金メダル後の“燃え尽き”から次の一歩へ
バド・タカマツ「苦しく、意味ある1年」

勝っても負けても応援してくれる人たちがいる

モチベーションの維持に苦しみながらも、来季へは「今年1年を終えて、心の奥底から気持ちが出てきていると感じています」と話す高橋
モチベーションの維持に苦しみながらも、来季へは「今年1年を終えて、心の奥底から気持ちが出てきていると感じています」と話す高橋【スポーツナビ】

――モチベーションの部分で大変苦しんだ1年。その中でも戦い続けたわけですが、9月にスーパーシリーズのダイハツヨネックスジャパンオープンを優勝したときには、相手を見てプレーを選択することができるようになったと手応えを話していました。技術や戦術面での向上などの手応えは得られたでしょうか。

松友 苦しい中でも互いにいろいろと考えてプレーしていました。1年を通してと言われると、気持ちの部分も含めて、うまくいかなかったことはたくさんあります。でも、今まで勝てなかった相手に勝てたときなど良い試合ができていたときは、今までとはまた違った感覚もありました。覚悟が決まって、今年とは違う来年になると思うので、もっといろいろなことができるようになって、変わっていけたらいいなと思っています。

――ファンの方たちも心配しているのではないかと思います。

高橋 以前は、自分が頑張ることで、皆さんがいいなと思ってくれたり、応援したいと思ってくれたりしたらいいなと思っていました。でも、今は負けてもすごくたくさんの人が応援してくれているのが、ツイッターなどを見て分かって。自分たちがまた強くなることを待ってくれていると感じています。だから、少しでも早く、リオのときとはまた違った強い自分たちを見せたいと思います。

高橋同様に、“燃え尽き”状態を実感した松友。そんな中で、応援の声は2人の力になった
高橋同様に、“燃え尽き”状態を実感した松友。そんな中で、応援の声は2人の力になった【スポーツナビ】

松友 五輪が大きなきっかけだと思いますけど、その前からもたくさんの方が応援して下さっていて。日本で試合をすると、日本勢対決でも自分たちに声を掛けてくれる方も多くて、応援してもらっているなと実感しています。誰もが経験できるものではないので、すごくうれしいですし喜んでもらいたいと思っています。
 多分、私たちが楽しいと思ってプレーしているときが一番強いときで、見ている方たちも楽しいと思ってもらえるときだと思います。そういう試合をいつもできるわけではありませんが、最後の東京五輪の舞台で、自分たちが一番強い状態で優勝できる姿を見せて恩返しができたらなと思います。

つかの間のオフ…高橋はアクティブ派、松友はのんびり派

海外遠征、国内大会……試合や合宿が続く。その分、オフの時間はそれぞれ自分らしく楽しんでいる
海外遠征、国内大会……試合や合宿が続く。その分、オフの時間はそれぞれ自分らしく楽しんでいる【スポーツナビ】

――ところで、今季は、BWFスーパーシリーズの年間成績が3位でしたが、日本勢が1位から3位までを占めたため、最終戦のファイナルズに出場できないという形になりました(ファイナルズは同一種目のうち、1カ国2ペアしか出られないため)。リフレッシュが大事な時期だと思いますが、その分、いつもよりオフが少し長く取れるのでしょうか。

高橋 いや、もうすでに練習をバンバンやっているんです……。全日本総合のあとも、オフは1日だけでした。海外での試合がない時期なので、追い込まれています。あとは、年明けの代表合宿が始まる前に、年末年始でちょっと休めます(笑)。

松友 今は、ほとんど陸上部みたいですね。走り込みが多くて……。でも、予定よりオフが1日増えたので、大きいです(笑)。

――オフは、どのように過ごすのですか。

高橋 私はDVDを見たり、ライブに行ったりします(編集部注:高橋は三代目J Soul Brothersの大ファン)。オフの間は、そのことだけを考えるというか追いかけるというか。歌番組に出演するときは(外出せずに)自宅にいて、出番がくるまで見ています(笑)。ライブは会場に行けるときは行っています。試合で海外遠征していることも多いので、実際はなかなか行けないんですが……。それでも、何か予定が変わったら行ける可能性もあるかもと思って、チケットだけは取ろうと頑張ったりもします(笑)。

松友 えっ、オフじゃなくても毎日追っているような……。遠征中も見ていますよね? 私は、家でのんびりと過ごすようなタイプです。

具体的な目標は「ちゃんと思ったら言います(笑)」

模索する1年を戦い切ったタカマツ。この経験も、これからの2人の背中を支えてくれるだろう。写真はジャパンオープン最終日、女子ダブルスで優勝し喜ぶ高橋礼(左)、松友組=17年9月、東京体育館
模索する1年を戦い切ったタカマツ。この経験も、これからの2人の背中を支えてくれるだろう。写真はジャパンオープン最終日、女子ダブルスで優勝し喜ぶ高橋礼(左)、松友組=17年9月、東京体育館【写真は共同】

――最後に、来年以降に向けた抱負を聞かせて下さい。

高橋 ダイハツヨネックスジャパンオープンのときにも話しましたけど、中国の(引退した)于洋、王暁理組と田卿、趙ユンレイ組(※ともに世界選手権を2度制覇している中国ペア。前者は、スーパーシリーズの年間成績上位8組が出場するスーパーシリーズ・ファイナルズを3連覇。後者は12年ロンドン五輪で金メダル)のスーパーシリーズでの勝率が本当にすごいので、追い続けたいと思っています。日本勢はやっと、“勝っても珍しくはない”という状況になってきました。私たちも9勝することができて自分たちですごいと思っているくらいですが、それよりも上にたくさんいるので、私たちも記録をどんどん伸ばしたいです。この1年間なかなかパッと気持ちが向かない中でも、このモチベーションはずっと持っていました。(シーズンを終えて)今は本当に強く思っています。
 どの大会でどんな成績を挙げたいなどは、まだ決めていませんが、ちゃんと「取れる!」って思ったら言います(笑)。

松友 18年は、心も体も技術も、次の年の五輪レース(※20年の五輪は、前年シーズンのポイントランクで出場の優先権が決まるため、19年が五輪出場権獲得レースとなる)に向けて準備できる1年にできたらいいと思っています。その中で、今年よりは良い成績を残したいです。

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 進化しようとする者は、変化を恐れていては前に進めない。味わいたくはなかった苦しみも、その過程にはあるのかもしれない。インタビューを通じ、2人が追われる立場の難しさを感じながら、競技への純粋な意欲を取り戻そうとしていることがうかがい知れた。日本の女子ダブルスは、2人を追う選手たちが続々と現れ、世界ランク7位以内に4ペア(12月21日発表時)がひしめくハイレベルな争いとなっている。シーズン中、日本勢の追い上げにプレッシャーを感じるかという質問を多く受けた2人は「自分たちのプレーができれば誰にも負けないと思っている」と強気に返していた。負けず嫌いの闘志は完全に消えたわけではない。再び、心の底から夢を追い始めたとき、「タカマツ」ペアは、リオよりも進化した姿へと成長するだろう。

平野貴也
平野貴也
1979年生まれ。東京都出身。専修大学卒業後、スポーツ総合サイト「スポーツナビ」の編集記者を経て2008年からフリーライターとなる。主に育成年代のサッカーを取材。2009年からJリーグの大宮アルディージャでオフィシャルライターを務めている。