連載:モーリーが深堀り! 2020年とその後の日本

“持続的社会”の理念がレガシーになる
街づくり・持続可能性委員会 小宮山委員長に聞く(後編)

W杯では日本人サポーターの試合後のゴミ拾いが話題になった W杯では日本人サポーターの試合後のゴミ拾いが話題になった【写真は共同】

ジョブズが若者の一言で変えた改革

小宮山委員長 オリンピック・パラリンピックのキラーコンテンツの例が都市鉱山でのメダル製作です。それらを並べて、日本が持続性社会をどう見ているかを世界に伝えるのは良い構想だと思います。  その中の1つに海のマイクロプラスチック汚染の問題を入れてもいいかもしれません。私はそれを昔から心配していました。その理由として、物質はなくなりません。プラスチックの容器、コンビニのビニール袋など。そのようなものはゴミとなって分散しますが、100パーセントはリサイクルできません。そうすると、どうしても雨で川へ流れて、海に行き着きます。小さくはなりますけれど、すべては分解されません。水溶性ではありませんので。その物質を魚が食べてしまい、死滅してしまうという問題が発生しています。  これが今後、重要な問題を起こすか起こさないかは別として、環境に良くないことは明確です。プラスチックは、自動車のバンパーや窓枠、水道管などに大量に使われています。このようなものをすべて回収することは可能です。ですが、一般の消費者が使うものをすべて回収することは難しいでしょう。  ですから素材を“バイオデグラダブル”(生分解性)のものにできればいいのです。バイオデグラダブルな素材と言いますと、紙がそうです。紙は捨てても、数カ月もすれば分解されます。プラスチックもバイオデグラダブル素材のものがあります。ただ、値段が高いため、あまり使われていません。最終的には、消費者が使うものは製品自体をバイオデグラダブルのものにすべきだと思います。その前段階として、リサイクルに関するコンテンツをオリンピック・パラリンピックでやりたいですね。  委員会の中でもゴミゼロについての話をしています。それはスーパーやコンビニのお弁当の容器、ペットボトル、ビニール袋などですが、大きな企業の協力を得てやりたいところです。 モーリー 企業のPR効果としては、黒字になると思うので是非やって欲しいですね。大きなイメージアップにもつながると思います。  アップルの共同創業者のスティーブ・ジョブズさんが存命中の時、大学でスピーチをしている際、学生がパフォーマンスで「スティーブ、マックをリサイクルしてくれ」というメッセージを飛行機から送ったそうです。これはジョークで、ジョブズに「頑張って」と伝えたかっただけなのですが、実はその頃のマッキントッシュのパソコンはプラスチック製のものが主流でした。それが、廃棄の際にはフィリピンや中国へ運ばれて、薬品で溶かしたものを川に流していたという実態があったそうです。ジョブズはそのメッセージを受けて、2年以内にすべてのパソコンを金属にしてしまいました。今のマックは、その時若者に言われたことがきっかけだったということです。  ジョブズもできたわけですから、日本も徹底的にやればできるのではと思います。 小宮山委員長 日本はジョブズみたいな、いわゆる天才が引っ張る社会じゃないですよね(笑)。ですが民意がまとまると、それができます。サッカーW杯の時に、日本のファンがスタジアムのゴミを回収して世界から賞賛されましたが、あのようなことを私はできると思います。 モーリー 日本は集団行動が上手いですからね。何かをやるとなったら緻密にやる国民性があります。それを例えば3R(リデュース、リユース、リサイクル)に向ければ、実現できるでしょう。

世界の中では飲み水問題も抱える国も多いので、日本の水道水が美味しいことも世界へのアピールにつながる 世界の中では飲み水問題も抱える国も多いので、日本の水道水が美味しいことも世界へのアピールにつながる【岡本範和】

「水道水が美味しい」ことも東京のアピールに

小宮山委員長 今欧州で言われている“サーキュラー・エコノミー”()については、日本ではいち早く取り組んでいました。日本の3Rは循環型社会を目指し、プラスチックの場合は、燃やす際にきちんとエネルギーを回収するプロセスを取り込んだり、物質としてリサイクルするプロセスを取り込んだりしています。それぞれ熱リサイクルと物質リサイクルと呼んでいますが、これらは等価であるという極めて高いコンセプトを打ち出しています。このような活動もオリンピック・パラリンピックの際に実践したいです。 サーキュラー・エコノミー…一般的な消費に関する経済活動だけではなく、消費に関わる資源を循環させることも経済活動に取り込むビジネスモデルを作るという新しい概念。資源のムダ使いや、まだ利用できる資源を再利用するなど、ムダな部分を活用し、そこから利益を生み出す考え方。 モーリー こういうものはオリンピック・パラリンピックを開催した際に、日本の美意識として、1つの隠れコンテンツとなるかもしれませんね。またそういう生活の部分で言いますと、東京の水道水が美味しいということもアピールしてもいいかもしれません。 小宮山委員長 確かに、蛇口をひねって出てきた水を飲める国というのは、少ないですからね。 モーリー 世界全体で見ると『飲み水危機』も叫ばれていまして、水源が枯渇しているところもあります。ですから、水が美味しいというのは、外国人へのアピールにもなります。  また外国人が泊まるホテルで受けがいいのは、古民家の梁(はり)です。あのように木を露出させた部屋だと外国人は「木が感じられて良い」と喜んでくれます。木々が好きなんですよね。木材を使った建築様式とか。古民家のリユースは、その心意気が大好きだったりします。それと日本人が魚を食べる時、サンマなどをとてもキレイに食べますよね。ワタの部分もしっかり食べて、あの部分は欧米人では「黒いから嫌だ」と食べない人もいます。これを知った時、実はそういう部分にも日本人の3Rの精神が入っているのかなと思いました。 小宮山委員長 今おっしゃったようなことも考えた方がいいかもしれません。例えば選手村に、「水道水が飲めます」と掲示してもらうとか。日本では当たり前のことかもしれませんが、世界の人がたくさん日本を訪れて、常識が違うわけですから、しっかりと伝えなければ通じません。日本人として意識しなくてもできていることを、世界に示していけたらいいですね。

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構成:スポーツナビ

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