ボランティアがパラの魅力発見の機会に
東京につながるアジアパラの“レガシー”

 東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会で活躍する「スポーツマネジャー」。各競技の運営責任者として国内・国際競技連盟等との調整役を務め、大会を成功に導く重要な責務を担っている。

 ボッチャを担当する齋藤保将さんは10月、インドネシアで行われたアジアパラ競技大会(以下、アジアパラ)を視察。現地で働くボランティアの姿に東京2020大会につながる発見を得たという。その時の様子をつづっていただいた。

積極的に関わろうとするボランティア、スタッフたち

ボッチャ会場で熱心に活動していたスタッフと日本から参加した審判とで記念撮影
ボッチャ会場で熱心に活動していたスタッフと日本から参加した審判とで記念撮影【Photo by Tokyo 2020】

 10月8日〜10日の日程で、インドネシアで開催されたアジアパラの視察に行きました。現地は気温も湿度も高く、選手には難しいコンディションでしたが、ボッチャの日本代表はチーム戦で見事に銅メダルを獲得することができました。

 視察で特に印象に残ったのは、ボランティアさんが非常に熱心に活動していたことです。若者を中心にたくさんの方が参加していて、男女比は半々くらいでしょうか。何か困ったことが起こると、彼らの積極的に関わろうという姿勢を強く感じて、すごいなと思いました。

 ボッチャの競技会場は招集場所が1階、コートが2階と分かれていたので、電動ではない車いすを使用している選手は、スロープを上り下りするための補助が必要になります。しかし、スロープにボランティアさんが十分に配置されていて、彼らが一生懸命にサポートしていたため、選手たちはスムーズに移動ができていました。

 また、多言語対応という面でも非常に充実していました。インドネシアの公用語はインドネシア語ですが、英語を中心に母国語以外でコミュニケーションを取れる方が非常に多かったです。中には日本語ができる方もいて、実際に私も日本の大学に留学経験のあるボランティアさんに相談をさせてもらいました。やはりコミュニケーションがしっかり取れるボランティアさんが配置されていることは、非常にありがたいです。今回のアジアパラを踏まえると、東京2020大会でも、日本語以外を話せるボランティアの配置には工夫が必要だなと感じました。

 これは後から聞いた話ですが、現地のボランティアさんやスタッフの皆さんから、「この流れでぜひ東京でもやれることは何かないだろうか」「東京パラリンピックでもぜひボランティアをやりたい」という声が上がっているそうです。実際に私の周りにも「東京大会のボランティアに登録したよ」といううれしい報告が届いています。アジアパラをきっかけに、インドネシアの中で変化が起きて、「同じアジアでやるパラリンピックに自分たちも関わりたい」という機運につながったのは、すごくいいことだと思います。これはまさに、オリンピック・パラリンピックで言う「レガシー」そのものではないでしょうか。

建設関係者に広がるボッチャの輪

 その後の10月24日〜27日は「IFビジット」と呼ばれる国際競技連盟(IF)との協議があり、国際ボッチャ競技連盟(BISFed)のデビッド・ハドフィールド会長が競技責任者とともに来日されました。滞在中は、各種ミーティングはもちろんですが、競技会場となる有明体操競技場の建設現場の視察にも同行しました。ちょうど1年前にお二人がいらした時はまだ杭打ちを始めたばかりでしたが、今回はちょうど屋根の部分を持ち上げるところまでできていました。実際に競技会場がここまでできているというのを確認でき、会長自身も、東京2020大会への期待がさらに高まった様子で、とても感慨深いものがあったのではないかと思います。

現場監督の説明を受けながら建設現場で視察を行った(右端が齋藤さん)
現場監督の説明を受けながら建設現場で視察を行った(右端が齋藤さん)【Photo by Tokyo 2020】

 建設に関わる皆さんは、有明体操競技場ではオリンピックの体操はもちろん、パラリンピックのボッチャが行われることをすごく意識してくださっています。実は、建設関係の皆さんが集まって、ボッチャ大会も行われたんですよ。皆さん、今回仕事で関わったのをきっかけに「せっかくの機会だから、ボッチャの大会をやってみよう!」となったようで、大会には私もお招きいただきました。優勝カップまで準備されていて、大いに盛り上がりました。「パラリンピック競技でこの会場を使うんだ」という思いを強く持って作業に従事されている方ばかりなので、非常にありがたく思っています。私自身も「この人たちにお任せしているのだから、きっといいものになる」という強い思いがあります。

世界中の人たちが集まる大会作りを

 昨年ハドフィールド会長が来日した際には概要しか説明できなかったものが、今回の来日時の会議ではいろいろなことを具体的に進めることができたと実感しています。10月にはパラリンピックの競技日程が発表されましたが、現在は具体的な試合の配置などの調整をする段階に入っています。また競技で使用する物品のリストをIFに承認してもらう手続きなども行っています。

 日本ボッチャ協会として国内の大会を運営していた時は、「2年後の大会に向けた準備」など、長い年月を見据えた感覚で動いたことはなかなかありませんでした。しかし今は、これだけの長い年月をかけて、さまざまな分野にわたる多くの関係者が、大会本番に向けて着実に準備を進めています。そのような膨大な準備期間を経て大会本番を迎えるので、競技運営を担当するスポーツマネジャーの責任の重大さを日々感じているところです。

選手の卓越したプレーを観客の皆さんに楽しんでいただくために、選手たちが最高のパフォーマンスを披露できる環境を整えることは、まさに自分たちの仕事です。その責務をしっかり全うできるよう、これからも準備していきたいと思います。

プロフィール

齋藤 保将(さいとう やすまさ)
埼玉県在住。大学卒業後、当時勤めていた特別支援学校で、授業で取り組んでいたボッチャを知る。以後徐々に本格的に競技に関わるようになり、1999年には日本選手団コーチとして国際大会に初帯同する。2007年には埼玉県障害者ボッチャ協会(現埼玉県ボッチャ協会)の設立に関わり、14年からは日本ボッチャ協会理事として大会運営と審判統括を担当。16年7月より東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会のボッチャ競技スポーツマネジャーに就任する。

構成:スポーツナビ