試行錯誤でたどり着いた“現在地”
初戦で2m30越えした走高跳・戸邉直人

男子走高跳で日本歴代3位タイの2m31の自己ベストを持つ戸邉直人。今季は“2m30越え”を久々に達成している
男子走高跳で日本歴代3位タイの2m31の自己ベストを持つ戸邉直人。今季は“2m30越え”を久々に達成している【写真:ロイター/アフロ】

 男子走高跳で日本歴代3位タイの2m31の自己ベストを持つ戸邉直人(つくばツインピークス)。屋外シーズンの初戦となる4月22日の筑波大競技会で、2m30をクリア。2014年9月以来、通算5度目の“2m30越え”を果たした。プロ1年目だった14年は、自己記録を含めて2m30以上を4度成功するなど絶好調だった。しかし、15年は北京世界選手権にも出場したもののケガが相次ぎ、16年も春先に左ふくらはぎを痛めてリオデジャネイロ五輪出場を逃し、昨年も低迷していた。そんな中で、華麗なる復活を遂げた26歳が今季、そして2020年の東京五輪に向けた“決意”を語った。

14年9月以来となる2m30の成功

シーズン序盤で課題を見つけ、修正を図っている
シーズン序盤で課題を見つけ、修正を図っている【写真:ロイター/アフロ】

 1月下旬からの約1カ月間で、戸邉は欧州での室内大会3試合に出場した。「シーズンに入るにあたり体の状態が良かった」ことから、「2m30を跳んで、世界室内選手権(3月上旬/英国・バーミンガム)の標準記録に挑戦できれば」と考えていたという。

 しかし、結果的には初戦から2m20、2m24、2m26。「徐々に上げられた点は良かったけれど、記録としては満足できるものではなかった」と振り返る。ただ、その3戦を通して、課題が明確になるという収穫もあった。

「例年は室内シーズン終了後に帰国し、いわゆる冬季練習のような体力的に高めるトレーニングをしていました。でも、今年は室内で技術的な課題がはっきりしたので、その改善のために体力強化より技術練習を中心に取り組むことにしました。また、ここ2年は屋外のシーズンベストが2m25〜26でしたから、少し違うアプローチをしてもいいのかな、という思いもありました」

 大きな改善点として、助走を7歩から9歩に変えた。その意図を戸邉は「室内をやっていて、7歩助走では十分に加速するのが難しかった。踏み切りへの入りづらさを感じたので、もっとスピードを持って入れるようにするために2歩延ばしました」と説明する。

 そうした試みは、屋外シーズンの初戦となる4月22日の筑波大競技会で、さっそく一つの成果として現れた。2m15、2m20、2m25をすべて1回でクリア。「2m25ぐらいを跳べれば、初戦としては良い入り」と考えていた戸邉だったが、自らが定めた基準をいとも容易く乗り越えた。

 その後、2m30は2回失敗したが、「感触は悪くなかった」という。「その日は全体的に踏み切りが近く、(身体が)上がっていく時にバーに当たる失敗があったので、踏み切りを少し遠くにして余裕を持って入れるように修正しました」と柔軟かつ高い対応力も発揮し、3回目の跳躍で実に3年7カ月ぶりとなる高さを成功させた。

「屋外の今季初戦だったので、記録を狙ってというよりは、状態を確認する意味合いが強くて、その中でやってみたら跳べてしまった。思いのほか跳べたという感じです」

 そう語る戸邉はこの日、06年に醍醐直幸(富士通)が作った日本記録(2m33)の更新を狙って2m34にも挑戦。クリアこそならなかったものの、成功の可能性を感じさせる跳躍を見せた。「今までの競技人生で、シーズン初戦で跳んだ高さがシーズンベストになったことはない。その感じなら今季はもっと行ける気がしています」と、今季への確かな手応えをつかんでいる。

月刊陸上競技
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