動画提供:朝日新聞デジタル 「日本は細身の選手が多い。私だけですかね、なんかゴリゴリなのは」 そう自嘲気味に笑うのは、スポーツクライミングの野中生萌(みほう)(XFLAG)だ。隆々とした筋肉が生み出すパワーと瞬発力こそが、この22歳が東京五輪のメダル候補に推される最大の理由でもある。
技―WAZA―
「私だけゴリゴリ」野中生萌の売りは筋肉
五輪メダルへ、スキップしながら壁を登る
朝日新聞デジタル

女子屈指の筋力が端的に表れるのが、登る速さを競う「スピード」だ。7月、スイスであったワールドカップ(W杯)で8秒432の日本記録をたたき出し、この種目で男女通じて日本勢初の決勝進出を果たした。 スポーツクライミングはボルダリング、スピード、リードの3種目の総合で順位を争う。スピードの壁の高さは15メートル。覆いかぶさるように手前に5度、傾いている。この壁の序盤で見せる「トモア・スキップ」と呼ばれる登り方が、野中の持ち味。ポイントは、壁の左側に設置された二つのホールドを飛ばして登っていくことだ。 まずはスタート直後、左の小ホールドを踏まずに真っすぐ上へ。下から3番目の大きなホールドに飛びつくと、ここに両手と左足をかけ、今度は左の4番目を飛ばして一気に真上の5番目に飛びつく。「左へ蛇行しない分、ロスが少ない」と野中は言う。 直線的なラインをたどるこの登り方は、東京五輪代表に内定した男子の楢崎智亜(ともあ)(23)(TEAM au)が考案した。昨年のアジア大会で初披露して以来、海外勢から「トモア・スキップ」と呼ばれている。 窮屈な体勢から一気に両腕でホールドを引きつけ、同時に左足の脚力で跳び上がるのが肝。爆発的な瞬発力が必要となる技術だけに、パワーが売りの野中にはぴったりだった。

野中がこの技に出会ったのは、昨秋のこと。「最初に左に行く動きが得意じゃなくて……。なかなかスムーズにできず、苦戦していたんです」。そんな時、コーチから「筋力があるから、トモア・スキップできるんじゃない?」と言われた。それまで女子でする選手はいなかったが、数回の練習で成功。野中は「0.5秒くらい一気に縮まりました」と振り返る。 そんな野中の主戦場は、あくまでボルダリングだ。昨年はW杯で年間優勝を達成。ボルダリングで培い、売りにしてきたパワフルな登りが、取り組み始めて2年程度というスピードにも生きた格好だ。 現在では、トモア・スキップを見せる女子選手は増えてきたが、完成度で野中は上回る。鍵は、ホールドを飛ばした直後にある。5番目の大ホールドに飛びつく際、ほぼ全ての女子選手が両手なのに対し、野中は左手一本。よりスムーズに6番目へ右手を伸ばすことができる。 スピードの壁に設置されるホールドは31個。場所はルールで決められており、世界中どこに行っても作りは同じだ。ホールドの位置が毎回異なるボルダリングとは対極にある。 野中は若者らしい言葉でスピードへの思いを語る。「ボルダリングは昔からやっていて、ニコイチ(親友)みたいな感じ。スピードも、もっと仲良しになれたらいいな」(吉永岳央) ※本記事は朝日新聞デジタル『WAZA』からの転載です。掲載内容は朝日新聞デジタルで掲載した当時(2019年9月23日)のものです。
野中生萌(のなか・みほう)
1997年生まれ、東京都豊島区出身。9歳からクライミングを始め、16歳で日本代表入り。2016年の世界選手権のボルダリングで銀メダルを獲得し、18年にはボルダリングのワールドカップで初の年間優勝を果たした。
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