東京五輪の金候補がパラ走幅跳にいる?
目指すは“世界記録”8m95超え

3年ぶりの世界記録更新

8日に開催されたジャパンパラ陸上競技大会で男子走り幅跳びの世界記録を3年ぶりに更新したマルクス・レーム
8日に開催されたジャパンパラ陸上競技大会で男子走り幅跳びの世界記録を3年ぶりに更新したマルクス・レーム【写真は共同】

「8メートル47」。

 2018年7月8日、群馬県前橋市で開催されたジャパンパラ陸上競技大会の男子走り幅跳びで、ドイツのマルクス・レーム(下肢切断などT64)がたたき出した、世界新記録だ。15年にカタール・ドーハで行われたパラ陸上の世界選手権で自身が出した8メートル40の記録を、3年ぶりに更新した。

 レームは、右足下腿義足のパラアスリートである。14歳のとき、ウェイクボードの練習中にモーターボートのスクリューに右足を巻き込まれ、ひざから下を切断した。もともと幼少時から陸上競技で走り幅跳びをしていた経験はある。パラアスリートとして、再び走り幅跳びに挑戦したのは、事故から5年ほどたった時のことだ。

「義足で初めて走った日に、顔に当たる風を感じた。走れることに、すごく喜びを感じられた」

 そうして、パラ陸上に取り組み始めると、メキメキと頭角を表す。09年に国際大会にデビューし、初めて出場したロンドンパラリンピックの走り幅跳びでは7メートル35で金メダルを獲得した。

五輪でもメダル獲得に近い記録

ロンドン、リオとパラリンピック2連覇を達成しているレームは、五輪の出場も目指している
ロンドン、リオとパラリンピック2連覇を達成しているレームは、五輪の出場も目指している【写真:アフロ】

 その後も快進撃は続き、14年には一般の陸上競技のドイツ選手権に出場し、8メートル24をマークして優勝。すると、称賛はたちまち疑念の声に変わった。

「カーボン製の競技用義足は跳躍に有利なのではないか」

 ロンドン五輪には、南アフリカの両足下腿義足の陸上選手、オスカー・ピストリウスがパラアスリートとして初めて出場し400メートルで準決勝進出を果たしている。レームもまた、16年のリオデジャネイロ五輪出場を目指していた。しかし、国際陸上競技連盟から「義足の優位性がないことを証明しなければ、五輪出場は許可できない」という条件が出され、リオ五輪への出場を断念している。

 五輪後に行われたリオパラリンピックで、レームは8メートル21を跳び、2連覇を果たした。

 ちなみに、ロンドン五輪の男子走り幅跳びで金メダルを獲得したグレッグ・ラザフォード(イギリス)が出した記録は8メートル31、同じくリオ五輪ではジェフ・ヘンダーソン(米国)が8メートル38で金メダルを獲得。15年のパラ陸上でレームが出した8メートル40は、それを上回る。五輪への出場が実現すれば、五輪でのメダルの可能性は非常に高いのである。

宮崎恵理
東京生まれ。マリンスポーツ専門誌を発行する出版社で、ウインドサーフィン専門誌の編集部勤務を経て、フリーランスライターに。雑誌・書籍などの編集・執筆にたずさわる。得意分野はバレーボール(インドア、ビーチとも)、スキー(特にフリースタイル系)、フィットネス、健康関連。また、パラリンピックなどの障害者スポーツでも取材活動中。日本スポーツプレス協会会員、国際スポーツプレス協会会員。著書に『心眼で射止めた金メダル』『希望をくれた人』。