連載:アスリートに聞いた自競技の“五輪観戦力”の高め方
山崎悠麻に聞いたパラバドミントン観戦術
チェアワークを弄ぶ精密ショットの妙技

東京パラリンピックの車いすWH2クラスでメダルを目指す山崎悠麻に、パラバドミントンの魅力を聞いた
東京パラリンピックの車いすWH2クラスでメダルを目指す山崎悠麻に、パラバドミントンの魅力を聞いた【写真:C-NAPS編集部】

 2020年東京パラリンピックから正式競技に採用されるバドミントン。大舞台でこの競技を観戦できるのは東京が初となるが、実は日本には多くのメダル候補がそろっている。中でも注目は、車いすWH2クラスで18年に世界ランキング1位に立った山崎悠麻(NTT都市開発株式会社)だ。18年のアジアパラ競技大会では、シングルス・ミックスダブルスで銅メダルを獲得。更にはJAPANパラバドミントン国際大会2018ではシングルス・ダブルス・ミックスダブルスで前人未到の3冠を果たしている。

 そんな新競技のメダル候補である山崎は、健常者だった小学校時代にバドミントンの全国大会に出場した実力者。最大の長所であるショットの正確性は、その時代に培われたスキルだ。「テニスとは違いシャトルをワンバウンドさせてはいけないというルールは、健常者と同じなので結構ハードな競技です」と語る山崎に、パラバドミントンの基本ルールや注目選手、観戦ポイントを聞いた。2児の母として子育てと仕事を両立させながら目指す、パラリンピックの夢舞台への思いとは――。

パラバドミントンの障がいクラス分けと基本ルール

 パラバドミントン競技は、立位4クラスと車いす2クラスの計6クラスで構成されています。立位は下肢障がいの2クラス(SL3クラス・SL4クラス)と上肢障がい(SU5クラス)、低身長(SS6クラス)に分けられています。車いすのクラスは、体幹(頸部、胸部、腹部および腰部)の機能に障がいがあるクラス(WH1クラス)と、体幹が機能するクラス(WH2)に分けられていて、私は車いすWH2クラスの所属です。WH1もWH2も体を車いすに固定することに変わりはありません。

 私は、小学2年生から中学3年生まで、健常者としてバドミントンをプレーしていました。なので、パラバドミントンを始めた当初からショットコントロールなどはある程度適応できていました。でも車いすの操作(チェアワーク)にはかなり苦戦しましたね。バドミントンのラケットを持ちながら車いすを操作するので、自分の行きたいポジションに素早く移動するだけでも一苦労でした。

 車いすクラスと健常者・立位クラスの大きな違いは、コートの広さです。健常者・立位クラス(SL3クラス以外)はコート全面を使用しますが、車いすの2クラスは、コートの半面だけを使用します。コートが狭くなるので、とくにショットの組み立てが重要になります。狭いスペースの中でも相手のチェアワークを見つつ、急所を突けるようにショットすることがポイントです。車いすを動かしながら、試合を組み立て、さらに狭いコートの中に狙いすましてショットするという繊細な技術が求められます。

背中をそらしてのショットなどダイナミックな動きは、パラバドミントンの魅力のひとつだ
背中をそらしてのショットなどダイナミックな動きは、パラバドミントンの魅力のひとつだ【写真:長田洋平/アフロスポーツ】

 パラバドミントンはプレーする側はもちろん、観戦する側にとっても楽しい競技だと思います。後方にシャトルを押し込んで得点できることもあれば、シャトルをコート前方に落とすドロップショットが鮮やかに決まることもあります。他の車いす競技に比べて、前後の運動量や背もたれを低くした状態から反す動作が多く、さまざまなシーンでダイナミックな動きが見られるところはパラバドミントンの魅力ですね。

 車いす2クラスのシングルスでは、ネットとサービスラインの間にシャトルが落ちた場合はアウトで、相手の得点になります。なので、健常者のバドミントンのようにネットすれすれを狙うドロップショットはアウトになります。ただ、サービスラインギリギリにシャトルが落ちる場合はインプレーになるので、素早い移動での対応が必須です。小刻みな動きや前後の動きができないと、車いすを速く切り返すことができません。チェアワークを磨くことは試合を優位に進めるうえで重要なポイントになります。

 また、健常者のバドミントンでは、強烈なスマッシュが有効打になりますよね。パラバドミントンの車いす2クラスは常に座っている状態なので、スマッシュに角度を付けることは非常に困難です。そのため、スマッシュが有効打になる事はそこまで多くありません。スマッシュよりもむしろ狙いすましたコントロールショットの精度が勝敗を分けます。

C-NAPS編集部
C-NAPS編集部
ビジネスとユーザーを有意的な形で結びつける、“コンテキスト思考”のコンテンツマーケティングを提供するプロフェッショナル集団。“コンテンツ傾倒”によって情報が氾濫し、差別化不全が顕在化している昨今において、コンテンツの背景にあるストーリーやメッセージ、コンセプトを重視。前後関係や文脈を意味するコンテキストを意識したコンテンツの提供に本質的な価値を見いだしている。