連載:アスリートに聞いた“オリパラ観戦力”の高め方

上山容弘が説く“20秒間観戦”の楽しみ方
息つく暇もないトランポリンの「緊張感」

12年のロンドン五輪で5位入賞を果たし、東京五輪出場を目指す上山容弘がトランポリン観戦の楽しみ方を語る 12年のロンドン五輪で5位入賞を果たし、東京五輪出場を目指す上山容弘がトランポリン観戦の楽しみ方を語る【写真:C-NAPS編集部】

 子どもの頃に、誰もが一度は遊んだことがあるはずのトランポリン。しかし、体操競技としての側面はあまり深く知られていない。最高到達点がおよそ8メートルにもなるトップアスリートの跳躍は、ダイナミックかつ華麗なだけでなく、実は想像を絶するような緊迫感や緻密さにあふれている。そんなトランポリン競技の観戦の“肝”を教えてくれたのは、2008年の北京五輪、12年のロンドン五輪に出場した上山容弘(ベンチャーバンクホールディングス)だ。  1984年生まれの34歳は、16年のリオデジャネイロ五輪出場を逃した後に一度は現役を退いた。だが、来たる2020年の東京五輪でもう一度羽ばたくために、17年より現役復帰。翌年に五輪を控えた19年の世界選手権への切符を手に入れるなど、再び日本代表に名を連ねている。そんな上山に、トランポリン競技の楽しみ方と奥深さ、さらには東京五輪に懸ける意気込みや現役復帰を決断した“あるきっかけ”まで、存分に聞いた。

わずか20秒ですべてが決まるのがトランポリンの世界

 トランポリンは、いつ始まっていつ終わるのかが分かりにくい競技だと思います。まずは静止した状態から真っ直ぐに上がる“予備跳躍”というジャンプがあり、それがある程度の高さになり、体が回転し始めたら演技スタートです。約20秒間の10回の跳躍で演技が終了しますが、1回目の宙返りから必ず10回連続で行う点がポイント。途中でやり直しはできません。その大前提を理解していると、僕らの緊張感が伝わるし、見ている方々もドキドキすると思います。  採点は「演技点」「難度点」「跳躍時間点」「移動点」の4つの要素で成り立っています。「演技点」はその名の通り、どれだけ美しく、完成度の高い演技ができるかが評価ポイントです。10回の跳躍で1回につき1点ずつ、10点満点から減点方式となります。 「難度点」は、体操と違ってA、B、Cという難度表記ではなく点数計算です。たとえば縦に回る宙返りなら、90度につき0.1ポイント、一周回ったらプラス0.1ポイント、ひねりなら180度で0.1ポイント、一周すれば0.2ポイントと点数が加算されます。なお、1回の演技で同じ技を重複して出してしまうと、2度目は難度点の加算がないので注意が必要です。 「跳躍時間点」は“空中にいる時間”を機械で計測し、タイムが点数化されます。単純に言えば、高く跳べば跳ぶほど高得点になります。  4つ目の「移動点」は、17年から新たに採用されたルール。どこに着地するかがジャッジポイントで、トランポリンの跳躍面の中央に十字がありますが、それを囲む一番小さな枠に着地できれば減点なし。それ以外の枠だと場所によって0.1ポイント、0.2ポイントの減点になります。それら4つの項目で、10回の跳躍の合計点数を競うのがトランポリン競技です。

「移動点」の採用により、跳躍面の中央で跳ぶ技術の重要性が以前より増した 「移動点」の採用により、跳躍面の中央で跳ぶ技術の重要性が以前より増した【Getty Images】

 一番分かりやすいのは「移動点」でしょう。どこに着地したかは、一目で分かりますからね。どれだけ同じ位置に着地できるか、という跳躍の正確性はぜひ注目してほしいですね。実は“真ん中に落ちる”のは簡単ではありません。トランポリンでは体の重心をずらして宙返りをかけるのですが、前に回ろうとすれば体は自ずと前に行くし、後ろも同様です。中央に落ちるのは、放物線の描き方として理には適っていないんです。バネの反発や体の動かし方で、うまく真ん中に調整しなければいけません。  その原理を理解すると、真ん中に落ちることの難しさが分かってもらえると思います。僕らは日々の練習で、感覚値としてどれだけ前後にずれないように回れるかを試行錯誤しています。映像を見直しながら繰り返しチャレンジし、その積み重ねが、正確性のある演技につながります。  トランポリンは、高さ8メートルのダイナミックなジャンプをする一方で、同時にコンパクトに演技をしなければいけない競技です。そういう繊細さを知ってもらうと、ひと味違った緊張感がひしひしと感じられると思います。よく言われるのが「観戦中に息をしている暇がない」という言葉。観戦するのも疲れるかもしれませんが(笑)、観戦の“肝”を知ることで面白さは増すはずです。

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C-NAPS編集部

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