五輪まであと1年、競泳陣の活躍を占う
メダル6個の世界水泳から見えた可能性

リオ五輪では男女ともに17選手中11人が前年の世界水泳の代表選手。メダル獲得も前年の世界水泳に出場していた選手が占めた。 リオ五輪では男女ともに17選手中11人が前年の世界水泳の代表選手。メダル獲得も前年の世界水泳に出場していた選手が占めた。【画像:相河俊介】

カザンの悔しさをバネに奮起したリオ五輪

 その4年後、ロシア・カザンでの世界水泳は、厳しい戦いが待っていた。獲得メダル数は4個と、上海世界水泳と遜色はなかったが、入賞数はリレーを除いてたったの10種目。上海世界水泳からロンドン五輪の結果を単純に比較すると、翌年に控えたリオ五輪は、非常に苦しい戦いになるかと思われた。ただ違うのは、4個のメダルのうち、3つが金メダルだったということだ。  世界水泳後半戦の最初に200mバタフライで星奈津美が金メダルを獲得して勢いづいた日本代表チームは、2日目に200m個人メドレーで銀メダルを獲得していた渡部香生子(JSS)が200m平泳ぎで金メダルに輝く。そして最終日、日本人初となる400m個人メドレーで2連覇を瀬戸大也(ANA)が果たしたのである。  そのままの流れで読み解けば、このメダルを獲得した3人がリオ五輪でもメダル争いを繰り広げた、となるところだが、結果は違う。リオ五輪で金メダルを獲得したのは、カザン世界水泳で涙をのんだ金藤理絵と、世界水泳直前に骨折して欠場を余儀なくされた萩野である。坂井聖人(セイコー)もカザンでは4位だったが、リオではフェルプスに迫る泳ぎで銀メダルを獲得した。  もちろん、瀬戸は400m個人メドレーで銅メダル、星も200mバタフライで銅メダルを獲得した。だが、悔しさをバネに奮起した選手が強さを見せつけたのが、リオ五輪だったのだ。

ロンドン前年と似ている今年の世界水泳

 さて、そして今年、韓国・光州での世界水泳の結果はどうだったか。  まず、メダル獲得数は上海世界水泳と並ぶ。瀬戸が200mと400m個人メドレーで2冠を果たし、男子200mバタフライでも銀メダルを獲得。200m平泳ぎでは、渡辺一平(トヨタ自動車)が2大会連続となる銅メダルを獲得。200m個人メドレーでは失格になってしまった大橋悠依(イトマン東進)が、5日間で見事に立て直し、400m個人メドレーで銅メダルを獲得した。そして、男子200m自由形で松元克央(セントラルスポーツ)が銀メダルに輝き、日本の自由形に新たな歴史を刻んだ。さらに、今大会ではリレーを除いて15種目の入賞を果たした。この数字は、まさに過去最多となるメダル数を獲得したロンドン五輪前年の上海世界水泳とほぼ同等なのである。  ロンドン五輪は、7人のメダリストの内、上海世界水泳代表者が6人。そのうち3人は上海でメダルを獲得していた。  単純に当てはめることができないことは承知の上だが、期待値の話をすれば、東京五輪では光州世界水泳のメダリストを中心に、代表のなかから数人、もしくは代表外からも数人のメダリストが誕生するかもしれない。そうなれば、ロンドン五輪でリレーも含めて獲得した11個というメダル数を超える可能性も見えてくる。

自己ベストのレベルアップが東京での活躍のカギ

 当然、楽観視はできない。光州世界水泳でレベルが低い種目がいくつかあったことが理由のひとつ。男子背泳ぎは、ここ4大会ほど優勝タイムにほぼ差はない。男子個人メドレーでは、瀬戸の優勝タイムを上回る自己ベストを持つ選手がまだ数人存在している事実。女子の平泳ぎやバタフライ(200mに限る)、個人メドレーもさほど大きく世界のレベルが上がっているわけではない。  つまり、あくまで世界水泳なのである。五輪になると、これらの種目も一気に記録レベルが上がることは容易に予想される。たとえば、リオ五輪の女子200mバタフライは、星が金メダルを獲得したときのタイムを星自身も上回ったが、さらに2人が上回っている。  結果として上海世界水泳からのロンドン五輪は最高の結果を残せたが、今年の世界水泳のレベルから言えば、そう簡単な話ではないのである。  しかし、選手たち、そして日本代表を率いるコーチ陣はそんなことは十分に理解している。だからこそ、選手もコーチも「これからもっとベストタイムを上げられるよう強化していく」と皆が口をそろえて話す。そう、東京五輪で最高の結果を残すためには、絶対的な記録の底上げ、つまり自己ベストのレベルアップが必要不可欠であり、その自己ベストをいかに決勝という舞台で現実のものにするかどうかが何よりも大きなポイントなのだ。  東京五輪まであと1年を切った。競泳競技の期待は大きく、選手たち、コーチたちへのプレッシャーも桁外れに高い。そんななか、彼らがどんな泳ぎを東京という舞台で見せてくれるのか。その結果を楽しみにしたい。

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田坂友暁

1980年、兵庫県生まれ。バタフライの選手として全国大会で数々の入賞、優勝を経験し、現役最高成績は日本ランキング4位、世界ランキング47位。この経験を生かして『月刊SWIM』編集部に所属し、多くの特集や連載記事、大会リポート、インタビュー記事、ハウツーDVDの作成などを手がける。2013年からフリーランスのエディター・ライターとして活動を開始。水泳の知識とアスリート経験を生かした幅広いテーマで水泳を中心に取材・執筆を行っている。

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