連載:アスリートに聞いた“オリパラ観戦力”の高め方
上山友裕が教えるパラアーチェリーの心技
選手の緊迫感が伝わる極限の“一本勝負”
C-NAPS編集部
パラアーチェリーのリカーブでパラリンピック内定を決めた上山が競技の観戦ポイントを語った【写真:C-NAPS編集部】
東京2020を約1年後に控え、各競技でし烈な代表争いが行われている最中、早くも夢舞台の切符を手にした男がいる。パラアーチェリー・リカーブの上山友裕(三菱電機)だ。初出場で7位入賞を果たしたリオデジャネイロパラリンピックでは3カ月前に出場権を獲得したが、今回は本番の1年3カ月前に内定を勝ち取った。メダル獲得に向けた準備期間は十分。世界ランキングも自己最高の6位(2019年8月現在)に到達した上山への期待は否応なしに高まっている。
そんな上山のプレーの最大の特徴は「中心を射抜く技術」。高校時代にアーチェリーに出会い、大学のアーチェリー部で研さんしたその技術はまさに一級品だ。社会人1年目に原因不明の両下肢機能障がいによって足がまひして車いす生活を余儀なくされたが、その後も競技を継続。たゆまぬ努力を続けたかいもあり、車いすになった今でも技術はさび付くどころか更なる進化を遂げている。そんな上山にパラアーチェリー観戦の注目ポイントやパラリンピックにかける思いを聞いた。
アーチェリーのルールは五輪もパラリンピックも同じ
アーチェリーのルールはとてもシンプルです。離れた的に矢を放ち、当たった位置によって異なる点数の合計得点を競います。使用する弓の形状によって「リカーブ」と「コンパウンド」に分かれますが、僕はこれまでずっとリカーブでプレーしてきました。意外かもしれませんが、実は基本的なルールは五輪もパラリンピックも変わらないんです。僕自身が障がいで車いすになってからもプレーを継続できたのは、アーチェリーがそうした「バリアフリーなスポーツ」だった点が大きいと思います。
パラアーチェリーに関しては障がいの程度によってクラスが分かれます。W1(四肢に障がいがあり、車いすを使用)、W2(下半身の障がいにより車いすを使用)、ST(立ち、またはいすに座って競技)とありますが、W2とSTは一緒のカテゴリーです。なので、僕は立ってプレーする選手とも競い合っています。
また、パラアーチェリーでは手足に運動機能の障害があるなど、さまざまな身体的な特徴を持った選手が混在しています。自身の障がいと向き合いながらプレーする必要があるので、選手によっては脚や口など動く部分だけで矢を射るんです。各選手が工夫しながら違うスタイルでプレーしているのは、パラアーチェリーだからこその魅力ですね。そうした個性に注目して観戦してもらえるとうれしいです。
五輪もパラリンピックもルールが同じアーチェリーは、一本勝負の緊迫感がしびれる競技だ【写真:YUTAKA/アフロスポーツ】
パラリンピックの試合形式は、まずは無観客の状態でランキングラウンド(予選ラウンド)が行われます。選手が横一列に並び、1射10点満点、計720点満点の矢を72本黙々と放ち、その点数を競います。決勝トーナメントは、予選のランキングで組まれた相手との1対1の対戦形式です。1セット3射の30点満点で20秒の制限時間内に交互に矢を射ます。勝者には1セット2ポイント、引き分けは1ポイント、敗者は0ポイントが入り、合計6ポイント以上先取した選手が勝利するルールです。
5セット終了した時点で同点の場合は、「シュートオフ」というサッカーの「PK」に似た方法が採用されていますが、これがまさに“一本勝負”。互いに一本ずつ打ち合い、その点数で勝敗が決まります。もし1本目がど真ん中の10点ずつであれば、もう一度やり直し。2本目は同じ10点でも真ん中の「+」マークからから距離を測り、10点同士でも中心に近い方が勝者になります。
実は、「シュートオフ」になることは結構あって、僕も世界選手権ではミックスと個人で3回は経験していますね。勝負を分けるのは本当にわずかな差で、メンタルはもちろんですが、その時に風が吹くか吹かないかという「運」も絡んでくるんです。なので、予選1位の選手が優勝することは、パラアーチェリーにおいては珍しいと言えます。むしろ一回戦で負けることもあるくらいです。そうした勝負の分かれ目に注目していただけると、観戦がより面白くなると思います。
また、パラアーチェリーは試合展開の早さが特徴の競技でもあります。競技によっては試合時間が長く、観戦中にボーッとしてしまうことがあるかもしれませんが、パラアーチェリーは息つく暇もありません。最大で15分くらいのスピード感で試合が展開されるので、集中して観戦できます。矢が的を射抜く一瞬一瞬を「選手と同じ緊迫感」で見るのは、サッカーの「PK」のようなドキドキ感がありますね。とくに応援している選手だと、見ている方も気持ちがこもるはずです。
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