東京オリンピック・パラリンピックについて1年程度延期、聖火リレー延期も発表されました。詳細な日程、選考基準などは公式情報が発表され次第更新します。

連載:スポーツマネジャーという仕事

サーフィン世界選手権での気付きを東京へ
“想定外”の経験で得た五輪成功のヒント

 東京オリンピック・パラリンピックを成功に導く重責を担う「スポーツマネジャー」。大会組織委員会内で各競技の運営責任者として、国内および国際競技連盟等との調整役を務めている。  サーフィン競技を担当する井本公文さんは最近、本大会に向けて大きな気付きを得たという。そのきっかけとなったのは、9月15日〜22日に愛知県田原市で行われた「2018ISA ワールドサーフィンゲームス」での経験。果たして何があったのか。井本さんに振り返ってもらった。

会長自ら本番会場でサーフィンも

本番会場となる千葉県一宮町の視察に同行した井本さん(右から3番目)。アギーレ会長(同4番目)は自らサーフィンをして波を確かめた 本番会場となる千葉県一宮町の視察に同行した井本さん(右から3番目)。アギーレ会長(同4番目)は自らサーフィンをして波を確かめた【Photo by Tokyo 2020】

 この秋は、日本のサーフィン界にとって大きな出来事がありました。サーフィンにおけるワールドカップに相当する「ワールドサーフィンゲームス(世界選手権)」が28年ぶりに日本で開催されたのです。日本からは男女計4人の選手が派遣され、団体で史上初の金メダル、個人では男子の五十嵐カノア選手が2位に入り、大会史上初となる日本のメダル獲得に現地は大いに沸きました。私自身、日本サーフィン連盟時代に強化部を立上げた経緯もあり、この結果は本当に感慨深いものがありました。  その少し前、東京でもオリンピックに向け、さまざまな進展がありました。まず、9月12、13日の2日間、来日した国際サーフィン連盟(ISA)のスタッフを交えたミーティングが実施されました。これは「IF(国際競技連盟)ビジット」と呼ばれるもので、定期的に来日するIFメンバーと組織委員会の各部署の人たちが、競技会開催に向けたさまざまな議論などを行うものです。  議題は多岐にわたりましたが、今回は特にオリンピック競技期間中に開催を予定している「サーフィンフェスティバル」について集中的に議論しました。サーフィンの競技会は、波を待つ時間があるので、競技会とは別に、飲食やイベントスペースが併設されることが多いということは前回お話ししましたが、今回の世界選手権でも、地元の食材を中心とした食事やステージパフォーマンスが披露され、観客から好評を博しました。オリンピックにおけるフェスティバルでも飲食やイベントスペースの設置を予定していますが、内容もビジュアルもこれまでのものとは全く異なるイメージになります。詳細はまだお話できませんが、ISAとともにサーフィンという競技を通じて、観客に何を伝えていくかを議論したところです。  今回のIFビジットでは、オリンピック会場である千葉県一宮町の釣ヶ崎海岸(通称「志田下」)の視察にも行きました。会場が決まってから初めて現地を訪れたフェルナンド・アギーレ会長は、毎朝欠かさずサーフィンをする人で、志田下はもちろん、愛知県田原市の世界選手権会場の近くでも、会長自ら「これからサーフィンしに行くぞ!」と私を同行させ、現地のポイントで波に乗り、サーフィンを楽しんでいました。世界選手権の真っ最中にもかかわらずこういった交流があるのは、サーフィン以外の競技ではなかなか見られない面白いところではないでしょうか。

台風で予定変更も 臨機応変な対応が求められる競技運営

 世界選手権期間中、私はISAと大会実行委員会とのつなぎ役として、競技時間の調整を行ったり、各所に決定事項を通達したりするなどの運営業務を行いました。オリンピック本番でもこういった役回りになるのではないかと思います。  想定外の出来事というのは、イベント運営の常ですが、今回の大会では、台風21号により関西国際空港が封鎖されるというまさに想定外のトラブルが起こりました。結果、各国選手団やスタッフの多くが急遽、成田空港から現地入りすることになり、実行委員会スタッフはアテンドのために空港まで行き、真夜中にホテルまで輸送するなどの対応に追われました。  また、オリンピックを控え、今回の世界選手権には例年よりも多くのスター選手が出場しました。その結果、海岸には想定以上の観客が集まることになり、競技を終えた選手と観客の区分けが不明確となるなど、セキュリティー関係で一部混乱が生じましたが、関係者間で協議し、対応を決めてなんとか無事に乗り切ることができました。このように大会の裏側では、さまざまなことが起こっていました。

自然を相手にするスポーツの難しさ

 今回の世界選手権を終えて、東京2020大会に向けて、スタッフを含めてしっかりとトレーニングすることが重要だなと、あらためて強く感じました。大きな競技大会を開催する際、あらかじめリハーサルとしてプレイベントが行われることがあります。オリンピックでも、本番を想定して競技運営などの各種テストを実施する「テストイベント」が行われる予定で、通常は大会までに1回実施されます。しかし、サーフィンは自然を相手にするスポーツなので、競技運営には天気や波の状況などに合わせたフレキシブルな対応が求められます。サーフィン競技の運営スタッフは大会運営をしっかりと経験して、ありとあらゆる不足の事態に対応できるようにしておきたいと思っています。 特にアウトドア競技ということで、海上における気象に関する知見を得ることが重要なのだなと痛感しました。組織委員会の中でも、今回の気付きをきっかけに、サーフィン競技の特性とそれに起因する課題が共有され、理解が深まったと思います。また、組織委員会内の他のチームでも「本番に向けてしっかりとテストしないといけない」という共通認識が生まれました。今後、しっかりとテストができるようスケジュールを組立てていく予定です。

ワールドゲームス前には、組織委員会にてISA担当者と打ち合わせを実施。本番に向けて引き続き調整を重ねていく ワールドゲームス前には、組織委員会にてISA担当者と打ち合わせを実施。本番に向けて引き続き調整を重ねていく【Photo by Tokyo 2020】

 2018ISA ワールドゲームスは、チームジャパンの活躍もあり、大いに盛り上がり、日本におけるサーフィンの競技会のポジションを今までより一つ上のステージに上げることができたと思います。ただ、その成功の裏には、大会を支えるスタッフの並々ならぬ苦労がありました。東京2020大会も、競技会を成功に終わらせるためには一筋縄ではいかないと理解していますが、ソフト面でもハード面でも最高の環境を用意して、選手たちを受け入れたいと考えています。東京から始まるオリンピックのサーフィン競技が何を発信していくのか、世界中から注目されることは間違いありません。そしてそれが2024年のパリ大会を経て、2028年のロサンゼルス大会にも引き継がれることを念頭において、もう一度気を引き締めて準備を進めていきたいと思っています。

プロフィール

井本 公文(いもと きみふみ) 1971年生まれ、静岡県在住。サーフィンとスノーボードの選手として全日本選手権に出場し、専門店も起業。サーフィンの審判員を経て、一般財団法人日本サーフィン連盟の理事に就任。チームジャパン代表監督として、世界選手権や世界ジュニア選手権に参加。日本サーフィン連盟副理事長、強化委員長を務めながら、17年7月より、公益財団法人東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会のサーフィン競技スポーツマネジャーに就任。

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