連載:モーリーが深堀り! 2020年とその後の日本

五輪ムーブメントによる地方創生への道
経済・テクノロジー委員会 大田委員長に聞く (後編)

「アクション&レガシープラン」の経済・テクノロジー委員会・大田委員長(右)とモーリーさんの対談。日本の未来により深く切り込んでいく 「アクション&レガシープラン」の経済・テクノロジー委員会・大田委員長(右)とモーリーさんの対談。日本の未来により深く切り込んでいく【写真:築田純】

 開催まで2年を切った東京オリンピック・パラリンピック。“世界的スポーツの祭典”が近づくにつれ、東京の街、そして日本全体も徐々に変わっていく。  東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会では、「アクション&レガシープラン」として、オリンピック・パラリンピックを東京で行われる世界的なスポーツ大会としてだけでなく、2020年以降も日本や世界全体へ様々な分野でポジティブな“レガシー(遺産)”を残す大会として“アクション(活動)”していく計画を立てている。  タレント・ジャーナリストのモーリー・ロバートソンさんが、「アクション&レガシープラン」のキーパーソンに直撃レポートする今回の企画。第1回のアクション&レガシープラン「経済・テクノロジー」委員会の大田弘子委員長との対談の後編。20年以降の日本の未来へ、より深く切り込んでいく。

中高生の生徒によって撮影された企業紹介ビデオは、新しい角度の視点があって面白かったと話す大田委員長 中高生の生徒によって撮影された企業紹介ビデオは、新しい角度の視点があって面白かったと話す大田委員長【写真:築田純】

地方を中高生が紹介する優位点

――日本が多様性を受け入れるためには、子どもたちが鍵になるということでした。 モーリー・ロバートソン(以下、モーリー) 子どもたちの交流となると、オンラインとなりますから、ソーシャルメディアも使いながらになりそうですね。(地方の魅力を伝える映像製作の)プロジェクトをしているうちに、多分、遊び感覚で身につけていくのだと思います。日本の若い人たちは非常に絵がうまくて、ダンスもうまいですよね。そういうものを動画で撮影したら、海外でも盛り上がって世界中に広がりそうですね。 大田弘子委員長(以下、大田委員長) 経済・テクノロジー委員会のメンバーである榎田竜路さん(Earth Voice Project代表)が映像言語を使ってコミュニケーションするアプローチを研究されていて、中高生にその方法を教えて下さっています。そして自由に映像を撮ってもらうことで、とても良いフィルムが撮れており、それで各地方を紹介しています。 モーリー 学んだ子どもたちは、大人になったらドキュメンタリー映像にも強くなりそうですね。(笑) 大田委員長 彼らが各地方の企業紹介をしたビデオを見ましたが、本当に新しい角度が出ています。最初はその企業を知らなくても、撮影を通して企業に触れていくことで、魅力を感じ取り、それをそのまま伝えているんです。 モーリー 若い人たちは柔軟なので、良いスパイラルが生まれると本当に面白くなっていきますね。もちろんソーシャルメディアというのは動きが早くて、さらに構造の中に制約があるので、意見がぶつかりやすかったり、分極化しやすかったりします。価値観が固まっている大人が使えば使うほど、ケンカが起こりやすいというのが、私の経験値です。ですが、柔軟な人ほど、テクノロジーやデジタルを使ったときに、ポジティブで、楽観的な結果が期待できると思います。  あと中高生が活動されているという話を聞いた時、どこの地方にも中高生はいるんですよね。働き手がいなくなっても、中高生とお年寄りは残っています。必ずいるので、すごく貢献する役割を担えるように思えます。

福井の鯖江市では“鯖街道”を復活させる取り組みなど、地方創生の活動も行われている 福井の鯖江市では“鯖街道”を復活させる取り組みなど、地方創生の活動も行われている【写真は共同】

地方の中小企業を世界に発信する機会に

モーリー 1つ言い添えたいことがあります。例えば私のイメージとして、関西であれば、みんなが京都や大阪に働きに出てしまうため、その周囲の土地では就職率がガタッと落ちています。何が問題なのかと言うと、そもそも鉄道が走っていなかったりして、大阪に来たインバウンド(訪日中の外国人観光客)の方たちが行けなかったりもします。環境は最高なのですが……。  例えば福井県などにもなかなか行けないですよね。これを中高生に課題解決をしてほしいとは言えないですが、それができるようになったら地方創生につながるようになると思います。素晴らしい福井の海岸線や、ランドスケープがすぐ先にあるのに、最初の1マイルが難しいと……。 大田委員長 やはりまずは働く場がないと、なかなか活気が出てこないですよね。政府も地方に雇用の場をと言っていますが、なかなかそれができていない状況です。そのため、高齢化が進み、人口も減り始めています。単に観光だけではダメで、ましてやインフラ整備だけでもダメだと思います。  今回、オリンピック・パラリンピックを契機に、「中小企業世界発信プロジェクト2020」というのを行っています。日本の中小企業の中にはかなり優れた、技術を持っているところが多いです。これを世界に伝えていくというプロジェクトです。今、多くの中小企業の社長が高齢化しており、事業を引き継ぐタイミングを迎えています。いかにその事業を若い層に引き継ぐか。ここが大きな課題になっています。 モーリー 鳥取県などでは、元々、限界集落に近づいていた地域で、廃校になった小学校をリノベーションし、主にITや流通系ベンチャー企業などを呼んで、非常に平均年齢が若い小さなコミュニティができているそうですね。また地元のお年寄りをバスで迎えに行き、体操をする会のような交流をしているとのことです。 大田委員長 そういう成功例はいくつもあります。先ほど例に出された福井にもものすごく良い産業の拠点があります。鯖江市は眼鏡の製造で有名ですし、水産業でも昔の福井と京都を結んだ“鯖街道”を復活させる取り組みが始まっています。鯖はとてもヘルシーで美味しいと、最近人気があるのですが、鯖寿司で伸びている大阪の新しい企業とタイアップして話題になっています。  こうした活動を点ではなく、面にしていきたいものですね。今はデジタル化で場所を選ばずに起業できるので、中小企業でも世界に発信し、グローバル化することができます。

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構成:スポーツナビ

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