五輪中間年は挑戦のチャンス
競泳日本選手権で見えた「準決勝活用法」

出場4種目すべてで日本新記録を出した池江璃花子 出場4種目すべてで日本新記録を出した池江璃花子【写真:中西祐介/アフロスポーツ】

 今年は五輪から2年、次の五輪の2年前となる、いわゆる『中間年』と呼ばれる年だ。この中間年に開催される第13回パンパシフィック水泳選手権(東京・東京辰巳、以下パンパシ)と、第18回アジア競技大会(インドネシア・ジャカルタ、以下アジア大会)の代表選手選考会を兼ねた、競泳の第94回日本選手権が4月3〜8日の日程で行われた。  5月24〜27日に行われるジャパンオープン2018での『追試』も残っているが、現状、パンパシには男子12人、女子10人の合計22人が選ばれ、アジア大会には男子13人、女子10人の合計23人が選出された。  今大会は、背泳ぎ、平泳ぎ、バタフライの50メートル、そして男子800メートル自由形と女子1500メートル自由形を除く種目で、準決勝システムを採用した。準決勝は世界選手権(以下、世界水泳)、そして五輪でも同じように行われる。19年の世界水泳(韓国・光州)、ひいては2020年東京五輪を想定したシミュレーションができる大きなチャンスでもあった。その大切さを知っている選手は、やはり準決勝をうまく利用して勝ち抜いていたのである。

準決勝でのチャレンジが好記録につながった池江

 その選手が、池江璃花子(ルネサンス亀戸)と瀬戸大也(ANA/JSS毛呂山)のふたりだ。  池江は50メートル、100メートルの自由形とバタフライに出場しており、そのすべてで日本新記録を樹立して4冠を果たすという偉業を成し遂げたが、なかでも100メートル自由形の準決勝の使い方が見事だった。女子100メートル自由形予選、準決勝が行われたのは、大会5日目。池江のレースはこの100メートル自由形のみだったので、準決勝で一度、全力を出す選択をして、ひとつチャレンジをしてみたのである。  それは、前半から攻めてみること。事実、準決勝では前半を25秒85という速いタイムで折り返した。その影響で、後半は少し失速。それでも53秒46の日本新記録を樹立するところは見事ではあるが。  その結果を受けて、決勝では前半を26秒09で折り返す。すると、後半のラスト25メートルからのスピードの乗りが準決勝とは全く異なっていた。衰えるどころかさらに加速しているようにすら見え、53秒03の日本記録を更新して優勝を果たす。準決勝と決勝の後半のラップタイムを比較すると、準決勝は27秒61、決勝ではなんと26秒94だった。  池江は今年の2月、200メートル自由形で1分55秒04という日本記録を樹立しており、スタミナには自信があった。だが、準決勝では思ったように後半の伸びが得られなかった。だから決勝では気持ち楽に前半を泳ぎ、後半に入って徐々にスピードを上げるという選択をすることができた。準決勝で、一度前半から突っ込むというレースをしてみたからこそ、立てることができた決勝の作戦だった。

準決勝で不安を払拭 自信を持って決勝に臨めた瀬戸

大会前に不安を口にしたものの、代表に入るレースをした瀬戸(右) 大会前に不安を口にしたものの、代表に入るレースをした瀬戸(右)【写真:西村尚己/アフロスポーツ】

 瀬戸の場合は、池江とは違う準決勝の使い方をしていた。  大会前から「不安がある」と、珍しくネガティブな発言が目立った瀬戸。「気を抜くと代表に入れないかもしれない。大会の初日からレースがなくて良かったです」とまで話していた。  大会3日目に瀬戸は今大会初レースを迎えた。しかも、200メートルの個人メドレーとバタフライの2種目。予選と準決勝が行われる日は、4本も泳がなくてはならず、体力的にも厳しい状況だが、2種目とも順当に決勝に進出。そして大会4日目に行われた決勝で、2種目とも代表派遣標準を突破して2位に入ったのである。決勝のレース後、瀬戸はこう話していた。 「準決勝を泳いだ後、もう大丈夫だと思いました。調子が悪くても、コツコツ冬場に練習を我慢して取り組んできた成果は、しっかり出ていると感じたので」  おそらく今大会、準決勝システムがなかったら、瀬戸は不安なまま決勝レースを迎えなくてはならなかったことだろう。200メートル個人メドレーでは藤森太将(木下グループ)というライバルがおり、200メートルバタフライには幌村尚(早稲田大)に坂井聖人(セイコー)といった、自分よりも速い自己ベストを持っている選手がいたため、不安を抱えたままだと、いくら瀬戸といえども代表落ちという憂き目にあっていたかもしれない。だが、代表入りが決まる決勝レースの前に準決勝というワンクッションがあったことで、瀬戸は自信を取り戻すきっかけを得たのである。

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