東京五輪がロンドン世界陸上から学ぶこと
2020に見たい「デジタルおもてなし」

 8月、陸上の世界選手権に沸くロンドン市内のとある駅。日本から約1万キロ離れた地で、私は陸上界のレジェンド室伏広治さんと遭遇した。  室伏さんは東京オリンピック組織委員会の役務として視察目的でロンドンに来られているとのこと。とくに観客を盛り上げる術、さらに日本で陸上競技を盛り上げるためのヒントなどを探されている様子だ。私がスポーツにおけるファンエンゲージメント関連の仕事をしていると知ると、横にいたIOC(国際オリンピック委員会)の人にも紹介してくれた。  大都会ロンドンで行われる一大国際スポーツイベントとあって、東京五輪の大会運営にとって参考にすべき大会なのは間違いない。仕事柄ついつい大会運営に目がいってしまう私も、その視点で会場へ足を運ぶことにした。

試される「中の人」のショーマンシップ

選手とポーズを取る大会マスコット「HERO」。デザインはさておき、コミカルな動きで会場を盛り上げた 選手とポーズを取る大会マスコット「HERO」。デザインはさておき、コミカルな動きで会場を盛り上げた【Getty Images】

 オリンピックスタジアムに到着し、セキュリティーチェックの列に並ぶ。スタジアム正面の大型ディスプレイに映るロンドン世界陸上2017のマスコット「HERO」が観客を出迎えている。 「可愛くないよね」。妻がボソッと呟く。確かに可愛くはない。しかし、スタジアムに入り観客席から見たHEROに評価は一変した。トラックでアクロバティックな動きを見せたかと思えば、観客のスマホを奪ってコミカルなやりとりを演じる。まるでサーカスのピエロ。競技の合間時間も観客を飽きさせない。選手にも積極的に絡んでいく。ショーマンシップが素晴らしいのだ。  エンターテイナーはHEROだけではなかった。例えば、セキュリティーチェックを待つ行列を整理する運営スタッフ。日本だとスタッフは決められた定型文句の注意事項をただ繰り返すのが一般的だろう。ロンドンでは違った。待機列の観客に明るく声をかけたり、派手なパフォーマンスを披露する。行列のストレス緩和に努めているのだ。  東京五輪のマスコットや大会運営スタッフにも、ショーマンシップのある“おもてなし”を期待したい。

チケットの二次流通もオフィシャルで管理

大勢の観客がスタジアムに詰めかけた背景には、チケット販売の巧みさもあった 大勢の観客がスタジアムに詰めかけた背景には、チケット販売の巧みさもあった【Getty Images】

 ロンドン世界陸上では一般チケット以外にもバリエーション豊かなホスピタリティチケット(チケット+αのセット)が販売されていた。  わたしが購入した一番安いパッケージで初日が3万7000円ほど、一番高額なものは何と15万円! 接待目的で企業が購入する想定だろう。海外ではこのようなホスピタリティチケットが個人でも購入できるようになっていることが多い。どこの世界にも、人より余計にお金を払ってでも特別な体験をしたい人はいるのだ。 「観客がスポーツ観戦で何を望むのか?」。これを徹底的に把握してその価値を適正な製品・サービスに変えていく。ただでさえスポーツの商売機会は限られている。スポーツという原材料から製品・サービス開発をしていくことはスポーツビジネスにとって非常に重要。昔と比べて「スポーツでお金を稼いでもよい」という認識が広まった今、日本で最も取り組むべき領域だ。  今大会はチケットの一次販売だけでなく二次流通もオフィシャルサイトで行なっていた。おかげでチケット完売のニュースが流れた後も、実は、かなり直前までオフィシャルサイトでチケットを定価購入することができた。  オフィシャルで二次流通をやらなければチケットが高騰してしまい、スタジアム観戦できなかった人がもっと増えただろう。今後は需給バランスをリアルタイムにモニタリングしたダイナミック・プライシング(変動性の価格設定)も普及するはず。スポーツビジネスを成長させるためにも、チケッティングはデータ重視で最初に取り組むべき領域なのだ。

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