われる。  この厳しい条件の3種目すべてを高いレベルでクリアするには、鍛え上げた自らの肉体は当然のことながら、「機材」のサポートも必須。特にパラトライアスロンにおいては、機材の重要性はより増すことになるだろう。  ブリヂストンは、その技術を生かして様々なスポーツでアスリートに機材を提供、サポートしているが、パラトライアスロンもその1つ。東京2020パラリンピック競技大会を目指す秦由加子がランパートで着用する義足のソール(底)部分には、同社のタイヤ技術を応用したゴムが使用されていることを知っているだろうか?  東京2020での活躍が期待されているパラトライアスロン女子エースの、ブリヂストンが支える足元の秘密に迫った。

ランが得意です、と言えるくらい速く走れるようになりたい

 パラトライアスロンは障がいの内容や程度によってクラス分けがされており、13歳の時に骨肉腫を発症して右大腿部より切断した秦は、「切断など肢体不自由の立位の選手」のクラスでは最も障がいの程度が重い「PTS2」クラスのレースに出場している。リオデジャネイロ2016パラリンピックは6位だった。  もともと3歳から水泳を始めていた秦にとって、泳ぐことは得意。水泳でパラリンピックを目指したほどだったが、一方、義足生活になった13歳以降、走ったことは1度もなかったという。 「私は障がいを持ってから、ランに関してはスポーツとしてやってきませんでした。なので、本当にゼロからのスタート。トライアスロンを始めてから走るということに挑戦しています。一番苦手意識があるのがランですね」  得意のスイムでトップに立っても、バイクで追いつかれ、ランで引き離される――そうしたレースが数多くあったと振り返る。と言って、ランが嫌いなわけではない、むしろ好きだと秦は笑う。 「ランはすごく楽しいんですよね。今までずっと走ることができなかったから、それがトライアスロンを始めて、風を切って走ることができるようになった。これは私にとって本当に人生が変わるような出来事だったなと思うくらいです」  だからこそ、トライアスロンの種目の中でもランが得意ですと言えるくらい速く走れるようになりたい。そう力を込めた秦にとって、課題として常にあったのが義足のソール部分だった。

どのような路面状況でも1つの義足で対応しなければならない

義足のソール部分は何よりどのような路面状態にでも対応できるものでなくてはならない 義足のソール部分は何よりどのような路面状態にでも対応できるものでなくてはならない【写真:長田洋平/アフロスポーツ】

 屋外競技であるトライアスロンは、レースによって開催場所、天候など条件が異なり、それによって路面の状態も全く違ったものになる。しかし、例えばその日の天候・路面状況にあったタイヤを選択する自動車レースのように、義足を履き替えることはパラトライアスロンではできない。アスファルトであろうが、凸凹した石畳であろうが、雨でびしょびしょに濡れた路面であろうが、1つの義足で対応しなければならないのだ。 「2016年のリオまでレースを重ねていく中で、色々なランの失敗があって、例えば義足のソールに関して言えば、いろんな環境の中でもなんの心配も不安もなく走れる義足を早急に作らなければレースの結果にも響くと思いました。私の場合は膝もなく足首もないので、踏ん張る場所がどこにもない。なので、少しでも路面で滑り始めてしまうと全部滑って行ってしまう。だから、いかにそこをグリップ感をつけて滑らないようにするかというのは、義足ユーザーあるあるの1つです」  義足が滑って全く走れず、歩かなければいけない状況になったレースもあり、すごく悔しかったとも話す秦。そんな彼女の“救世主”となったのが、ブリヂストンだった。義足ソール開発プロジェクトを担ったブリヂストン・先端技術推進本部の小平美帆さんが、経緯を語る。 「もともと私の所属する部署のミッションが、世の中の困りごとをブリヂストンの強みや技術を生かして解決できないか、ということで色々と取り組んでいました。その中で障がい者スポーツに触れる機会が多くなり、使用している道具、用具に着目したときに、選手の満足度のギャップが大きいなという気づきがありました。そのなかでも、義足は地面に接するところがあり、ブリヂストンもタイヤやゴルフシューズなど地面に接するものをたくさん扱っているので、義足のソールに着目しました」  中でも、前述したように様々な環境下の公道を走るトライアスロンは、タイヤの技術との親和性が高い。さらに、2016年からブリヂストンサイクルが秦に自転車の機材サポートをしている縁から、彼女専用の義足ゴムソールを開発するに至った。

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