もう一度考えたい「五輪本来の意義」
延期は価値を見直す好機に

福島県で展示されていた東京五輪の聖火。聖火リレーが中止となり、今後の対応が注目される 福島県で展示されていた東京五輪の聖火。聖火リレーが中止となり、今後の対応が注目される【写真は共同】

 新型コロナウイルスの急激な感染拡大により、開催時期が検討されていた「2020年東京五輪・パラリンピック」は、“1年程度の延期”という日本政府と国際オリンピック委員会(IOC)の合意のもとで再調整に入った。  1896年に始まった近代五輪において、戦争による中止は1916年ベルリン夏季大会、1940年東京夏季および札幌冬季、1944年ロンドン夏季およびコルツィナ・ダンペッツォ(イタリア)冬季の5大会であったが、延期されるのはこれが初めてだ。

「“人命ファースト”、開催延期は賢明な判断」

 24日夜、安倍晋三首相から発表された決定により、IOCと日本政府、大会組織委員会は経済への影響や各種競技大会のカレンダーおよび会場手配の調整、聖火リレースケジュールの再検討、スポンサーへの対応、ボランティアをはじめとする人員確保など、山積する課題の洗い出しと対策に追われている。  世論もこれらの課題にどう取り組むべきかに議論が集中しているが、同時に五輪そのものの価値や本来の目的にも改めて目を向けるべきであろう。  五輪研究で知られる首都大学東京(4月1日より「東京都立大学」に名称変更)の舛本直文特任教授(4月1日より東京都立大学・武蔵野大学の客員教授)は、まず開催が1年程度延期されたことについて、「今回の場合は“人命ファースト”。大会に関わる全ての人の安全が優先されるべきで、開催延期は賢明な判断」とした。その上で、「来年の春や夏の開催は厳しいのではないか。開催時期の決定は世界保健機構(WHO)がパンデミックの終息宣言を出せるかどうかにかかっている。治療薬やワクチンが開発され接種されるまでの時間を考えれば、開催は来年の秋が現実的だろう」との見解を述べる。  開催延期という異例の事態を、IOCはもとより国際競技連盟、国内オリンピック委員会、大会組織委員会など、五輪に関わる全ての組織が遵守する「オリンピック憲章」に照らし合わせると、その第5章に「オリンピアード競技大会はオリンピアードの最初の年に開催され、オリンピック冬季競技大会はその3年目に開催される」(1・32オリンピック競技大会の開催・1)とあり、夏季大会、冬季大会ともに4年に一度の開催が定義されているが、舛本特任教授は「東京五輪の延期はIOC理事会で特例として承認され、憲章の改訂にはあたらないだろう」と話す。  ちなみに、憲章の中で「オリンピアード競技大会」とは夏季大会のことを指し、オリンピック冬季大会とあわせてオリンピック競技大会と呼んでいる。「オリンピアード」とは連続する4つの暦年からなる期間のことであり、それは最初の年の1月1日に始まって、4年目の12月31日に終了すると、第1章で定義されている。

オリンピズムに謳われる根本原則とは?

【スポーツナビ】

 舛本特任教授は大会開催までにできた時間を、五輪本来の意義や価値を見直す好機と捉え、オリンピック憲章の柱であるオリンピズムの根本原則に謳(うた)われる「平和な社会の推進」や「スポーツを文化、教育と融合させる」ために使うことができると考える。 「例えば福島に届いた聖火を、ただ据え置くだけでなく“復興の火”としてどう生かすか。近代五輪は本来、国や地域同士でメダルの数を競うものではなく、スポーツを通して健全な肉体と精神を養った人間が平和な社会づくりに貢献したり、スポーツを通じて異なる国や地域の人々が相互理解を深める機会。それを広く知ってもらうことが必要」(舛本特任教授)  1年程度の大会延期を発表した安倍首相は東京五輪・パラリンピックを「人類が新型コロナウイルス感染症に打ち勝った証しとして」、バッハ会長も「新型コロナウイルスによる未曽有の危機を乗り越えた人類にとっての祝祭になる」と位置づけた。  今大会は世界中を巻き込むコロナショックに飲み込まれた形だが、その中でなぜ延期してまで五輪を開くのか、根本を忘れてはならない。

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