霞ヶ浦で気軽に「パラカヌー体験」を
地域と協力してつくる東京2020レガシー

霞ヶ浦にできた「パラカヌー」の新拠点

 東京2020のその後に、最高の遊び場と仲間を増やしたい。
 オリンピック・パラリンピックともに、2年後の東京大会での実施が決まっているカヌー競技。東京での祭典を2年後に控えた2018年4月、健常者カヌーに加え障がい者カヌー(以下、パラカヌー)を体験できる「パラカヌーの新拠点」が霞ヶ浦の湖畔にあるラクスマリーナ(茨城県土浦市)につくられた。
 自国での大会を前に選手強化の場所として……と思いそうだが、今回の新拠点のポイントは、パラカヌーの選手たちもそうでない人も、「誰でも気軽にパラカヌーを楽しめる環境」というところにある。同施設には日本障害者カヌー協会が保持する競技用とレジャー用カヌーが備えられ、事前に協会に問い合わせて予約をすれば、競技者ではなくともパラカヌー体験ができる。

誰でも気軽にできる場所に

茨城県の霞ヶ浦にできた「パラカヌー」の新拠点。健常者、障害者関係なくカヌー仲間が集まる未来を描いてつくられた。写真手前はパラカヌーの競技艇を乗りこなす、中学3年生の増田汐里さん
茨城県の霞ヶ浦にできた「パラカヌー」の新拠点。健常者、障害者関係なくカヌー仲間が集まる未来を描いてつくられた。写真手前はパラカヌーの競技艇を乗りこなす、中学3年生の増田汐里さん【スポーツナビ】

 協会の吉田義朗会長は、元々は京都や奈良を中心に関西圏で活動。関東でも活動を広げるにあたり課題を感じていた。
「関東で活動して思ったのは『関東にはまだまだ障がいを持つ人たちがカヌーに乗れなくて、どこに行けばいいんだろうと思っている』という事です。1週間に2〜3件は問い合わせが事務所にきます」

 課題を解決すべく、都内を含めた関東で活動拠点探しをスタート。施設見学、パラカヌー体験会などを実施し、最終的にこの場所を新拠点に決めた。
 ラクスマリーナがある茨城県の土浦駅と言えば、東京駅からだと電車で1時間から1時間半。近いと言えば近いし、遠いと言えば遠い。それでもここを拠点にする事の良さは、十分にあった。

 協会事務局長の上岡央子さんは、選定理由を挙げた。
「障がい者の方がどういう行動をしてカヌーに乗りにくるかを考えたら、公共交通機関を使える事、そして誰もが来やすい場所であるという事(が条件になった)。この場所は土浦の駅から歩いて来られるような近さで、車いすでもなだらかな道を通って来られます」

 カヌーは自然の中で行うスポーツ。それだけに体験や競技ができる施設は、移動手段が車に限られるような山奥の場所や、都市部だとしてもアクセスしづらい場所にある事が多い。電車などの公共交通機関で移動できたとしても課題はある。過去には大会会場の最寄り駅に車いすが使えるエレベーターがなく、結果的に選手たちが電車を使えない状況になった事もある。その点でここは、駅には車いすが使えるエレベーターがあり、比較的なだらかで整備されたアスファルトの道を通って水辺まで来られるため、拠点として適していた。

実は大事なトイレ問題

現役日本代表の小山真さん。カヌーの魅力は「水上に出てしまえば、バリアフリーを心から感じられる。水上から見る景色もすごく素晴らしくて大好きです」と話す
現役日本代表の小山真さん。カヌーの魅力は「水上に出てしまえば、バリアフリーを心から感じられる。水上から見る景色もすごく素晴らしくて大好きです」と話す【スポーツナビ】

 またこのマリーナには、事務所に1つ、水辺の艇庫の並びに1つ、車いすでも使える多目的トイレがある。水辺の近くにある事は“気軽に”楽しむためにかなり重要なポイント。
 現日本代表で世界選手権出場経験もある小山真選手は、車いすで行動する上で「これだけ水辺からすぐのところにあると便利ですね」と話す。

「(トイレが遠いと)いったん着替えて、トイレに行って、また水上に戻って(の動きになる)。試合のときは、常に時計を見ながら『試合の何分前だから、何をやって、次は何をやって』と、自分の中でルーティンを全部組んでやらないといけない部分があります」

 障がいの有無にかかわらず水辺のトイレ問題は恐らく共通。移動手段が車いすの場合は、さらに動きに時間がかかる事は想像に難くない。トイレが遠い場所にしかないと、「行きたくなってからだと間に合わない」という気掛かりができてしまう。その気掛かりを少しでも減らす環境づくりは、 楽しく安心してパラカヌーを楽しむために大事なポイントなのだ。

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