リオ→東京で目指す「パラは特別」の打破
パラ水泳・山田拓朗×一ノ瀬メイ

グラフィックマガジン『GO Journal』2号発刊イベントに登場した(左から)山田、一ノ瀬
グラフィックマガジン『GO Journal』2号発刊イベントに登場した(左から)山田、一ノ瀬【スポーツナビ】

 2020年東京五輪・パラリンピックの開催が決まって以降、日本各地でパラスポーツに関するイベントが行われてきた。しかし、まだまだパラスポーツ観戦について「障がい者はかわいそう」「なじみが薄い」「そもそも分からない」「スポーツの興奮がない」などといった“先入観”が存在しているのは確かであろう。

 リオデジャネイロパラリンピックで水泳競技に出場した一ノ瀬メイ(近畿大)は自身の経験からこう訴える。

「パラの場合、『水泳をしたい』と思って、スイミングスクールに普通に通うことができる環境がないんです。障がいを持った子でも、始められる環境が健常者と同じく整っていれば、パラの競技人口がもっと増えて、もっとレベルの高い戦いになっていくのかなと思う。『水泳を始めたい』と思った子が、特別何かしてくれるとかじゃなくて、普通に通える、始められる環境が整ったらいいなと思います」

 パラだから特別なことではない――競技をする者としての訴えは、“先入観”を打ち破って、スポーツとして横並びに見てほしいという思いがこもっている。

 パラスポーツを支援する「日本財団パラリンピックサポートセンター」と、写真家の蜷川実花さんは、パラスポーツを取り巻く“先入観”を揺さぶり、転覆させるためのグラフィックマガジン『GO Journal(ゴー・ジャーナル)』を発行している。その2号完成を記念してのトークショーがこのほど行われ、2号に出演した一ノ瀬と、リオ大会50メートル自由形(S9クラス) 銅メダリストの山田拓朗が、パラアスリートの日常と開催まで2年を切った東京大会への目標を語った。

義手を付けてのトレーニングで体幹アップ

イベントでは、練習環境などの話とともに、蜷川さんとの撮影秘話も。2人とも慣れない撮影に苦労したようだった
イベントでは、練習環境などの話とともに、蜷川さんとの撮影秘話も。2人とも慣れない撮影に苦労したようだった【スポーツナビ】

――2人ともS9クラスで種目が同じですが、何か共通点を感じる部分はありますか?

一ノ瀬 私はパラリンピックを目指し始めたのは、拓朗さんを知ってからです。小学校低学年の時に、自分が通っていたプールの職員さんに「13歳で同じ片腕が短い子がパラリンピックに出るんだよ」と聞いて、「そんな人がいるんだ」「自分も行ってみたいな」と思ったのが最初です。

山田 僕もそれはメイ本人から聞いて知っていたので、後輩の中でも特に「気にしていた後輩」ということになりますね。

一ノ瀬 その時を思い出すと、とても不思議ですけど、2010年で初めて代表入りして、そこからもう8年経つので、今はもちろん憧れであるのは変わりないですけれど、言い方が悪いのですが慣れもあります(笑)。

――S9クラスは世界にライバルが多いクラスだと聞きました。山田選手は世界の選手とも切磋琢磨(せっさたくま)するシーンをリオのレースでも見ましたが、世界の選手は強いという印象ですか?

山田 そうですね。僕たちのクラスは、10クラスあるうちの軽い方から2番目のクラスで、比較的障がいの種類が少ない。どちらかというとフェアな部類に入るクラス。その分、人数も多いですし、毎回気の抜けないレースになるので、そういう意味では厳しいですが、僕としてはやりがいもあるので、楽しいクラスかなと思います。

――どんなトレーニングをされているのでしょうか?

山田 水の中で行うスポーツなので、より不安定なところで自分の体をコントロールするということが大切です。僕らのような片腕の場合だと、よりバランスを取るのが難しくなりますし、またバランスを取ることに力を使いすぎると、スピードを出すなどに力を使うことができなくなります。なるべく意識せずに、力を使わないようにバランスを取ることができるような体幹というか、バランス感覚が他の選手と比べて重要になるクラスだと思います。自分自身もそこは重点的に(トレーニングを)やっています。

一ノ瀬 特に付け足すことはないです(笑)。大学に入ってからトレーニング用の義手を作っていただいて、4年間、ウエートトレーニングもやっています。これまで、泳ぐだけだと、どうしても左手の方に負荷がかかるので(生まれつき右肘から先がないため)、左手の方がどんどん発達し、右が細いままでアンバランスだったんです。義手をつけてチューブを引っ張ったり、ベンチプレスをしたり、懸垂もしていて、それによって左右のバランスも整って、より一層パワーアップしたと思います。

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