連載:アスリートに聞いた“オリパラ観戦力”の高め方

杉谷泰造が7度目に期する五輪のメダル
障害馬術で人馬一体となる「2つの鼓動」

パートナーのヒロインとともに馬術で7度目の五輪出場を目指す杉谷泰造に、競技の魅力を聞いた パートナーのヒロインとともに馬術で7度目の五輪出場を目指す杉谷泰造に、競技の魅力を聞いた【写真:本人提供】

 4年に一度開催される五輪は、トップアスリートたちが目指す世界最高峰のスポーツの祭典。一度出場するだけでも偉業と言えるが、その五輪に6大会連続で出場を果たした日本人がいる。障害馬術の杉谷泰造(アートコーポレーション)だ。  祖父・川口宏一氏、父・杉谷昌保氏がともにオリンピアンというサラブレット家系で育った杉谷は、6歳の時に本格的に競技を開始。高校卒業と同時に海外にわたり、いち早く世界を体感すると1996年のアトランタ大会では早くも三代での五輪出場を果たした。するとその後も一線級の活躍を続け、シドニー、アテネ、北京、ロンドン、リオデジャネイロと“五輪での皆勤賞”を実現。自国開催の東京五輪では前人未到の7大会連続出場を目指す。  馬術は第2回パリ大会から採用されている歴史ある競技だが、日本選手のメダル獲得は1932年ロサンゼルス五輪までさかのぼる。“バロン西”の愛称で知られている西竹一氏の金メダルが唯一だ。馬術の本場である欧米勢に、ホームで戦う日本勢がどれだけ迫ることができるのか。現在ドイツを拠点に活動している杉谷に、馬術競技の魅力と東京五輪でのメダル獲得の夢について聞いた。

馬術は五輪で唯一の「動物と一緒に出場する競技」

馬術は五輪で唯一動物と一緒に出場する競技。それだけにパートナーである馬とのコミュニケーションが結果を大きく左右する 馬術は五輪で唯一動物と一緒に出場する競技。それだけにパートナーである馬とのコミュニケーションが結果を大きく左右する【写真:本人提供】

 馬術には、他の競技にはない大きな特徴が2つあります。まずは、カテゴリーで男女の区別がないこと。馬術は年齢層も幅広いため、まさに“老若男女で競えるスポーツ”だと言えますね。そして、次に五輪では唯一となる動物とともに出場する競技であること。馬というパートナーがいることが最大の特徴です。  ちなみに、みなさんは馬と言えば競馬を思い浮かべるのではないでしょうか。競馬用の馬と馬術用の馬は、筋肉のつき方が異なるので横に並べたらその違いは一目瞭然です。陸上競技に例えると、長距離をレースする競馬用の馬がマラソンの長距離選手。一方で優雅かつ瞬発的な動きが必要とされる馬術用の馬は短距離選手ですね。  馬術競技には、馬場馬術、障害馬術、総合馬術の3つの種目があります。馬場馬術は、馬の演技の正確さと美しさを競います。五輪最高齢出場を目指す79歳の法華津寛(アバロン・ヒルサイドファーム)選手が有名ですね。総合馬術は、馬場馬術と障害馬術にクロスカントリーを加えた3種目を3日間かけて争います。トライアスロンをイメージしてもらえるとわかりやすいかと思いますが、馬術競技の中では一番過酷な種目ですね。  そして、僕の専門である障害馬術は、コース内に設置された障害を跳び越えながらゴールを目指す種目です。障害の大きさは、高さ160センチ、奥行きは200センチを超える場合もあるので、実際に目の前に立つと結構大きく感じます。障害を落としたり、手前で立ち止まったりすると減点の対象になります。  陸上競技のハードルと同じで踏切の位置を間違えてしまうとうまく跳べず、障害の前で馬が止まってしまうことが多々あります。馬と呼吸を合わせて踏切のタイミングを見計らうことが重要です。また、制限時間も設けられているのでそれを超えても減点になります。馬とともにミスをすることなく障害を跳び越え、1秒でも速くゴールを目指すことが求められます。

人馬一体となる競技の醍醐味を語る杉谷。ドイツとのオンライン取材となったが、その思いは画面越しにひしひしと伝わってきた 人馬一体となる競技の醍醐味を語る杉谷。ドイツとのオンライン取材となったが、その思いは画面越しにひしひしと伝わってきた【写真:C-NAPS編集部】

 他の競技のアスリートは、自分のコンディションを整えることがもっとも重要ですが、馬術に関しては馬のコンディションに結果が大きく左右されます。体や心の状態が毎日違うのは、人間も馬も一緒なんです。例えば、朝起きたら「頭が痛いなぁ」という日があるじゃないですか。馬も同様で、背中にまたがった瞬間に「ご機嫌斜めだな」という日もあります。もちろん、競技をするうえで叱らなければいけない時もありますが、そこも人間同士のコミュニケーションの取り方と同じです。それぞれの馬の個性に合わせて接するようにしています。  ほとんどの方には馬の表情がわからないと思いますが、僕たちは365日顔を合わせて一緒にトレーニングをしたり、試合に出ていたりするので、目や仕草などから感情を読み取れます。正直、喋って気持ちを伝えてほしい時もありますよ。例えば、どこが痛いのか。僕らが乗ってケアして、痛いところを探してあげないといけません。ちょっとした変化に気がついてあげるためにも、とにかく毎日接することが大切です。  一方で、繊細な馬は人間の体調の変化をすぐに察知します。そうやって人馬ともに支え合いながら競技に臨んでいるんですよね。馬が一生懸命やってくれているからこそ、自分は常に100%でないといけないと奮起しながら日々のトレーニングに励んでいます。人馬一体となり進化しなければならいのも馬術の魅力です。    馬術と一番近いスポーツは、実はF1だと思っています。乗馬クラブの初心者用の馬とは異なり、競技用の馬はF1カーのような性能なんですよ。僕がドライバーとメカニックで、修理を獣医や理学療法士が担当し、タイヤ交換は装蹄師(馬の蹄に蹄鉄を打つ技術者)。試合や遠征などの不在時は信頼できるスタッフが馬の面倒を見て、状態について報告をしてくれます。一つのチームで馬をケアしながら試合に臨みます。競技場に入ったら人馬だけしかいませんが、その裏側にはたくさんの人が携わっているので、成績が出た時は本当にうれしいですね。

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