連載:スポーツマネジャーという仕事

東京五輪で“サーフィンフェス”開催へ
「リラックスして見に来て」担当者の思い

 東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会には、「スポーツマネジャー」と呼ばれる人たちがいる。各競技の運営責任者として国内および国際競技連盟等との調整役を務め、大会を成功に導く重要な責務を担っている。スポーツナビでは、奮闘する彼らの手記を「スポーツマネジャーという仕事」として紹介する。  今大会の追加種目であるサーフィンを担当するのは井本公文さん。サーフィン競技は、東京大会で初開催となることはもちろん、波を待つ時間も楽しむことができる「サーフィンフェスティバル」が開催されることでも注目されている。「オリンピック」と「フェスティバル」、一見相いれないようだが、井本さんはどのような大会にしようとしているのか。

最初の仕事は“サーフィンを知ってもらうこと”

追加種目として注目を集めるサーフィン。技の素晴らしさや選手同士の駆け引きも魅力だ 追加種目として注目を集めるサーフィン。技の素晴らしさや選手同士の駆け引きも魅力だ【Getty Images】

 サーフィン担当の井本公文です。これまで一般社団法人日本サーフィン連盟(以下、NSA)の一員として国際大会の招致・運営を行ったり、コーチとしてナショナルチームの指導を行ってきました。昨年7月に現職となり、国際サーフィン連盟(以下、ISA)やNSA、各サーフィン団体と連携して、運営準備を進めています。  サーフィンは一定時間内に複数人で行う採点競技で、マニューバ(ライディング中の動き)の難易度、革新性、過激さ、力強さ、スピード、そして組み合わせなどの項目の合計点で競います。技の素晴らしさはもちろんですが、波が良ければ良い点が出やすいので、その波の選び方や選手同士の駆け引きが主な見どころになります。  私がこの仕事に就いてまず力を注いだことは、日本のオリンピック関係者に“サーフィンを知ってもらうこと”でした。例えば野球だったら、ファンはずっと座って観戦しますよね? でも、サーフィンでは砂浜でくつろいで観戦したり、あちこち移動して、出店でサーフィングッズを物色したり、食べ物や飲み物を買いに行ったりしながら、好きな選手の演技の時は砂浜で見るという感じなんです。実際、国内の大会やサーフィン関連のイベントなどに関係者を連れて行くと、観客が自由に動いているのを見て驚きます。「サーフィンって、観客席に座って見るんじゃないんだ!」と。そういった観客の過ごし方、サーフィンの大会運営については、少しずつ皆さんに理解していただければ良いなと思っています。  組織委員会では、競技日程、大会施設、宿泊の手配、輸送、ボランティアの手配など、さまざまなチームと調整を重ねていますが、なにしろオリンピックでは初めて開催される競技なので、今からオリンピックに準じたルール(仕組み)を作らなければいけません。そこに既存の競技と違った、サーフィンならではの大会のあり方や考え方を理解してもらう難しさがあります。  一例を挙げると、サーフィンでは選手の控室を海が見える前面に配置します。というのも、選手は海の様子をずっと見ながら、練習のタイミングを自分で決めて、試合時間になったら自ら海に入らないといけないからです。でも、他競技では会場が見えない場所に控室を作るらしく、サーフィンも「控室は後ろでいいのでは」と提案されました。そこで「選手は海を見ていないといけないので」と伝えたら、「他の競技は後ろだから」と言われて、「いやいや、そうじゃないんです」と。もちろん結果的には、理解していただけたのですが、自分にとっては常識だと思っていたことを、あらためて説明しなければならない難しさがあって、なかなか大変ですね。

屋台、ライブ……フェス的要素も“競技の一部”

国際大会では連日多くの人が集まる。世界最大のサーフフェス「USオープン」は1日10万人が訪れるという 国際大会では連日多くの人が集まる。世界最大のサーフフェス「USオープン」は1日10万人が訪れるという【Getty Images】

 2020年の本番では、競技が行われる7月26日〜29日を含めた8日間、「サーフィンフェスティバル」を開催する予定です。  サーフィンの国際大会では、試合を楽しんでもらって、休む場所があって、食事ができて、また海に戻ってくるというのが主流です。特に世界最大のサーフィンフェス「USオープン」は1日10万人が訪れるのですが、スケートボードやBMXの大会もやっていて、出店やレストランがある。その中にはもちろん、サーフミュージックのライブがあり、オーガニック食材を使った料理も食べられますし、ヨガなども体験できます。東京大会では、こうしたサーフィン文化を広めるためにも、日本ならではのフェスティバルをやりたいと思っているんです。  私としては、フェスティバルっぽくしたいというよりは、フェスティバル自体が“競技の一部”といった感覚です。サーフィンとフェスティバルがなぜ一緒に行われるようになったのか? その正確なルーツは分かりませんが、波がない時に、持参したギターで即席ライブをしたのが始まりという説もありますし、海の周りはなかなか店舗がないので、屋台が出るようになって、それが広がってフェスティバルになったという説もあります。大会に出店があって、音楽ライブが行われたり、飲食のブースがあったりというのが、国際的なサーフィンの文化なんです。  ただ、日本では大規模なサーフィン大会が少なく、サーフィンフェスティバルは浸透していません。もちろん、できることにも限りがありますので、どこまでできるかは模索中ですが、そうしたサーフィン文化も含めて、関係者に説明していくことも私の仕事だと思っています。観客の皆さんも「海に遊びに来ました」くらいの感じで、リラックスしてサーフィンを含めた空間を楽しんでほしいですね。  大会まであと2年となりましたが、会場の配置や規則などの調整にもう少し時間がかかりそうです。サーフィンは、自然環境によるところが大きくて、波がないとできませんし、それに合わせていろいろと準備をしていかなければいけないのが一番難しいかもしれません。でも、本番に向けて、世界中から来た方々に「やっぱり東京ってすごいね!」と言われるような大会にしたいですね。ISAと協力しながら、新しい価値、東京ならではの空間を創出していきたいと思います。

プロフィール

   【スポーツナビ】

井本 公文(いもと きみふみ) 1971年生まれ、静岡県在住。サーフィンとスノーボードの選手として全日本選手権に出場し、専門店も起業。サーフィンの審判員を経て、一般財団法人日本サーフィン連盟の理事に就任。チームジャパン代表監督として、世界選手権や世界ジュニア選手権に参加。日本サーフィン連盟副理事長、強化委員長を務めながら、17年7月より、公益財団法人東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会のサーフィン競技スポーツマネジャーに就任。

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